【集中力を高める】プロアスリートも実践する「眼球運動」のやり方

美容・ヘルスケア

実は、子どもの成績が上がらないのは、目が上手に使えていないために、読み書きでつまずいているということも多いのです。また、眼球運動で脳の前頭葉の血流がよくなり、集中力ややる気が向上することもわかっています。【解説】北出勝也(ジョイビジョン代表・オプトメトリスト)

解説者のプロフィール

北出勝也(きたで・かつや)
視機能トレーニングセンター「Joy Vision」代表。米国オプトメトリスト。一般社団法人視覚トレーニング協会代表理事。兵庫県立視覚支援学校非常勤講師。視覚機能に問題のある子どもから大人までビジョントレーニング指導に携わる。ビジョントレーニングの普及のための講演会を全国で行っている。著書に『クラスで楽しくビジョントレーニング 見る力を伸ばして学力&運動能力アップ!』(図書文化社)ほか。
■ジョイビジョンのホームページ

個別に目のトレーニングを指導するオプトメトリスト

私は視覚機能の専門家として、スポーツ選手や子どもたちに目のトレーニングを指導しています。

もともと実家がメガネ店だったことから、目の機能には興味を持っていましたが、目の検査といえば、日本では視力検査が中心でした。

しかし、アメリカでは視力だけでなく、左右上下の目の動かし方など、視覚全般を重視していました。そして、オプトメトリストという専門資格を持った人でないと、メガネやコンタクトレンズは作ることができないのです。

オプトメトリストとは、4年制大学を卒業後、オプトメトリー(眼科学と光学の総合的な学問)の大学で4年間学び、「ドクター・オブ・オプトメトリー」という国家資格が与えられた視覚の専門家です。

オプトメトリストは、視力だけでなく視覚機能も含めた検眼、メガネやコンタクトレンズの処方、ビジョントレーニングの指導などを行っていて、ビジョントレーニングは100年以上の歴史がありました。

そこで、私も「もっと目のことを勉強したい!」と思い、日本の大学を卒業後、アメリカのパシフィック大学オプトメトリースクールに留学し、オプトメトリストの資格を取得しました。

帰国してからは、視機能トレーニングセンター「Joy Vision」を開設。視覚機能に問題がある子どもたちに目のトレーニングを行うようになり、運動能力はもちろん、学習能力の向上にも成果を出しています。

実は、子どもの成績が上がらないのは、目が上手に使えていないために、読み書きでつまずいているということも多いのです。

眼球を動かす運動をしばらく行ってもらうと、文字をちゃんととらえられるようになります。その結果、読み書きが正確になって、スピードもアップし、勉強が楽しくなる子どもをたくさん見てきました。

目のトレーニングは、プロのアスリートにも取り入れられています。
アメリカではオリンピック選手に目のトレーニングが義務付けられているほどですが、日本ではやっと視覚機能の重要性が認知され始めてきたという状況です。

巨人坂本、ヤクルト山田、村田諒太選手も行なっている

私もプロ野球選手やJリーガーなど、プロのアスリートのかたへの指導を行ってきました。プロボクサーの村田諒太選手もその1人です。

3年前、ボクシングの元世界チャンピオン・飯田覚士さんに紹介され、ともに指導することになりましたが、村田選手の目の動きは決してよいものではありませんでした。

すでにオリンピックで金メダルを取られていたものの、目を寄せる力が弱い、目を動かすときに頭が動いているという弱点がありました。

しかし、毎日、目のトレーニングを行ってもらうことでこれらを改善し、8カ月後には動きがよくなって、相手のパンチがよく見えるようになってきたと思います。

その後、村田選手は世界チャンピオンになり、ミドル級で日本人初の防衛も成し遂げました。残念ながら、2度目の防衛には失敗しましたが、現役を続行し復活を果たしてくれることを期待しています。

ブロボクシング村田諒太選手(写真左)は、3年前から眼球運動をはじめとするビジョントレーニングを行っていた

また、プロ野球でも目のトレーニングが行われており、読売ジャイアンツでは、2016年から導入しています。

ヤクルトスワローズの山田哲人選手も目のトレーニングを行っていることが知られており、目の動きの重要性がスポーツの世界で認知されてきたのがうれしいです。

プロ野球読売ジャイアンツでは、すでに数年前から、ビジョントレーニングを取り入れている。写真は、坂本勇人選手がカミネロ選手とともに行っている様子

ヤクルト山田哲人選手は、試合中のベンチでもビジョントレーニングを行っていた

教育現場では知られてきた。高齢者のかたもぜひ試して

目のトレーニングは、教育現場やスポーツの世界だけでなく、高齢者のかたにも効果があることがわかっています。

年齢とともに目の動きが衰えて、ピントが合わせづらくなり、字が読みづらい、視野が狭くなって車の運転がつらい、よくつまずくというかたが、目のトレーニングを続けているうちに、ピントが合うようになって「本や新聞を読むのが速くなった」「視野が広がって、車の運転や料理など日常生活がラクになった」というかたも多いのです。

また、眼球運動で脳の前頭葉の血流がよくなり、集中力ややる気が向上することもわかっています。

視力向上のトレーニングではありませんが、ピントがしっかり合わせられるようになって、視力アップにつながったかたもいらっしゃいます。

ぜひ、皆さんも、下項の目のトレーニング「眼球運動」を行ってみてください。

毎日2セット行うと早い人では2カ月で変化が

目のトレーニングは簡単で、跳躍運動(眼球を左右上下ななめに動かす眼球運動)、目で対象物を追っていく追従運動、遠くを見ることと寄り目で見ることを繰り返す輻輳運動などがあります。

眼球運動を行うことで、空間認識、動体視力がよくなって、球技などのスポーツの上達も期待できます。

追従運動では、車の運転がラクになったり、疲れ目が改善するといった効果が期待できます。

目を寄せる力を鍛えると、ピントが合わせやすくなり、老眼の改善、文字が読みやすくなる、料理がしやすくなるといった変化を感じられるはずです。

これらのトレーニングを毎日2セットずつ行うだけで、早い人では2カ月ほどで「見えやすくなった!」と感じられるでしょう。

トレーニングに慣れてくれば、指を使わずに目を動かすこともできるので、仕事の合間や電車の中などで行ってもいいでしょう。

「眼球運動」のやり方

【目の跳躍運動】

顔から30〜40cm離して、幅30cmくらい開けて両手の親指を立てる

右、左、右、左、右、左、右、左と、1秒ずつ親指の爪を交互に見る。10〜30秒行う

両手を上下に開いて、上、下、上、下、上、下、上、下と、1秒ずつ親指の爪を交互に見る。10〜30秒行う

両手を右上と左下に開いて、右上、左下、右上、左下、右上、左下、右上、左下と、1秒ずつ親指の爪を交互に見る。10〜30秒行う

両手を左上と右下に開いて、左上、右下、左上、右下、左上、右下、左上、右下と、1秒ずつ親指の爪を交互に見る。10〜30秒行う

【目の追従運動】

顔から30〜40cm離して片手の親指を立てる
直径40cmほどの円を描くつもりでゆっくりと回す。その指先の爪を目で追う
右回り左回りを交互に繰り返して1分間続ける

【目の輻輳運動】

遠くの物を見る。5m以上離れているのが理想

顔から30〜40cm離して立てた親指の爪を見る

爪を見ながら、親指を目と目の間にゆっくりと近づけていく。寄り目にしてなるべく近くまでピントを合わせる
ピントが合わなくなったら、再び遠くを見る
このように(9)〜(11)を5〜10回繰り返す

【ポイント】
◎顔は動かさない
◎慣れてきたら、片足を浮かせて、バランスを取りながら行うと、難易度が上がって、より鍛えられる
◎公共の場では、指を使わず、目だけ動かして行ってもいい

歳を取ったからそういうもの、と諦めないでほしい

老眼、疲れ目、本が読みづらい、運転がしづらい、段差につまずいて転ぶなど、「歳を取ったから、目が悪くなって、不便が出てくるのはしょうがない」と諦めている人も少なくないでしょう。

しかし、目のトレーニングを続けると、年齢に関係なく、視覚機能をアップさせることができるのです。

目が見えづらいからと、読書をやめてしまったり、出かけるのがおっくうになると、老化はますます進んでしまいます。

また、地方では車がないと生活できない場合も多く、できるだけ長く運転を行えるようにするためにも、目のトレーニングを行っていただきたいと思います。

現代の生活では、スマホなど狭い範囲を見ることが多く、目を動かすことが少なくなっています。
日常生活で目の運動が足りていないことを自覚して、目のトレーニングを続けてみてください。効果は目に見えて現れてきます。

この記事は『ゆほびか』2019年1月号に掲載されています。

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特選街web編集部

1979年に創刊された老舗商品情報誌「特選街」(マキノ出版)を起源とし、のちにウェブマガジン「特選街web」として生活に役立つ商品情報を発信。2023年6月よりブティック社が運営を引き継ぎ、同年7月に新編集部でリスタート。

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