「AI搭載!」。猫も杓子もAI、AIで、最近飽きるほど見る告知です。しかし、劇的に変わったというものは、ほとんどありません。が、AI搭載のマッサージチェア。フジ医療器の最新マッサージチェア「サイバーリラックス AS-2000」、これには唸りました。どこがどの様にスゴいのか、説明しましょう。
日本のマッサージチェアの実力
日本は、マッサージチェア大国です。というより、まともなマッサージチェアは日本でしか作られておりません。
マッサージ師の手の動きを家電対応させたモノですから、立派な「ロボット」と言ってもいいでしょう。「人の手」くらい、汎用性に満ちたモノはそう多くはありません。全部を真似ることなど、人知では先ず無理と思える程精巧です。
マッサージは「温める」「さする」「もむ・ 押す」「叩く」の4つの手法から出来ています。
「温める」のは血流をよくするため。「手当」と言う言葉がありますが、語源はまさに「手を当てること」。体温で血行をよくするわけです。
次の「さする」も同様、摩擦で温める意味がありますが、マッサージ時のポイントは、血管、リンパ管に沿ってです。つまり、熱だけでなく、外部刺激で流れを良くします。
「もむ・押す」も、筋肉の血行をよくして、老廃物を流します。もちろん、筋肉が固くなったコリもほぐしていきます。
「叩く」は、もむの逆。どちらかというと引き締めます。当然、子供の力くらいでは軽い刺激。引き締めると言うよりは、血行を良くする刺激。同じ肩叩きでも、大人と子供というより力の入れ方で、意味が違ってきます。
マッサージチェアは、これらを「ヒーター」「もみ玉」「エアバッグ」を駆使して行います。
温めは「ヒーター」。「さする」はエアバッグ。「もむ・押す」「叩く」は「もみ玉」という感じです。「押す」は当然エアバッグも行います。
マッサージチェアがスゴいのは、この「もみ玉」「エアバッグ」の動きを、手と同じ効果があるところまで先鋭化されているところです。
物理的な動きを見せる「アナログ」技術と、それを正確にコントロールする「デジタル」技術。この二つを高次元で融合させているので、ちょっとやそっとでは真似ができないのです。
マッサージチェアを作れる総合力を持つのは、「フジ医療器」「ファミリー イナダ」の2大専業メーカーと、家電の実力No.1の「パナソニック」です。
AIで何を変えようとしたのか?
AIが盛んに導入されていますが、AIの特長は「センサーを駆使した状況の読み取り」による「正確な判断」と「学習の蓄積」。「カスタマイズ化」です。
家電というモノは最大公約数、つまり全ての人に合うように設計されます。逆な言い方をすると、自分に合ったモノはないとも言えます。
まず、人間のマッサージ師でも、合う人、合わない人がいます。
上手い人、下手な人と言い換えてもいいのですが、上手いと言われる人でも、万人に合うわけではありません。マッサージの心地よさは、術師より違いますし、それを受ける人によっても違ってきます。
このため、目指すは個人個人にあった「カスタマイズ化」です。
人間は、一人一人体型が違いますので、押すべき所、ツボの位置が微妙に違います。AIが目指すは、押すべき所(ツボですね)の位置の正確な把握なのです。具体的には、2019年現在は、体型とコリ具合を把握して、個人個人のコリの状況に合わせた力でマッサージする。それを目指して作られています。
AI搭載機種は、まるでカープの内野守備
フジ医療器のマッサージチェアは素敵です。肩、腰、ふくらはぎを的確に揉んでくれます。
2019年1月に最新機種「AS-2000」が発売されましたが、AS-2000以下の機種でも満足度「80点」は確実に取れるほどです。
では、これまでの機種と、AIが搭載されたAS-2000とは、どこがどう違うのでしょうか。
マッサージチェアは、肩で位置を決めます。
そして平均値体型に合わせマッサージしていくのが今までの方法です。肩の位置が合っている限り、肩、腰の中心などは、かなりイイ感じです。しかし、それからズレると、ちょっと厳しくなります。
今回のAS-2000でも、肩位置を合わせるための動きはほぼ同じですが、読み込むデーターが異なります。背筋ライン沿いもみ玉を上げていくときに、コリの具合を見て「もみの力加減を最適化」します。そして肩の位置を自動検出した時は「肩から腰までの筋肉位置を把握」しています。この2つにより、その人にあったマッサージポイントのマップができていると言うわけです。
このマップの有無でどの位の差がでるのかというと、今までは、「肩」が、「腰」が、気持ちイイ。野球の守備で言うと、華麗なプレイで確実にワンアウトずつもぎ取る感じです。
しかし、AIがつくと、それぞれの動きが見事に連動。「全体」がとても気持ちイイ。野球の守備に例えると、今全盛の広島カープ内野陣が、トリプルプレーを決めた感じ。コリでピンチの体がいきなり軽くなります。
個人的な感想で表現の違いはあるかも知れませんが、今までの機種が、体のパーツパーツをきちんとほぐしてもらっていたのに対し、AS-2000は「体全体」を一気にほぐしてもらった感じなのです。
このAIくに加え、当然、もみ玉のシステム、エアバッグのシステムも向上していることは言うまでもありません。
また、フジ医療器のマッサージチェアの特長として、多彩なコースと、30分のロングコースがあることを付け加えておきます。「寝落ち」したい人は、是非30分コースを試してください。ポカポカした暖かさ、軽くなった体、極楽体験が貴方を待っています。
マッサージチェアに万能はない
とは言うものの、マッサージチェアに万能はありません。
例えば、ふくらはぎ。
フジ医療器は「エアバッグ」と使うタイプと「もみ玉」を使うタイプの2ラインを用意しています。
もみ玉だと私には強すぎて、イタタタタと「北斗の拳」状態になってしまうのですが、それが気持ちイイ、そうでないとダメという人もいるのです。
今回の「AS-2000」の数字。
2000は、今までの1000番台から「別ステージに来た」ことを示すために、2000とされました。
点数を付けると、90〜95点です。今までより断然素晴らしい。
しかしそれでも、すべての人を満足させられるわけではありません。
マッサージチェア。それは「嗜好家電」として評価すべきモノかもしれません。
そして、マッサージチェアに座るたびに思うのは、日本の技術、品質の高さです。
アナログとデジタルの融合。海外メーカーがおいそれと真似できない日本の「あるべき道」が示されているようにも思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。