アウトドアグッズ、そこから派生して非常用、災害用グッズをレビューを頻繁に行っている筆者。そんな筆者が意外と気になっているのが、災害時に焚き火などに火をつけるアイテムです。ひと昔前なら、誰かタバコを吸う人がライターくらいもっていたでしょうが、いまや火をつけるタバコは少数派でしょう。するといざというときに「火がつけられない」というシーンが容易に想像できるわけです。そこで注目したのがUSB充電可能なプラズマライター、今回は「KAARI LOIMU X2」を試してみたので、その結果を紹介します。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9平方メートルの仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。
今の世の中、いざという時に火はつけられない
本当に困ったときには、だいたいガスも電池も切れている
タバコをやめて、もう何年経つか忘れてしまいましたが、先日、災害時などに必要だろうと捨てずに取っておいた使い捨てライターが棚の奥から出てきたのですが、すっかりガスがなくなっていました。
そこでふと気になったのが、もしかしたら我が家にはいざって時に焚き火をしようとしても、火を着けるアイテムがないのでは? という事実です。タバコを吸わないのでライターは非常用のためのみに用意しているもののみ、マッチまでは用意していません。おそらく本当にいざという時にはライターのガスは抜けてなくなっているでしょう。
そこで、いざという時に焚き火などに火をつける普段から用意しておけるアイテムはないかと探した結果、たどり着いたのがUSB充電可能なプラズマライターです。なかでも信頼性の高そうなフィンランド製の「KAARI LOIMU X2」を実際に試してみました。
筆者は北海道胆振東部地震を体験しており、その際に普段使っていないバッテリー式の電化製品はだいたい充電されていないという状態でした。そのため、タバコを吸う人のライターのように、いつも使っていて燃料やバッテリーの残量が確保されているアイテム以外は非常時にあまり役に立たないと思っています。
しかし、普段使わないライターやマッチを長期間貯蔵・保管するにはリスクと手間がかかります。これに対してUSB充電式のプラズマライターは保管のリスクが低く、しかも最悪充電されていなくても、モバイルバッテリーなどから充電すれば焚き火などに火をつけることができるわけです。
災害時の着火用アイテムとしては、非常に優位な特性といえるでしょう。
USBで充電可能なプラズマライターをネットショップなどでいろいろと調べたのですが、なかなか信頼できるレベルの製品がみつからず、お値段はやや高めですが、フィンランド生まれのブランドであるKARRIにたどり着いたのです。KARRI自体はいくつかのプラズマライターを発売しています。しかし、タバコを吸わない筆者は普段からある程度の頻度で使用し、かつ持ち歩く意味のあるものと考えて、先端アームが伸縮し焚き火などにも火がつけやすく、LEDライト内蔵する「KAARI LOIMU X2」を選択しました。
懐中電灯(LEDライト)であれば、日常的なアウトドアや星や夜景の撮影の際にも持ち歩けるので、普段からある程度の頻度で使えると考えたわけです。
「KAARI LOIMU X2」の製品内容
防塵防水で衝撃などにも強いタフで頼もしい仕様
「KAARI LOIMU X2」のパッケージを開けてみると、上に掲載した写真のようにプラズマライター本体、充電用のMicro-USBケーブル、ミニカラビナ、ベルトホルスター(中にストラップ)、ユーザーマニュアルと付属品も充実しており、その品質も悪くありません。
また「KAARI LOIMU X2」本体は最大径約3cm(突起部含まず)で収納状態で長さ約14cm、先端アーム伸ばした状態で約18cm、重さは約90gです。
ライターとして考えると大きいですが、ライトとして考えると、比較的小型といえるでしょう。ライトの明るさは100ルーメンで2段階調整ができます。普段持ち歩くライトにしておき、時折充電しておけば、いざというときにバッテリー切れという事態を回避できそうです。
ポリカーボネート製のボディは、耐衝撃性に優れ、IP57相当の防塵防滴構造になっているといいます。アウトドアでのタフな使い方にも応えてくれそうで安心です。
ちなみに内蔵されているバッテリーは、リチウムイオンバッテリーで容量は300mAh、フル充電で約80回プラズマアークの着火が可能。プラズマーアークの温度は約1,100℃にもなるといいます。プラズマアークの着火には、本体上部のスイッチを押すだけ、ただし安全装置により約7秒経つと自動で切れる仕組みになっています。
写真のようにMicro-USBで充電ができ、満充電にかかる時間は約2時間です。ポータブルバッテリーなどからの充電ができるのもいいところです。
最近、筆者と同じようにすっかりライターやマッチといった着火アイテムを持ち歩かなくなった方には、いざというときの着火アイテムとして「KAARI LOIMU X2」は魅力的なのではないでしょうか。しかし「1,100℃といってもプラズマアークで本当に火がつくの?」といった疑問をもったのは筆者だけではないと思います。そこで、どのくらいきちんと火が付くのかを実際に試してみました。
プラズマアークライターで火が付くのか?
「KAARI LOIMU X2」で固形アルコール燃料に着火
「KAARI LOIMU X2」を含むプラズマライターへの最大の疑問は「ちゃんと燃料などに火がつくの?」だと思います。数千円のアイテムを購入して100円ライターよりも火がつかないのでは、完全な無駄遣いでしょう。筆者もそう考えて、なかなかプラズマライターに手が出せなかった部分もあります。
そこで単純にアウトドアやキャンプ用の着火剤に火をつけてみました。
まずは、多くの方に馴染みがあるだろう、固形アルコール燃料です。パッケージのビニールごと燃やすタイプだったので、ビニール部分に「KAARI LOIMU X2」を接触させ、スイッチをオンに。あっという間にビニールが溶け、固形アルコール部分に火がつきました。
普通のライターと同等、それ以上に簡単に火がつきます。当たり前といえば、当たり前なのですが「プラズマライターで本当に火がつくの?」と疑っていた筆者にとっては予想以上の結果です。
「KAARI LOIMU X2」で圧縮木材系着火剤に着火
固形アルコール燃料にはとても簡単に火がつきましたが「固形アルコールに火がつくのは当たり前」という意見もあるでしょうし、筆者も当然だと思います。そこで、もう少し着火が難しく、焚き火などの燃料に近い着火剤として圧縮木材繊維系のもので再度実験してみました。
「KAARI LOIMU X2」の先端部分にプラズマアークを押し付けるように圧縮木材繊維系着火剤に点火を試みます。火がつきやすいようにワックス成分を含んでいることもあるのですが、こちらも数秒で火がつきました。
「KAARI LOIMU X2」の場合、連続点火時間が約7秒までという制限があるので、先に実験した固形アルコール燃料も圧縮木材繊維も、この約7秒以内に火が付いたということです。想像していたよりも簡単にプラズマアークで着火ができます。まったく問題を感じない結果です。
まとめ
もしものときに「着火できない!」を解消してくれる優秀なアイテム
災害などの非常時を想定して、あれこれと想像してしまう方なら、必ず「火をどうやってつけよう?」と考えるでしょう。
そして多くの方が「最近、まったくライターやマッチを使っていないこと」に気付くのではないでしょうか。さらに非常時を想定して、いろいろと準備はしていたものの、ライターはガス切れ、マッチは湿気っていて、火がつけられないところを想像すると、筆者などは思う以上に不安になるのです。
「KAARI LOIMU X2」などのプラズマライターはUSBでモバイルバッテリーなどからも充電ができ、そんな不安を簡単に解消してくれます。着火剤などへの火のつきも予想以上で一般的なライターと大きな差を感じませんでした。
「非常時に火がつけられない」という不安を感じたことのある方なら、ひとつ用意しておくだけで不安が解消されるので、とてもおすすめです。ぜひ試してみてください。