耳の穴をふさがないことで周囲の音が聞こえる安全なオープンタイプでありながら、高音質を実現する「OWS」をいち早く打ち出した元祖メーカー・オーラダンスのフラッグシップモデル『Oladance(オーラダンス) OWS Pro』を試してみた。
周囲のリアル音と、デジタル世界の音をシームレスに融合すべき時代に最適化した、AR的イヤホン
OWSとは、オープン・ウェアラブル・ステレオ(Open Wearable Stereo)という意味。米国カリフォルニアのオーディオブランド・オーラダンスが、リスニング体験と「外部とのコミュニケーション」「健康」の両立を目指して2021年に打ち出した概念だ。
従来のワイヤレスイヤホンは、周囲と断絶したリスニング環境をノイズキャンセリングで実現する機種が主流。音楽を楽しむには絶好かもしれないが、周囲の音が聞こえないリスクがあり、耳穴に挿入するカナル型イヤホンは、耳にダメージを与える可能性が存在した。
そこで周囲の音が聞こえつつ、日常化したデジタルデバイスが発する音を同時に聞くことができ、長時間装着でも耳にもやさしいデバイスが必要になった。
言ってみれば、外部情報を遮断して完全に没入するVR(仮想現実)と、周囲の風景にデジタル情報が溶け込む AR(拡張現実)の関係性が近いかもしれない。
フラッグシップモデル『OWS Pro』とは
OWSコンセプトを徹底したOladance『Oladance(オーラダンス) OWS Pro』(税込34,800円・2023年8月21日発売)は、そうした日常にデジタル音を取り入れるイヤホンであり、オーラダンスの現時点でのフラッグシップモデルである。
耳穴をふさがずに空気を通して音を伝えることで耳への負担は軽減されるが、その場合の最大の懸念は周囲への音漏れだろう。『OWS Pro』は、最先端チップ技術とアルゴリズムにより、外部へサウンドが拡散されない技術を持っている。
では肝心の音の方はどうなのか。使用感とともにレポートしていこう。
『OWS Pro』の使用感/がっちりホールドで洗練されたサウンドを安定供給
Bluetoothバージョンは5.3に対応。iPhoneでスムーズにペアリングできたが、『OWS Pro』を使いこなすためには専用アプリ「Oladance」の導入が不可欠だ。低音を上げたり、ヴォーカルを強調するなどの「サウンド設定」から、イヤホンそれぞれの充電状況や、「聴力保護」機能の活用もできる。
装着はとまどった。思ったよりも耳掛けの部分のチタン製のメモリーワイヤーが硬かったから。その分、無事に装着できるとホールド感がしっかりとある。各人の耳の形もさまざまなので一概には言えないが、一度装着してしまえば外れる気がしない。
音質はデフォルトのままでも、ボリュームを上げすぎなければ、バランスの取れた良音が流れる。このボディに、3mm×10mm のスピーカーを片耳2つずつ搭載しているためか、表現力はイヤホンというより、スピーカーに近い臨場感を感じた。
しっかりした低音が出ており、イヤホンでファンク・チューンのベースラインが細かく追えるのに感動してしまった。
ジャズ・フュージョン系統ではドラムのハイハットの表情、鍵盤の細かいフレーズまで追える。Bluetoothで時折感じる、音の遅延によるリズムの崩れがないので、快適だ。
男女ともにヴォーカルの艶まで感じ取ることができる表現力だが、サンプリング多用のヒップホップ音源では高音が多少ビリつくこともあった。音量を下げても、スネア・ドラムの音が耳に痛く感じる場合も。
いわゆるひずんだギター中心の轟音メタル、ラウド系ロックの重低音に関してはちょっと苦手なようだが、そもそも耳にやさしい製品ゆえに、当たり前かもしれない。
『OWS Pro』の使用感/音量を上げるとちょっと音漏れ
気になる音漏れは、がっちり音楽を聴こうと音量を上げれば、する。電車内で隣の人が気になるレベルだが、騒がしいカフェ店内などではそれほど気にならない。主に漏れるのは、ドラムのハイハット、女性ヴォーカルあたり。高音部分が中心だ。
外部音も同様に、音量を上げれば聞こえにくくなるが、BGM的な音量に抑えれば会話もラクラク。通話に関しては、滑舌を少し意識すれば、リモート会議も問題なくこなせるレベルだ。
ただスライドする音量調整はしやすかったものの、本体のボタンはかためで、グイッと押し込む必要がある。
イヤホン単体で最大16時間の連続使用が可能なので、一日中つけっぱなしで過ごすこともできる。充電ケースを使えば最大58時間の使用が可能だ。充電を忘れたときでも、15分ケースに入れておくと最大6時間の再生が可能になるのも、心強い。
入手は公式オンラインショップやオーディオ専門店、家電量販店などで可能だ。