【写真家がレビュー】簡単に写真がうまくなる!新しいレンズよりもおすすめしたい「角型GNDフィルター」で写真は激変!

レビュー

せっかく撮るなら「同じ場所なのにスマホと全然違う! やっぱり大きなカメラは違うね!」とかいわれたいのです。そんな筆者が同じ場所でも、ほかの人とは違った写真を撮るために使っている「秘密のアイテム」が「角型GNDフィルター」。本記事では、この「角型GNDフィルター」を紹介します。

そもそも「角型GNDフィルター」ってなに?

ページのトップの写真から「角型GNDフィルター」と「PLフィルター」を外した写真

SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art/Sony α7R III/28mm/絞り優先AE(F1.8、1/5,000秒)/ISO 100/WB:太陽光/クリエイティブスタイル:ビビッド
実はこの写真とページトップの写真、筆者お気に入りの角型フィルターシステム「Cokin NX」の「角型GNDフィルター」と「PLフィルター」のありとなしだけの違いです。

 

並べた比較も置いておこう

この記事のトップページに掲載した写真と、上に掲載した写真では、多くの方がかなり印象が異なるのではないでしょうか。しかし、実は2枚の写真の違いは、筆者お気に入りの角型フィルターシステム「Cokin NX」の「角型GNDフィルター」と「PLフィルター」を装着して撮影したトップの写真と、この2枚のフィルターを外したものになっています。

 

単純にいうならフィルターありとなしの違いだけです。しかし、フィルターありの写真のほうが圧倒的に上手に見えると思います。もし、みなさんが同じ時に同じ場所で友人、知人と撮影して、この2枚ほどの違いがあったらなんでこんなに違うのだろうと不思議に思い、「これが腕の差、それとも使っているレンズやカメラの価格の差なのか?」と思い悩んでしまうかもしれません。

 

ですが、タネを明かせば「フィルターを使っているか、使っていないか」の差です。
筆者が普段から愛用している「Cokin NX」をレンズの先端に装着したところ。製品精度が高いので、フィルターがしっかりと取り付けられるのがとても気持ちいい。

 

筆者は角型フィルターシステム「Cokin NX」シリーズの『Cokin NXエキスパートキット』をベースとして愛用しています。そして、この『Cokin NXエキスパートキット』は実勢価格が約8万円です。「ちょっとしたレンズよりも高いじゃない!」と驚かれる方もいるでしょう。しかし、だからこそおすすめなのです。

 

『Cokin NXエキスパートキット』の内容物は下記のとおり。

NXフィルターホルダー/PLフィルター(ポーチ付)/ニュアンス・エクストリーム ND1024 (フレーム付)/ニュアンス・エクストリーム ソフトGND8 (フレーム付)/ニュアンス・エクストリーム ハードGND8 (フレーム付)/ニュアンス・エクストリーム リバースGND8 (フレーム付)/アダプターリング(72, 77, 82mm)/アダプターリングキャップ/マイクロファイバークロス/フィルターシステムウォレット/小型のスクリュードライバーと予備ネジ2個(フィルターフレーム用)

アマゾンコッキン公式商品ページ https://amzn.to/4bPEJRC

 

 

角型フィルターシステムといっても円形フィルターであるPLフィルターもセットに含まれ、さらに1枚2万円近くするGNDフィルターが3枚、角型NDフィルターが1枚、フィルターホルダーやフレーム、アダプターリング、フィルターシステムウォレットなどがセットで8万円はかなりお買い得なのですが、カメラ・写真マニア以外には、その価値が理解できず、認知度も普及率も低いので使うだけで、ほかの人たちに差がつけられる素晴らしいアイテムといえるわけです。

 

筆者も黙ってネタばらしをしなければ「腕の差的な感じ」にみせることもできるのでしょうが、あまりにも効果が素晴らしいので、多くの方に知ってほしいのです。

 

写真の部分的な明るさをコントロールするので角型フィルターであることが必須

『Cokin NX エキスパートキット』に付属するフィルターシステムウォレットに必要なアイテムをスッキリと収められるのもうれしいところです。

 

「角型GNDフィルター」に比べると、写真業界ではかなりメジャーなフィルターといえる「PLフィルター」。こちらは反射光をコントロールして、鮮やかな色彩やコントラストを得ることができるフィルターです。これによって水面やガラス面、樹葉などの表面反射を抑えたり、青空を鮮やかにする効果などが得られます。風景写真には必須のフィルターのひとつで、すでに多くの方が解説されているので「PLフィルター 効果」などで検索してみてください。ちなみに「PLフィルター」は回転して使用するので、基本的に丸型フィルターです。

 

筆者の使っている角型フィルターシステム「Cokin NX」のフィルターホルダーには専用の丸型「PLフィルター」がセットできる構造になっています。この「PLフィルター」の前面に「角型GNDフィルター」を装着し、普段筆者は撮影しているのですが、そもそも「角型GNDフィルター」とはなんなのでしょうか。

 

海外では「Graduated Neutral Density」の頭文字をとって「GNDフィルター」と呼ばれています。日本では「ハーフNDフィルター」などとも呼ばれ、その名のとおりフィルターの半分が減光フィルターであるND、半分が透明なガラスになったフィルターです。そんな「GNDフィルター」をレンズの先端部分に装着して、画面の1部分の明るさをコントロールするのですが、画面のどこまでの明るさをコントロールするかを決めるために、装着した後、スライドしてフィルターの位置決めをする必要があります。このスライド動作を行うために「GNDフィルター」は、専用ホルダーを使用する角型フィルターである必要があるのです。ちなみに円形の「GNDフィルター」も存在しますが、明るさをコントロールする位置が固定されているため、使い道はかなり限定的になってしまいます。

 

フィルターホルダーに装着した状態でスライドして画面内のさまざまな位置の明るさを調整する「GNDフィルター」にはハード、ソフト、リバース、センターなどの種類があります。

 

この「角型GNDフィルター」にはいくつかの種類があり、NDフィルター部分と透明部分が比較的はっきりとわかれているハードタイプ、フィルターの端の部分のNDフィルターの濃度がもっとも濃く、中心部に向かって徐々に濃度が薄くなっていくソフト、さらに中央部分のNDフィルター濃度がもっとも濃く端に向かって薄くなっていくリバース。そして中央部分だけが帯状にND効果をもつセンターなどがあります。

 

さらに、このNDの掛かり方だけではなく、その濃度を表す4、8、16といった減光の効果の度合いといったバリエーションもあるのですが、最初は『Cokin NXエキスパートキット』にも含まれる8あたりで、その効果をためしてみるのがよいでしょう。使い込むに従って、いろいろと試したくなるのですが、細かい理屈よりも、その具体的な効果を紹介していきたいと思います。

 

晴天の風景に使うだけで写真が非常に印象的に

SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art/Sony α7R III/24mm/絞り優先AE(F2.8、1/3,200秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV/WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド
先日、ナノハナで有名な北海道安平町で撮影した1枚。天気もよくナノハナも満開を少し過ぎていましたが、悪くない写真だと思います。

 

空の明るさをコントロールするだけで写真の印象は激変!

先日、新千歳空港からほど近い北海道のナノハナの名所である安平町で撮影したレンズ作例を掲載してみました。当たり前ですが、晴天で条件のよい日を選んでいますし、最盛期を少し過ぎていますが、ナノハナも満開に近い条件です。決して撮影条件は悪くありませんし、悪い写真でもないと思います。しかし、ある意味印象に残らない写真ともいえるでしょう。これに『Cokin NX エキスパートキット』のPLフィルターとニュアンス・エクストリーム ソフトGND8を使用します。

SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art/Sony α7R III/24mm/絞り優先AE(F2.8、1/400秒)/ISO 100/露出補正:+0.3EV/WB:オート/クリエイティブスタイル:ビビッド
『Cokin NX エキスパートキット』のPLフィルターとニュアンス・エクストリーム ソフトGND8を使っています。印象が激変したのではないでしょうか。

 

PLフィルターとニュアンス・エクストリーム ソフトGND8を使用しているのですが、PLフィルターについては雲の立体感を増したり、背景の緑の乱反射を防いだりする効果が得られていますが、主な目的はソフトGND8を使って、空の明るさを落とすことです。

 

先に掲載したソフトGND8を使っていない写真では、空が明るく、ナノハナ畑は相対的に暗いので、ナノハナの黄色を印象的に仕上げるために、露出補正を行って画面全体をドンドン明るくしていくと、元々の明るい(輝度の高い)青空がドンドン白っぽくなっていきせっかくの晴天の印象が弱まります。しかし、青空がある程度残る程度の明るさでは、相対的に暗いナノハナ畑の黄色も印象的といえるほど鮮やかにならないわけです。

 

そこで元々明るい青空の部分にソフトGND8を差し込んで暗くしてやることで、ナノハナ畑との輝度差を小さくしてやります。すると青空がしっかりと印象的な深い青色を保持したまま、十分に明るいナノハナを黄色を演出することができるのです。タネと仕掛けがわかると不思議でもなんでもないのですが、GND角型フィルターの存在とその効果を知らない人にとっては、なぜこんなに仕上がりが変わるのか、理解できないでしょう。

 

また、地上の風景がナノハナ畑である必要はないのでGNDとPLフィルターを組み合わせて使うだけで、晴天の風景写真の印象を大きく変化させることができるわけです。汎用性が高く非常におすすめです。

 

朝焼けの湖の風景をリバースGNDで激変させる

Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E/Sony α7R III/16mm相当/絞り優先AE(F8.0、1/6秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV/WB:太陽光/クリエイティブスタイル:ビビッド
新千歳空港からほど近い、朝日の名所であるウトナイ湖畔から撮影した朝焼けの風景。これはこれでありなのでしょうが……。

 

湖面の映りこみと空の明るさを調整する

実は筆者がもっともGND角型フィルターの威力を感じるシーンは、日の出や日の入りです。1日のなかでももっともフォトジェニックな時間帯であり、多くの写真好きが撮影を楽しむ時間帯でしょう。特に筆者は旅先での朝焼けの撮影が大好きです。

 

1人旅なら、ゆっくりと撮影していてもなんの問題もないのでしょうが、多くの場合家族といっしょだったり、友人・知人との旅行だったりするでしょう。しかし、早朝の朝焼けの時間帯は、家族や友人も寝ていて、ゆっくり撮影を楽しめる時間であることが多いのです。

 

そんな日の出のシーンを筆者はGND角型フィルターで、さらに印象的に仕上げて「今日の日の出はこんなにキレイだったのに……」と家族や友人に自慢してしまいます。

Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E/Sony α7R III/16mm相当/絞り優先AE(F2.8、1/5秒)/ISO 100/露出補正:+1.0EV/WB:太陽光/クリエイティブスタイル:ビビッド
『Cokin NX エキスパートキット』のPLフィルターとニュアンス・エクストリーム リバースGND8を使用。撮影条件は変わらないのですが、印象は大きく変化します。

 

掲載した2枚の写真ですが、日の出の時間帯に同じ位置から、同じレンズで画角で撮影しています。ここで筆者が意識しているのは、空の赤みと雲の様子が映りこんでいる湖面と実際の空の明るさをコントロールしてどちらも同じようにみえたらおもしろいのでは? という点です。

 

当たり前ですが、日の出の時間帯の空と、それが映りこむ湖面では明るさの違いがあるので、普通に撮影すると先に掲載したGND角型フィルターなし写真のように写ります。しかし、GND角型フィルターを使えば、空側の明るさを落としてやることができるので、これで湖面の映りこみとの明るさの違いを減らし、PLフィルターを使うことで映り込みをハッキリとさせています。

 

このとき、筆者は昼間の風景の写真ではソフトGND8を使っていたのをリバースGND8に変更しました。理由はとても簡単で太陽が低い位置にあるからです。普通のGNDフィルターは基本的に画面の上部に行くほど画面を暗くする効果が強くなるようにグラデーション効果が施されています。太陽が画面の上部から照らしている条件では、このソフトGNDの効果がありがたいのですが、朝日や夕日の時間帯は太陽が水平線や地平線の近くにあるので、下から上に向かって光が当たっている状態になるのです。そのため、朝日や夕日の時間帯は普通(ソフト)のGNDフィルターとは逆(リバース)の効果が得られるリバースGNDフィルターを選択しています。

 

要は、空の明るさを減少させただけなのですが、画面全体の明るさが整い、実像と鏡面の世界の境界を曖昧にすることで、より幻想的な朝日に仕上がったのではないでしょうか。

 

画面の明るさを部分的に調整するGND角型フィルターは非常におすすめ

ZEISS Loxia 2.8/21/Sony α7 II/21mm/マニュアル露出(F8.0、0.6秒)/ISO 50/WB:太陽光/クリエイティブスタイル:ビビッド
朝焼けのジュエリーアイスを撮影した1枚。こちらはソフトGND8を使用。GNDなしだと背景の朝焼けが明るすぎて真っ白になってしまいます。リバースでもいいかもしれません。

 

高価で使いこなしが難しいからこそ、ぜひ挑戦してほしい角型フィルター

撮影シーンに合わせて、空と地上の明るさの差をコントロールするだけで、写真の印象が大きく変わることに驚いた方も多いのではないでしょうか。Cokin NXの場合、PLフィルターと組み合わせて、普段撮影している風景写真の空の部分の明るさをコントロールするだけで写真の印象は大きく変化します。三脚を使って撮影している人なら、角型フィルターの装着にも慣れてしまえば、さほどの手間でもありません。

 

プロやハイアマチュアのカメラマンは、かなり普通に使っているのですが、『Cokin NX エキスパートキット』だと実勢価格で約8万円。ちょっとした交換レンズが購入できる価格です。この価格に驚く方が多いのですが、アダプターリングを用意すれば、手持ちのほぼすべてのレンズで使用でき、ちょっと高いレンズに買い換えるよりも圧倒的な効果が得られるので、その費用対効果の高さがわかっている人だけが使っている状態です。

Tokina atx-m 11-18mm F2.8 E/Sony α7R III/16mm相当/絞り優先AE(F2.8、1/5秒)/露出補正:−0.7EV/WB:太陽光/クリエイティブスタイル:ビビッド
リバースGND8にプラスしてハードGND8とPLフィルターを使って画面の明るさをコントロール。結果、日の出の太陽、雲海、麓の建物がすべてトーンのなかに収まっています。

 

使っている人は意外と少なく同じ場所、同じ条件で撮影してもGND角型フィルター+PLフィルターを使った写真とそうでないものでは大きな差が発生するので、風景を撮影する方にはぜひレンズを1本買ったと思って入手してほしいアイテムがGND角型フィルターといえます。

 

ちなみにレンズの前に装着するガラス板1枚が2万円前後ということに驚く方も多いですが、Cokin NXシリーズに使っているCokinのニュアンス・エクストリームシリーズは強化ガラスを使用しているので、撮影時の常識的な高さ程度から落下しても割れず、せっかくの高価なレンズの前に装着してもレンズの性能への影響を最低限に留め、ニュートラルな色再現性を確保、さらにはっ水、はつ油処理されているので水滴や汚れが付きにくく、指紋などの汚れがついても簡単に拭き取れます。

 

なお同じCokinでもCokin NXシリーズ以外の角型フィルターホルダーのシリーズがあるのですが、いくつかのシリーズを使ってきた筆者は圧倒的にCokin NXシリーズを推します。都会の大型量販店などでは、サンプルを触ることが可能だと思いますので、ぜひCokin NXシリーズ以外と触り比べていただきたい。圧倒的な製品精度の高さと使い勝手のよさが痛感できると思います。

 

最後に普段の撮影ではGNDフィルターありなしの比較作例は撮影していないので、GNDフィルターありの写真のみですが、朝日に照らされるジュエリーアイスや神威岳山頂からの雲海の朝日を撮影した画像を紹介させていただきます。筆者の場合は、1度GNDフィルター+PLフィルターを使ってCokin NXで撮影したシーンを角型フィルターなしで撮影するのはかなり気が進まないほどGNDフィルター+PLフィルターは高い効果を発揮します。風景撮影全般でGND角型フィルター+PLフィルターは絶大な効果を発揮するので、レンズの1本分ともいえる価格にひるまずぜひ挑戦していただきたいアイテムになっています。1度使うと手放せなくなりますよ。

 

 

<公式サイト>Kenko Tokina

アマゾンコッキン公式商品ページ https://amzn.to/4bPEJRC

 

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齋藤千歳(フォトグラファーライター)

元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータを元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラアクセサリー、車中泊・キャンピングカーグッズなどの記事も執筆。現在はキャンピングカーを「方丈号」と名付け、約9㎡の仕事部屋として、車内で撮影や執筆・レビューなどを行っている。北海道の美しい風景や魅力を発信できればと活動中。

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