【2024年7月4日内容更新】『プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01』は、シャープ史上「初」のサーキュレーター。同社の独自技術、プラズマクラスターの風を送り出すことができる話題作だが…。その実力はいかに!?
市場分析:扇風機機能も備えるハイブリッド型サーキュレーターが席巻!
今の世の中、純粋に「扇風機のみ」として使える、「サーキュレーターのみ」使えるモデルは、ほぼないに等しい状態、どのモデルも扇風機とサーキュレーターの両方の機能を持つハイブリッドがほとんどです。
シャープの『プラズマクラスター サーキュレーター PK-18S01』(~30畳・アッシュブラック/ライトグレー・実勢価格24,200円※編集部調べ・2024年4月18日発売)もその例に漏れません。扇風機の機能を持ったサーキュレーターです。今回は、シャープ「初」の サーキュレーター PK-18S01の実力を検証したいと思います。
サーキュレーターと扇風機の違い
まずサーキュレーターの基本からおさらいしましょう。
扇風機の機能は「人が涼しく感じられるよう風を当てること」です。では、サーキュレーターはと言うと「部屋の空気を均一にするよう空気を混ぜ合わせること」と言えます。
この2つ、双方ともに風に関係がありますが、大きく異なります。昔、初めてサーキュレーターを買った時、扇風機の代わりができたら、小型だしさぞ便利だろうと思い試してみたのですが、全然涼しくなりませんでした。人が涼しいと感じられる風というのは、ただ単に空気が動いているのとは、ちょっと異なるのです。
2010年、扇風機メーカーがこぞって真似をしたバルミューダの「グリーンファン」が登場します。正確なコントロールができるDCモーター、外羽、内羽に分かれた二重構造の特異な羽根により、扇風機の風は、より細かくと言うより、自然に近い風を送ることができるようになりました。
そして、注目されたのが「微風」。
微風と言うのは、よく使われているビューフォート風力階級で言うと、0.3〜1.5m/秒。俗に言う「無風」は、0〜1m/秒ですから、微風は吹いているのか、どうか、わからない位スローな風と言えます。いわゆる春のそよ風です。
微風は、当たりすぎると水分と体温を奪いすぎるという扇風機の風と異なり、欠点のほとんどない、ひたすら快適な風。寝てる時にも使える風として、重宝されるようになります。
ハイブリッド・サーキュレーターというのは、扇風機の「人が快感と感じられる風を作ることができる」機能を移植したサーキュレーターのことです。当然こだわるのは「微風」。扇風機から、この弱くて気持ちのいい風を移植したモデルこそ「ハイブリッド型サーキュレーター」なのです。
365日風が必要な時代に便利な、ハイブリッド型サーキュレーター
その一方、熱中症が毎年のように、人を生命を脅かすようになります。加えて、戸外の空気には、花粉、黄砂、PM2.5等々、人に有害な物質が多く混じるのが、当たり前になりました。日本の夏は、昔の、自然の涼をどうやって上手く取り込むのかと言うことから、いかに外環境を遮断し、エアコンを有効活用するのかに命題が切り替わります。
戸外干しが当たり前だった洗濯も、室内干しが当たり前になりつつあります。室内干しは、外の空気に触れさせないため、洗濯物はキレイなままの様な気がするかも知れませんが、乾くのに時間がかかると、いやなニオイを伴うニオイ菌が繁殖します。
落としきれない皮脂汚れ(食料)、洗濯物の水分(水)、があるので、適温であれば残った菌が繁殖するのです。ニオイはその菌の排泄物などから発生するのです。戸外干しの時、何故問題にならなかったのかと言うと、戸外の場合は繁殖前に乾かすからです。
こんな時、便利なのがサーキュレーター。風が乾燥を助けます。その他、冷えた空気・暖まった空気の拡散などにも使えますし、コロナ禍以降、重視されるようになった窓開け換気を一気に済ませるのにも便利です。
江戸時代、炭火をコントロールするため、夏だけでなく冬でもうちわは必需品でしたが、サーキュレーターは、室内温度の均一化、室内干しの短時間化、窓開け換気の短時間化と、本当に一台あるととても便利な家電として認知されるようになりました。一年365日、風を上手く使うには、うちわの様な使い勝手のいい風家電があった方がいい時代になったわけです。
使い勝手のいい送風家電ですが、広めの間取りの住まいを持つことができる地方在住の人は選択肢が多いです。扇風機ベースの送風家電も、サーキュレーターベースの送風家電も問題ありません。が、東京などの密集都市だと、サーキュレーターベースのハイブリッドタイプが一番かと思います。
まず、扇風機を一年出しっぱなしにすると「夏家電なのに」という思いが募ります。やってみたことがある本人が言うのですから間違いありません。次に、台座が大きく、重い。高さもあります。取手があってもあちこち移動させるのは面倒。要するに、必要とされる用件に対し場所を取りすぎるのです。
現在、サーキュレーターのシェアNo.1は、アイリスオーヤマです。アイリスオーヤマのサーキュレーターは、数千円〜一万数千円。この価格だと、サーキュレーターを買うために店に行ったのではなくても、「思い付き買い」「思い出し買い」ができます。小さく、軽いので、お持ち帰りも楽々。
そして、もう少し長い目で見ると、扇風機より台数が出そうであり、今回紹介するシャープ以外にも、この分野に本格的に取り組むメーカーが増えつつある印象です。
開封時の驚き!
今回のテストは、メーカーからモデルを借りて行いました。運ばれてきた箱を持った感想は「重い」。中身がぎっしり詰まっている感じです。
開けてみると、発泡スチロールで固定してあります。最近SDG’sで、傷よけビニールはともかく、発泡スチロールを使わずに包装する傾向にあります。
全部出して、設定しようとしてびっくりしました。異様に持ち上げにくい。取手を探したけれど、ない! 本体を掴もうにもつかみにくい形状の上、表面加工が結構滑る。
「どこをつかめと言うんじゃい!」と思わず声を出してしまいました。
スタイリッシュ、しかし移動を拒むデザインか?
私が個人で使っているのは、昨年のモデルですが、アイリスオーヤマの「サーキュレーターアイ DCコードレス」シリーズです。シリーズ名でもわかると思いますが、コードレス=バッテリー内蔵型です。コードレスの状態でも風力1=微風で8時間は回り続けます。
ベッド周りでも、色々なところで使うにも超便利。コンセントを探さずに済みます。充電は、棚置きした時。こうすると家電出しっぱの感じはないです。
『プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01』は、上下首振りのモーターがアーム部、左右首振りのモーターは台座に組み込まれています。
製品としての安定度は良いのですが、ちょっと移動はしにくい。結局、2つある支柱の片方をむんずと握り、移動させることにしましたが、それ用に設計してませんので、実に握りにくい。また、本当に強度が確保されているのかもわかりません…。壊したらイヤだな。正直、そう思いましたね。
ただデザインの完成度が高いので、あえてデザイン上、取手を付けなかったのかとも考えられます。
365日出しっぱなしという意味では、デザインは尊重されるべきものでしょうが、私としては手放しに賞賛はできません。
シャープが力を入れて新開発した、フクロウの羽根にインスピレーションを受けた風を試す
もちろん、持ちやすいかどうかも大切ですが、サーキュレーターの本分は風です。今回、シャープが力を入れたのが、風を遠くまで送れることと、静音性。このため、特に羽根の改良に力を入れました。
径がない(一般的なサーキュレーターの場合、径は約20cm、扇風機は約30cmと約10cmも異なります。ちなみにシャープは径:18cm)ので、3枚羽根を選択。パワフルな風量と静音性を両立するために、特徴的な翼の断面のふくらみが効率よく風を捉え、獲物に気づかれないように静かに近づくフクロウの羽根にインスピレーションを得て、製品の羽根断面にその特徴を応用した「ネイチャーウイング」を採用しています。
1.風の伝達距離
まず伝達距離ですが、これはかなりのもの。発表会の時の映像をまずどうぞ。
発表会では、最大風力(風量:10)で、10m間を開けて、風車を回すことができるかというデモをしていましたが、見事に回っていました。ただ、これ写真で撮ってしまいましたので、写真のLIVE機能で、同じ場面を3回繰り返し、10秒ほどにしています。
2.静音性
こちらは家で撮影したビデオで、ご覧ください。撮影は「iPhone 14 Plus」を1m離した時の録画です。
微風は完全に問題なく、その他の風量も音は抑えられていました。
シャープのこだわり「プラズマクラスター」とは?
ちょっと前まで、シャープの代名詞は「液晶」技術でした。90年代に液晶を使う量がちょっとでも増えるように、ノーファインダー ムービー「液晶ビューカム」を市場に導入し、次に「液晶テレビ」で一世を風靡しました。今の時点で、それに代わる技術と言うと、「プラズマクラスター」でしょうか?
機種名でわかる通り、当モデルにも搭載されています。
「プラズマクラスターイオン」はシャープが作った造語で、科学的にはそうした名前のイオンはありません。
では「プラズマクラスターイオン」とはどういうものなのでしょうか。
プラズマ放電を行うと、空気中の水と酸素から水素のプラスイオンと酸素のマイナスイオンを発生させることができます。それらのイオンが浮遊菌などの表面に付着して、作用を抑制します。そうした+(プラス)と-(マイナス)のイオンを作る技術がシャープが誇る「プラズマクラスター技術」なのです。
特徴的なロゴマークは、プラズマクラスターイオンが、電気で「数多くの水分子を引き寄せ、ロゴのブドウのフサ(クラスター)状態になる」ことから名付けられました。
確かに、さまざまな効果がありますし、シャープも色々な機関に依頼し、実証をしています。
が、今のままでは問題もあると思っています。なぜならプラズマクラスターが効果を発揮できるかどうかは、「濃度」が大いに関係しているからです。例えば、トイレは2畳くらいしかありません。閉め切ったトイレだとプラズマクラスターは、大いに効果を発揮。ニオイを完全に消してくれます。見事としか、言いようがありません。
しかし空気清浄機に搭載されているプラズマクラスターは、カタログに「対応畳数:××畳」と書かれた後、「プラズマクラスター対応畳数:〇〇畳とかなり少ない数値が記載されています。もちろん、『プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01』にも搭載されているので、記載されています。
『空気循環適用床面積(目安):~30畳(約50m²)((注)空気循環適用床面積は当社基準(風量)による目安です。環境により異なります)、プラズマクラスター適用床面積(目安):約10畳(約17m²)((注)商品を壁際に置いて、「風量最大」運転時に、部屋中央(床上1.2m)で50,000個/cm³のイオンが測定できる床面積の目安です。(50,000個/cm³のイオンはプラズマクラスターNEXTのイオン濃度です。作者注)』
30畳、10畳と3倍差がある上に、それなりの注釈が付いています。しかしここで問題が1つ出てきます。これでユーザーに、正確な使い方がわかるかどうか。
(編集部注:つまりサーキュレーターとして空気を循環できるのが30畳、プラズマクラスター効果を発揮できるのが10畳という意味です)
加えて、もう1つの問題があります。それはプラズマクラスターは搭載するにせよ、使うにせよ、お金がかかることです。機種、世代にもよりますが、プラズマクラスターは、24時間使うと2年と持ちません。そして取り替えるとなると、5千〜1万円近くかかります。『プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01』は2万5千円位ですので、20〜40%位の割合を占めます。
費用の多寡ではありませんが、そうなるとしっかり役に立ってもらう必要があります。しかし、使い方が判然としない。しかも、スタートさせるといつの間にか、いつの間にか、作動している…。
「プラズマクラスターNEXT」搭載で、部屋干し衣類の生乾き臭をしっかり消臭できるのか
確かに発表会の時、室内干しのニオイを防ぐデモはしていました。ただし、1m以内から当てると言う手法が用いられていました。ホームページの方では、ニオイ菌の抑制に比較では、7畳相当、7日間のデータが掲載されていました。前述の通り、ニオイ菌の繁殖は乾燥までが一つのポイント。確かに、その間も自然減衰より良いデータを示しています。
が、このレベルをどう見るのかで意見は分かれるでしょう。完全にニオイ菌を殺したいのなら、60℃でお湯洗いすれば良い話です。ドラム式ならスィッチ1つで対応。洗剤で対応するより、温度で対応する方が、環境的にも良いでしょう。
そう考えると、プラズマクラスター機能が付属しないモデルを作っても良いのではと考えてしまいます。
リモコンでしか使えない「モード」
『プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01』は、「リズム」「おやすみ」「衣類乾燥」の3つのモードを持ちます。が、このモード、リモコンでしか、使うことができません。「おやすみ」は風量1、「衣類乾燥」は風量10ですから、風量調整により、同じ状態にすることは可能です。しかし、モードスィッチはコンソール上にありません。理由は不明です。
AC/DC変換アダプターの幅にもの申す!
サーキュレーターは、あちこち動かして使う人も多いのではないでしょうか。本体もそうですが、その都度、コンセントも変えます。その度に差し替えます。そのコンセント、幅があるとととても扱いにくい。できれば、幅がないアダプターの方が使いやすい。
2010年から扇風機のモーターがDC化され始めてから、はや10年以上。そして、サーキュレーターは機動力。ここらへんも工夫が欲しいところです。
メンテナンス性はバッチリ!
365日使用する家電の場合、季節家電のように、しまい込む前にキレイにすると言うことはありません。逆に言うと、気になった瞬間(とき)が、掃除・手入れの時。必要な要件は2つ。素手で分解できることと、分解パーツが水洗いに耐えること。
『プラズマクラスターサーキュレーター PK-18S01』はその点、バッチリOKです。ただし軸が錆びたりすると能力は著しく低下するかもしれません。
動かさず固定して使うなら問題ないが、移動して使いたいなら要注意!
当モデルの販売価格のおおよその推移を見ると、4/3に24,200円で市場導入。5/19に22,155円で推移しているが、2万円を割っていない。つまり今までと異なる、「高級サーキュレーター」とでも言うべき需要なのだ。この先の展開は2パターン予想される。
1つ目はユーザーが、メインを小型扇風機として使う場合だ。この場合、サーキュレーター程、動かすことはない。一度置くと以降動かさない可能性もあり得るかも知れない。欠点はかなり出にくいだろう。
もう1つは、メイン:サーキュレーター、時々小型扇風機として使う場合である。これはかなり使いにくいと言うより、動かすたびにイヤになる。私の場合、我が強いので、思った形で使えないと耐えられないのだ!
したがって、動かさずに固定して使ってもいい、シャープの製品がとても好きという人に向いていると思う。
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