バレーボール引退後は、現役時代に培った体力の貯金のみで突っ走ってきたものの、それも40代半ばくらいで尽きかけてきたようです。ちょっとショックだったのは、地下鉄の長い階段を上っているときに、息切れするようになったことです。【体験談】大林素子(スポーツキャスター・女優・元女子バレーボール全日本代表)
運動嫌いの私が実践する健康法
私は、移動の電車の中では、つり革につかまりながら、よく意識して「かかと落とし」を行っています。
かかと落としとは、立った状態で両足のかかとを上げ、同時にストンと落とす運動です。始めたのは数年前からで、運動嫌いな私が実践している数少ない健康法の一つです。
アスリートというと運動大好き人間ばかりと思われている人が多いようですが、そうとも限りません。
私の場合、子供のころから運動が好きではありませんでした。むしろ、歌手や役者になりたいという思いが強く、宝塚にあこがれていたくらいです。
バレーボールを始めたのも、背が高いというコンプレックスからでした。幸い、指導者や仲間に恵まれ、必死でがんばった結果、全日本メンバーに選ばれ、エース・アタッカーとして活躍できるようになりました。しかしそれでも、運動は好きになれませんでした。
バレーボールに限らず、トップ・アスリートの世界というのは、おそらく皆さんが想像されている以上に、体力的にも精神的にも苛酷な状態を強いられます。少しでもパフォーマンスを上げようと、極限まで体をいじめ抜く毎日。また、一つのポイント、一つの勝利にかけるプレッシャーやストレスも並たいていではありませんでした。
それは、ひたすら自分の限界を求める苦行のようなもの。これほど健康に悪いこともないのでは? と思うくらいです。
1997年に引退したときは、寂しさの一方で、「ようやく嫌いな運動をしなくて済む」とホッとしたものです。
「かかと落とし」のやり方
【回数】
1日30回を毎日行う。
【かかとを上げる高さ】
2~3cmから始め、少しずつ高くする。
体調や慣れに伴い、高さを調節する。
血行をよくして体力が高まるのがよくわかる!
その後、芸能界に身を転じ、早いもので、もう20年になります。
バレーボール関係のお仕事はもちろん、女優として舞台やドラマ、さらには歌手やスポーツキャスターなどにも挑戦させていただくなど、充実した毎日を送らせていただいています。
そんななか、一つ気がかりなことは体力の低下です。
バレーボール引退後は、現役時代に培った体力の貯金のみで突っ走ってきたものの、それも40代半ばくらいで尽きかけてきたようです。それまで普通にこなしてきた動きが、そうもいかなくなってきました。
ちょっとショックだったのは、地下鉄(都営大江戸線)の長い階段を上っているときに、息切れするようになったことです。声帯保護のために、外出時はマスクをしていますが、途中で外して、息を整えたりすることもよくありました。
さすがに体力の衰えを感じ、そろそろ何か考えなくては、と思って意識的に始めたのが「かかと落とし」だったのです。
実は「かかと落とし」は、バレーボールの現役時には、いろいろな場面で日常的にやっていました。例えば、八王子実践高等学校時代、監督の前では選手は必ずかかとを上げ、直立不動の姿勢で話を聞きます。試合中のタイムアウトのときにも、必ずかかとを上げていました。
先輩から受け継いだ伝統的なもので、当時、意味などは深く考えず、あたりまえのようにやっていました。
しかし今は、それがふくらはぎの筋肉を刺激したり、血行をよくして体力を高めたりするなど、体によい影響をもたらすことがよくわかります。
そのおかげか、最近は、階段での息切れが減ってきました。また、更年期を迎える年齢になりましたが、人間ドックの結果では、「骨密度がすごく高い」とほめられます。
私も50の坂を越し、体のケアという言葉にますますリアリティを感じるようになりました。運動嫌いは相変わらずですが、「かかと落とし」はつらい運動ではないので、続けていこうと思っています。
◆大林素子(おおばやし・もとこ)
スポーツキャスター・女優・元女子バレーボール全日本代表。
1967年、東京生まれ。元女子バレー全日本エースアタッカー。88年、ソウル五輪、92年、バルセロナ五輪、96年、アトランタ五輪に出場後、97年に引退。その後、スポーツキャスター、女優として大活躍。
鎌田實(諏訪中央病院名誉院長 )先生から一言アドバイス
バレーボールで活躍された大林さんが「運動嫌い」だとは、驚きました。バレーボールは、ジャンプを行う骨への衝撃が強い運動です。その蓄積で骨密度が維持できているのかもしれません。
かかと落としは、ふくらはぎの筋肉を鍛えて心臓に戻る血液循環を促進します。血流がよくなれば、息切れも改善します。電車のつり革につかまりながら行うのもお勧めです。