アウトドアレジャーの季節。スマホやタブレットはもとより、デジカメやビデオカメラ、ポータブルテレビ、ブルートゥーススピーカーなど、準備に余念のないことだろう。防水・防塵性能もしっかりチェックして、不意の雨や突風などに備えたい。【2019年10月29日更新】
監修者のプロフィール
中村剛(「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権優勝)
「TVチャンピオン」スーパー家電通選手権で優勝の実績を持つ家電の達人。家電製品総合アドバイザー、消費生活アドバイザー。東京電力エナジーパートナー商品開発室高度化技術グループマネージャー.。東京電力「くらしのラボ」所長。現在、暮らしに役立つ情報を動画(Facebook)で配信中。
▼中村剛さんのインタビュー(くらしTEPCO)
▼東京電力くらしのラボ(Facebook)
防水・防塵の基礎知識
「IP68」など、四つの英数字で表示される
デジカメやスマホ、腕時計、ポケットラジオ、タブレットPCやポータブルAVギアなど、持ち歩くことの多いアイテムには、通常、何らかの防水・防塵機能が備わっている。内部に水やゴミが浸入すると、回路が短絡したり、メカが変形したりして故障や破損の原因になるからだ。
とはいえ、小雨なら大丈夫でも水洗いすると壊れるなど、そのレベルを見極めるのはけっこう難しく、一瞥しただけではわかりにくい。
そこで、製品には、防水・防塵の保護等級が示されるようになっている。
従来は、JIS(日本工業規格)が「電気機械器具の外郭による保護等級」を規定。これには、固形物の浸入に対する保護と、水の浸入に対する保護の二つの内容が含まれ、例えば、「JIS防水4級」とあれば、「防沫形=全方向からの水の飛沫に対して保護されている」とわかる仕組みだ。
2003年以降は、IEC(国際電気標準会議)と統一化が図られ、表記もIEC準拠の「IPコード」に置き替わっている。等級や内容は旧来規定と同じなので、「防滴I形」「防沫形」などの旧呼称もそのまま用いられることが多い。
防水の保護等級

防塵の保護等級

IPコードは、通常、四つの英数字で構成される。
例えば、「IP68」と表示されている場合、第一特性数字の「6」が固形物に対する保護等級(防塵)、第二特性数字の「8」が水に対する保護等級を示している(防水)。
等級を省略するときは、その部分を「X」で表す。
まずは、この基本表記を覚えておきたい。
防水・防塵規格の表示

用途別の選び方
水中でも使う場合はIPX7〜8が必要
スマホやデジカメなど、雨の日にも使うことがあるアイテムは、防水機能のチェックが必須なので、ごく当たり前にIPコードを確認しているかもしれない。でも、どのくらいの等級なら安心なのか、よくわからずに見ていることも多いので、改めて、その基準を把握しておこう。
IPX4
濡れた手で触れたり、水がはねたりもOK。キッチン周りで便利
アウトドアで使用するアイテムは、少なくともIPX4は必要だ。
IPX1〜3は落ちてくる水滴が対象だが、IPX4ではあらゆる方向からの水の飛沫が対象。少々の雨や水しぶきに当たっても大丈夫なレベルで、携帯電話、デジカメ、防災ラジオなど、該当する製品はけっこう多い。
水しぶきが心配なキッチンやアウトドアでは、最低限、この等級を望みたい。
ブルートゥーススピーカー
ボーズ SoundLink Color Bluetooth speaker II

IPX4 プールサイドや公園の水辺で安心して使える。シリコンを採用したソフトタッチな表面は手から滑らず持ちやすい。

SoundLink Color Bluetooth speaker II
SLink Color II
お風呂ラジオ
ソニー ICF-S80

IPX4 お風呂やキッチンで水滴を気にせず聴ける。吊り下げて使えるストラップベルトが便利で、音量が大きいのも特徴。

シャワーラジオ
ICF-S80
緊急用ラジオ
東芝 TY-JKR5

IP54 濡れた手で触れても、水がはねる場所でも大丈夫。工事現場やホコリっぽい場所でも使えるように防塵性能も高い。

手回し充電ラジオ
TY-JKR5
IPX5
お風呂での水しぶきも安心。水中に落としたらすぐに取り出す
IPX5になると、より防水性が強まり、噴流水に当たっても有害な影響を及ぼさないので、お風呂でシャワーの水を浴びても、流水でジャブジャブ洗っても大丈夫なレベル。スマホ、ブルートゥーススピーカー、お風呂テレビなど、こちらも製品数が多い。
ただし、水没は厳禁だ。
ブルートゥーススピーカー
ソニー SRS-XB10

IPX5 お風呂やキッチン、キャンプやバーベキューで水しぶきを気にせず音楽を楽しめる。存在感ある重低音が感動的。

ワイヤレスポータブルスピーカー
SRS-XB10
JBL UA Sport Wireless -Engineered by JBL

IPX5 激しく動いても耳から外れにくく、快適なフィット感。イヤホン部分が防水なので、大量に汗をかいても安心。
さらに強力なIPX6もあるが、これは波浪のような激しい噴流水に対する保護。今回対象としている家電アイテム、IT機器、AVギアには該当製品がほとんど存在せず、港湾などの装置や設備が対象だ。

ワイヤレスイヤホン
UAJBLWIRELESSB
IPX7/IPX8
水中に落としてもOKの、いわゆる本格防水レベルを実現
IPX7とIPX8は、噴流に対する保護(IPX5〜6)とは用途が異なり、IPX7〜8は潜水に対する保護である。
IPX7は、一時的に水没(30分・1メートル)しても動作に影響の出ないもの。IPX8は、常時水没(水中で操作)しても動作に影響の出ないものを示す。防水スマホ、防水カメラ、防水テレビ、シェーバーなどが該当する。IPX7なら、一時的に水没しても動作に影響の出ないので、プールサイドやお風呂でも、より安心といえる。
ブルートゥーススピーカー
アルティメット イヤーズ WS650LI WONDERBOOM

IPX7 プール、ビーチ、雨天のフィールドなどで明るく美しい音楽を再生する。完全耐水性で水に浮き、水洗いも可能。

WONDERBOOM
WS650
シェーバー
パナソニック ES-ST8P

IPX7 本体を水に浸けて水洗いしても大丈夫。水洗い後は刃をしっかり乾燥させることが大事だ。肌にやさしく、使いやすい。

ラムダッシュ
ES-ST8P
テレビ
パナソニック UN-15TD7

IPX6/7 録画したテレビ番組や市販のブルーレイ/DVDを、本体から離れた防水モニターで視聴するシステム。モニターは薄めた中性洗剤で洗える。
amzn.to

ポータブル 液晶テレビ
UN-15TD9
なお、IPX5〜6は噴流、IPX7〜8は潜水と用途が異なるため、双方に対応する場合は「IPX5/IPX7」のように、それぞれのIPコードが併記される。
また、製品によっては、「生活防水」や「完全防水」などとうたわれることがある(それぞれIPX3〜4相当、IPX5〜6相当といわれる)が、呼称に明確な規定がないので、カタログなどで”等級”を確認することが肝要だ。ただし、どの製品も条件や状況によっては、防水性能が十全に発揮されないので注意が必要だ。
スマホやデジカメの場合、端子のカバーがしっかり閉まっていないと浸水するし、高温多湿なサウナ、化学物質や薬剤が混ざった水(温泉、海水、プールなど)も防水性能が保証されない。
防塵の必要度
過酷な場面や天候の影響を受ける場所では必須
機器の内部に粉塵が入り込んでメカなどに付着すると、動作不良を引き起こすおそれがある。すき間が大きいと、指先が入り込んで、感電したり、怪我をしたりする危険性もある。
こうした事故を防ぐためにチェックしたいのが、防塵性能だ。ただ、一般的なアウトドアシーンでは、機器に有害な粉塵が発生するケースはまずないので、通常、防塵性能はほとんど気にしなくていいと思われる。
実際、「IPX5」のように等級が省略され、防水性能のみを示す製品が大半だが、中には「IP68」のようにしっかり等級を示す製品もある。
デジカメはその代表例で、工事現場など、過酷な状況を撮影しなければならないときは、防塵等級の確認が大切になる。外に設置する定点カメラやネットワークカメラも、荒天を想定して、等級を示す製品が多い。
IP58/IP68
防塵にも完全防水にも対応したアウトドアで活躍する強靭モデル
粉塵を完全にシャットアウトし、水中でもすべての操作が可能。カメラやスマホのほか、パソコン用キーボードやマウスなども丸洗いできて衛生的なので人気がある。
デジカメ
リコー WG-50

IP68 水深14メートルで連続2時間の水中撮影、マイナス10℃の雪山でも作動と、過酷なシーンに対応するタフネスモデル。

防水デジタルカメラ
WG-50
ビデオカメラ
JVC GZ-RY980

IP58 雨に強い防水、細かな砂ボコリも安心な防塵、落下に強い耐衝撃、マイナス10℃でも使える耐低温の四つの保護性能を装備。

ビデオカメラ
GZ-RY980
ネットワークカメラ
ネットギア Arlo Pro
実売価格例:4万7331円(VMS4230)

IP68 Wi-Fiで通信するワイヤレス・ネットワークカメラ。風雨や砂塵に強いので、電波が届く範囲で屋外にも設置できる。

Arlo Pro
VMS4330
スマートフォンの防水はどうなってる?
現在、大半のスマホが防水仕様。でも、機種によって等級が異なるので、特に、IPX7とIPX8はよく確かめたい。IPX8ならスマホを水中に沈めて写真や動画を撮れるが、IPX7だと水中撮影は保証されない。

IP67 iPhone X

IP68 Xperia XZ1
腕時計の20気圧防水って何?
水深200メートルの水圧に耐えられる、日常生活用強化防水のこと。水泳、ヨット、素潜りなどに使えるが、潜水用防水ではないのでスキューバや潜水作業には使えない。
※価格は記事制作時のものです。