スーパーの食品売り場で手に入る、ナスのぬか漬けの発色剤に使われる食品添加物「焼ミョウバン」。実はこれが、わきが、汗臭を瞬時に退治してくれる、スーパーデオドラント剤だったのです。また10円玉を加えると、アトピーやオムツかぶれ、あせも対策に、ハッカ油を加えると、加齢臭や部屋のニオイ消しになります。【解説】今井龍弥(開業医)
奈良時代には医療用に使われていたミョウバン
わきの下のニオイ、足のニオイ、汗のニオイ……。これらは、食品添加物の「ミョウバン」を使えば、簡単に解決します。
ミョウバンは、奈良時代には「白礬(はくばん)」と呼ばれて、医療用に使われていました。
現代では、ナスのぬか漬けの発色剤として、スーパーの食品売り場や食料品店で「焼ミョウバン」の名で販売されていることが多いようです。
家庭で漬け物を漬けるのがあたりまえだった昔の主婦なら、知らない人はいないほど有名なものです。
ミョウバンは、化学的には多くの種類がありますが、家庭で使用するのには、スーパーの食品売り場や食料品店の商品棚に並んでいる安価なミョウバンであれば、なんでもいいでしょう。どれでも、水に溶かせば「ミョウバン水」になります。
例えば、焼ミョウバンと表示されていたら、それは粉砂糖(粉糖)と同じで、解けやすくするため、「生ミョウバン」(結晶ミョウバン)を加熱して、結晶水を取り除いてガサガサの無水状にしたものです。
とはいえ、ガサガサの無水ミョウバンも、指でつぶせば、サラサラした粉末になります。
基本の「ミョウバン原液」はお湯を使えばすぐ作れる
食料品店、またはスーパーの食品、漬け物材料コーナーで焼ミョウバン50gを購入します。
1L入りのペットボトルを用意して、そこに水道水1Lを入れます。
そのうち半分をやかんに入れ、沸騰させます。沸騰したら、そこへ残りの水道水を入れます。
そして、空になったペットボトルに漏斗などを使ってミョウバン50g(1袋30gならば2袋)を入れ、そこにやかんのお湯をすべて注ぎ入れます。
この操作で、ほぼ飽和水溶液の状態の「ミョウバン原液」のできあがりです。
飽和水溶液とは、ミョウバンや砂糖、食塩などの結晶物質が、これ以上水に溶けない状態のことです。飽和水溶液の濃度は、温度によって変化します。気温が低くなると、結晶が底に沈殿するようになります。
ですから、夏はいいのですが、冬に容器の底に結晶が沈殿することがあります。そんなときは、加熱したり、振ったりせずに、上澄み(飽和水溶液)をそのまま使います。
ミョウバンには、軽度の殺菌性がありますので、原液の保存は、保冷や遮光をする必要はありません。じゃまにならないところに置いておきます。
「ミョウバン原液」の作り方
【用意するもの】
焼ミョウバン:50g(1袋30gならば2袋)
1Lサイズのペットボトル
焼ミョウバン
500g
【作り方】
わきの下のニオイには「10倍に薄めたミョウバン水」が効く!
わきの下の汗のニオイには、「ミョウバンおしぼり」「ミョウバンハンカチ」「ミョウバンタオル」を作り、随時、わきの下をぬぐいます。
洗面器などに、ミョウバン原液をペットボトルのキャップ1杯分取り、そこへキャップ9杯の水道水を加えると、「10倍に薄めたミョウバン水」が出来ます。
このミョウバン水に、タオル、ハンカチを漬け、絞ってポリ袋に入れるとミョウバンおしぼり、ミョウバンハンカチです。それを干して乾かせばミョウバンタオルです。
「ミョウバンおしぼり」「ミョウバンハンカチ」「ミョウバンタオル」の作り方
アトピーやオムツかぶれに「ミョウバン銅貨液」が効く!
アトピー性皮膚炎や、オムツかぶれを起こしやすい乳幼児には、殺菌性のいっそう強い「ミョウバン銅貨液」を作るとよいこともあります。
ペットボトルにミョウバン原液を作りましたら、ペットボトルの肩のところにナイフで切れ目を入れ、10円玉(銅貨)を20枚押し込みます。
ミョウバン原液を繰り返し作っているうちに10円銅貨が黒ずんできましたら、ペットボトルを切り、取り出します。
10円玉を20枚加えた「ミョウバン銅貨液」の作り方
靴下のニオイ対策に「5倍に薄めたミョウバン水」が効く!
ニオイの気になることの多い靴下は、洗面器や湯桶に水道水を入れ、そこへミョウバン原液を4分の1ほど加え「5倍に薄めたミョウバン水」を作ります。
靴下は、洗濯を終わり、脱水しましたら、靴下全体をミョウバン液に浸すのではなく、足指の部分を5倍に薄めたミョウバン水に浸し、ギュッと絞って、干します。
「5倍に薄めたミョウバン水」の作り方
シャツ、枕カバーのニオイ対策に「10倍に薄めたミョウバン水」が効く!
シャツ、枕カバーには、ミョウバン原液に9倍の水道水を加え、「10倍に薄めたミョウバン水」を作ります。そこに、シャツや、枕カバーの、ニオイの気になる部分だけつけて、ギュッと絞って、乾燥させます。
「10倍に薄めたミョウバン水」の作り方
加齢臭やお部屋のニオイ対策には「ハッカ・ミョウバン水」が効く!
加齢臭は、本人は気にならないのですが、介護などで外から部屋に入る人に気になることがあります。
ハッカ油を加えた「ハッカ・ミョウバン水」を作り、スプレー容器に詰め、衣類、寝具や床、壁に噴霧すると、消臭になります。
ハッカ・ミョウバン水の作り方も、至って簡単です。薬局かドラッグストアで、ハッカ油(数百円)を購入し、スプレー容器に入れた「10倍に薄めたミョウバン水」に、ハッカ油を少しずつ加えます。滴下型キャップがついていない製品ではハッカ油を少しずつ加えるのに少々コツがいりますが、少しずつ撹拌して使用してみて、快適な香りにします。
「ハッカ・ミョウバン水」の作り方
アトピーには「ミョウバン銅貨浴」がおすすめ
アトピー性皮膚炎の患者さんには、「ミョウバン銅貨浴」をお勧めします。
銅とミョウバンの殺菌性の相乗効果と、ミョウバンの収斂性で、皮膚表面の層である表皮の最外層の角質(軟ケラチン)の表面が、爪や髪の毛のような硬ケラチンで覆われ、外部からの侵害刺激が表皮の内面に伝達されづらくなり、症状が出にくくなります。
アトピー性皮膚炎を根治するものではありませんが、症状の軽減に役立つでしょう。
ミョウバン銅貨浴は、至って簡単です。オクラなどを売る際に入っているくらいの網袋に、10円硬貨を20枚以上入れ、浴槽に入れておきます。そこへ、ミョウバン原液を、ペットボトルのキャップ5杯ほど入れるだけです。
【用意するもの】
「ミョウバン銅貨浴」のやり方
「ミョウバン水」Q&A
Q1.「ミョウバンはメーカーや価格によって品質に差はありますか?」
A1.安価な焼ミョウバン(アンモニウムミョウバン)は、硫酸アルミニウムと硫酸アンモミニウムを混ぜるだけでできる簡単な結晶物質です。分離精製など複雑な工程は不要ですから、できた当初から純物質です。したがって、値段が安くても高くても、同じ品質です。初めは入手しやすい店で購入し、試してみます。効果に納得できましたら、1g当たりがいちばん安価な店で購入します。目安としては、包装単位が大きいほうが安価です。
安価な焼ミョウバン(アンモニウムミョウバン)は、硫酸アルミニウムと硫酸アンモミニウムを混ぜるだけでできる簡単な結晶物質です。分離精製など複雑な工程は不要ですから、できた当初から純物質です。したがって、値段が安くても高くても、同じ品質です。初めは入手しやすい店で購入し、試してみます。効果に納得できましたら、1g当たりがいちばん安価な店で購入します。目安としては、包装単位が大きいほうが安価です。
Q2.「パッチテストは必要?つけてはいけない体の部位はある?」
A2.古来、各地に天然ミョウバン温泉があるほど、ミョウバン水は安全なものです。「ミョウバン水」には、パッチテストも試し塗りもいらないと考えます。またどこへつけていただいてもかまいません。
Q3.「そのまま パウダーとしてつけてもいいですか?」
A3.ミョウバンをわきにつけるのは江戸時代の昔から行われているようで、特段の不都合もないようです。ただし、わきの多汗症でなければ、ベビーパウダーのように粉末でなくてもかまいませんから、ミョウバンおしぼりや、それを乾燥させたミョウバンタオルを使われたほうが便利かと思います。
解説者のプロフィール
今井龍弥(いまい・たつや)
開業医。1940年、名古屋市生まれ。高1時、落ちこぼれて不登校になり、簿記とそろばんで卒業。東邦ガスに4年間就職。偶然見つけた「只管勉強法」で京都大学入学。京都大学医学部卒業後、大阪大学歯学部を卒業。医師免許、歯科医師免許を取得。名古屋市内に診療所を開業するかたわら、患者自らが実践できる「三安宝廃物医療」の研究を進めている。主な著書に、『アトピー性皮膚炎が3日でよくなる美肌水』『3日で効く美肌スキンケア』『塗れば効くヨーグルト美人ケア』(いずれもマキノ出版)などがある。
この記事は『ゆほびか』2018年10月号に掲載されています