令和元年は、キャッシュレス時代元年。とくにスマホを使った買い物は当たり前の時代になった。しかし、これが個人間のお金のやり取りとなると、まだまだキャッシュレスは普及していないのが現状だ。そこで今回は、2019年現在の個人間送金の手段を調べてみた。【2019年5月24日更新】
個人間送金とは?
銀行振込や現金書留との違い
2019年5月段階の日本において、スマホで行える個人間送金の方法は、おおむね下記の表(リスト)のようになっている。
既存の送金手段、例えば銀行振込のように相手の口座番号を知らなくても、現金書留のように、相手の住所を知らなくても、既存のSNSのアカウントやアプリのアカウント、アプリのQRコードを使って「友人登録」をしておけば、それだけで送金ができるという手軽さがメリットである。
個人間送金の仕組みには、種類がある
資金移動業者、前払い式支払い手段発行業者、収納代行業者、電子決済等代行業の違い
お金を扱うので、送金サービスを提供する業者は何かしらの資格や届け出が必要。それが「業者形態」である。
「楽天銀行フェイスブック送金」の楽天銀行は、従来からある「銀行業」だが、それ以外は、なじみのない「資金移動業者」「前払い式支払い手段発行業者」「収納代行業者」「電子決済等代行業」である。
資金移動業者は「LINE Pay」
「資金移動業者」は「LINE Pay」が代表で、事前の本人確認が必要。送り手側の支払い手段としてクレジットカードが使えないという制限がある。
前払い式支払い手段発行業者は「PayPay」「楽天ペイ」「Kyash」
「前払い式支払い手段発行業者」は「PayPay」や「楽天ペイ」「Kyash」が代表で、本人確認は不要。チャージ方法はクレジットカードという業者が多い。「前払い式」というのは、簡単にいうとプリペイド方式で、受け取り側がポイントを現金化することができないという制限がある。
電子決済等代行業は「Money Tap」「J-Coin Pay」
「電子決済等代行業」は、いちばん新しい業者ジャンルで「Money Tap」と「J-Coin Pay」が該当する。顧客と銀行の仲介をする役割をもち、顧客の代わりに送金や支払いの指示、口座情報の照会をする業者である。その一環としてスマホアプリでの個人間送金を行うことができる。現状では銀行系の業者が運営している。
すでに淘汰が始まっている
「収納代行業者」に関しては、かつて「Paymo」というサービスがあったが、19年5月にサービスを終了しており、現在は収納代行業者が運営するサービスは見当たらない。
代金を支払った証拠の提出が義務化されており、飲み会の割り勘をする場合、レシートの写真を取って送信しなければならないという手間が足かせになったのだろう。
また、資金移動業者として運営されていた「Yahoo!ウォレット」の個人間送金「さっと割り勘 すぐ送金 from Yahoo!ウォレット」も、19年3月にサービス提供を終了し「PayPay」に統合されている。
ここからは、個別のサービスについて見ていこう
LINE Pay(ラインペイ)
運営企業:LINE Pay
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おなじみLINE Payで個人間送金が可能。資金移動業者の制限があるため、クレジットカードを登録していても送金には使えない。受け取り側はLINE Payのチャージとなり、JCB加盟店で利用可能。自分の銀行へ振り込む形で現金化ができる。
PayPay(ペイペイ)
運営企業:PayPay
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スマホ決済の急先鋒となったPayPayも「PayPay残高」(自分でチャージした残高のみ)を送金可能。受け取り側の残高にチャージされるので、PayPayで支払いができる加盟店で買い物に使うことができるが、現時点では現金化はできない。
楽天ペイ
運営企業:楽天ペイメント
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楽天ペイも、2019年から個人間送金に対応。送れるのは、楽天カードからチャージした「楽天キャッシュ」に限定されている。受け取り側は、通知がきてから3日以内に受け取り操作をする必要があり、3日を経過すると送り主に返金される。
pring(プリン)
運営企業:Pring
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資金移動業者で、登録可能な銀行はLINEほど多くないものの、メガバンクと大手地方銀行が対応している。指定銀行ならば出金手数料が無料、というのはお得。比較的大きめの金額(100万まで)の送金に使用すると、銀行振込よりお得だ。
Kyash(キャッシュ)
運営企業:Kyash
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買い物に使えるプリペイドのポイントを、相手にプレゼントするスタイル。送受信者双方がアプリをインストールしていれば、事前登録なしで使える。たまったポイントは、VISA加盟店のオンラインストアで使えるほか、モバイルSuicaにチャージも可能。
Money Tap(マネータップ)
運営企業:SBI Ripple Asia
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住信SBIネット銀行とスルガ銀行の提携で誕生した「電子決済等代行業」のサービスであり、アプリを使って、銀行口座間の直接即座送金が年中無休24時間いつでもできる。現在は上記2銀行でのみ利用。自分の口座間でも利用できる。
J-Coin Pay(ジェイコインペイ)
運営企業:みずほ銀行
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みずほ銀行と地銀39行が提携した「電子決済等代行業」のサービス。決済機能(お店での支払い)にも対応しているが、まだ加盟店は少ない。現状は年間24時間通して口座から口座へ直接振込される個人間送金のサービスとなっている。
楽天銀行 フェイスブック送金
運営企業:楽天銀行
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銀行振込の新しいバリエーション。フェイスブックの「友達」なら、相手の口座番号を知らなくても送れる。受け取り側は送金通知が届いたら入金する口座を指定(楽天銀行以外も指定可能)。一度指定すれば、次回以降は自動入金になる。
スマホで行える個人間送金の方法
基本的にはスマホのアプリで送金や受け取りを行う。現金化できるものとできないものがある
どれが一番使いやすいのか
みんなが使っているサービスがいちばん役立つ
スマホ決済の手段が乱立しているので、個人間送金の手段もかなり増えている。
正直、これだけ増えていると、すべてをフォローするのは不可能で、実生活で使うサービスは1つか2つ程度に絞られるだろう。
では、どんなサービスが使い勝手がいいかというと、サービスの内容で評価するのではなく、どれだけ多くの利用者がいるか、自分の周りではどのサービスを使っている人が多いかという点のほうが重視される。
その点でみれば、「LINE Pay」「PayPay」「楽天ペイ」は強い。個人間送金は使ったことがなくても、普段の買い物の支払いに、利用している人同士なら、そのまま個人間送金ができる。
受け取った側が、どこで使えるか
現金に替えることができるか、電子マネーとして受け取るか
個人間送金の重要なポイントして、受け取った側が、それをどう使えるのかがある。
とういのも、現状では「資金移動業者」と「電子決済等代行業」は、受け取った側がその金額を「現金」にして手元に置くことができるが、「前払い式支払手段発行業者」は、電子マネーのポイントとして受け取ることになっており、現金に戻すことができないからだ。
電子マネーならば、どのお店で使えるがポイント。
PayPayは急速に使えるお店が増えているので、他のサービスに比べればいくらか有利だろう。しかし、使えるお店の数でいえば、「Kyash」が圧倒的に強い。
「Kyash」は、クレジットカードでKyashのポイントを購入し、送金したい相手に対し、それをプレゼントするという形になる。ポイントをもらった側は、それをVISA加盟店のオンラインショップでの支払いに使用できるので、使い道は幅広いといえる。
また「Kyashリアルカード」というプラスチックカードを発行してもらうことが可能で、これを使えば実店舗での買い物も可能である。
銀行振込のバリエーションも登場
「楽天銀行フェイスブック送金」「Money Tap」「J-Coin Pay」は銀行振込のバリエーション
「楽天銀行フェイスブック送金」は「楽天銀行」アプリと「フェイスブック」アプリを連係させ、楽天銀行アプリでフェイスブックの「友達」に送金するという方式。
受け取り側にはフェイスブックの「メッセンジャー」で、送金されたことが通知され、その指示に従い、自分の銀行口座に入金する手続きを行うことになる。受け取り側の状況にもよるが、送金手数料が無料になるのは大きなメリットだ。
「Money Tap」と「J-Coin Pay」は、提携銀行間で、いつでも(深夜でも)振込が実行されるというもの。銀行が直接運営しているので、ポイントを銀行口座に戻すといった手間はかからない。
使える銀行がそれほど多くないこと、電子マネーの機能がない、またはまだ使えるお店が少ないということで、現時点では、飲み会の割り勘に使うのには向いていない。
個人事業主が業者間の支払いに使うといった用途がメインと考えられる。
まとめ
結論、飲み会の割り勘ならPayPayがいい
現状、個人間送金の手段としてのスマホ利用は、どれも一長一短で、完璧なものはない。
飲み会の割り勘、同窓会の会費徴収といった用途がメインならば、みんなが使っているものが有利。その点ではLINE PayやPayPayが強いといえる。
ただし、その場にスマホ決済未経験者がいた場合、LINE Payは利用登録が複雑で、飲み会の席で新規加入から初回利用まで持っていくのは、ほぼ不可能。
その点PayPayならば、その場でアプリをインストールして、その場で使うことも可能である。
実際のところ、現時点で個人間送金の覇者は存在しない。
今後、キャッシュレス時代のスマホ決済の覇者が見えてくれば、それに伴い個人間送金の覇者の決まるだろう。
◆福多利夫(フリーライター)
デジタル家電関連の記事を得意とする、モノ系ホビー系のフリーライター。一般財団法人家電製品協会認定の家電総合アドバイザーでもある。長年にわたり月刊『特選街』の制作に携わり、パソコン関連の著書も多い。