骨盤は、自律神経と深いかかわりがあります。子宮脱の場合、左の骨盤が締まりきりません。その結果、交感神経の働きが不十分となり、二度寝したり、日中も眠くて仕方なかったりといったことが起こるのです。【回答者】佐藤裕博(整体ヨガ道場悠遊塾主宰)
回答者のプロフィール
佐藤裕博(さとう・ゆうはく)
整体ヨガ道場悠遊塾主宰。昭和48年生まれ。整体ヨガ道場「悠遊塾」を主宰。10代の頃より東洋医学、禅、修験道などに興味を持ち、中心感覚研究会の故岡島瑞徳氏に師事。自然治癒力を引き出し、体を敏感にしていく整体を行っている。
今回の悩み「子宮が下がってくる」
30代後半で初産、40代に入る頃には、くしゃみをするたび尿もれをしていました。最近、お風呂で膣を洗うたびに、何かが指に当たるのを感じます。子宮が下がってきているようで、心配です。手術は避けたいのですが何かよい方法はないでしょうか。(50代女性)
二度寝をする人は子宮脱になりやすい?
「朝、起きづらい」「物をよく落とす」「決めたことを実行できない」。相談者さまには、そんな傾向がありませんか?
ご相談の症状は「子宮脱」といわれる病気です。一般的には、出産や加齢で子宮を支える筋肉がゆるむことで、発症するとされています。
しかし整体から見ると、ゆるんでいるのは筋肉だけではありません。心身からも適度な引き締まりが失われた結果の症状と考えます。
そのような人には、冒頭の傾向が見られることが多いのです。なぜか説明しましょう。
子宮脱がある人の体は、主に次の二つの特徴が見られます。
(1)骨盤のゆがみ
必ずといっていいほど、左側の骨盤が締まりきらず、右の骨盤が下垂した状態になっています。実は、骨盤は、自律神経(内臓や血管の働きを調整する神経)と深いかかわりがあります。
自律神経のうち、心身を緊張させて活動的な状態にする交感神経と関係しているのは、左の骨盤です。左の骨盤が締まると、交感神経は働き出します。
一方、右の骨盤は、副交感神経と関係しています。副交感神経は心身をゆるめ、休息に適した状態にします。
1日の時間や季節に合わせて、骨盤は開閉します。その動きと連動して、自律神経のバランスも変化します。
例えば、朝になると左の骨盤が締まってきます。すると交感神経が働き出し、日中の活動に向け、体は緊張していきます。これが「目覚める」ということです。
しかし、子宮脱の場合、左の骨盤が締まりきりません。その結果、交感神経の働きが不十分となり、二度寝したり、日中も眠くて仕方なかったりといったことが起こるのです。
また、左の骨盤は握力とも関連しています。左の骨盤がゆるんでいると、握力が弱まるので物を落としやすくなります。
(2)腰椎3番の骨のゆるみ
腰椎3番という骨は、背骨のへその裏側の位置にある骨のことです。子宮の血行と関係している骨で、子宮脱がある人は、この骨に力が入りません。
腰椎3番は、決めたことを実行するときに力が集まる部位でもあります。ですから、ここに力が入らないと、やろうと思っても動けない体になります。
これは逆もしかりです。例えば「銀行に行こう」と思いついて実行するとき、腰椎3番には力が入ります。ところが、何らかの理由で行くのをやめると、腰椎3番から力が抜けます。
力が抜けると、動きづらい体になります。それでますます行動しなくなり、悪循環で子宮脱が起こりやすい状態になることもあるのです。
ですから子宮脱を治すためには、骨盤を整えるともに、生活や心のあり方を見直すことが必要です。
骨盤のゆるみを改善し子宮の血行を促進
それでは、骨盤を整えるセルフケアをご紹介しましょう。あおむけで行う三つの体操です(やり方は下項参照)。
(1)右のわき腹をつまむ
下がっている右の骨盤を引き締める体操です。右の骨盤の下垂が治ると、左の骨盤のゆるみも改善していきます。
(2)へその横をなでる
おなかを引き締めて、血行を促す体操です。おなかの血行がよくなると、子宮の血行もよくなります。
(1)(2)の体操とも「下から上へ」と手を動かすことがポイントです。この方向に力を加えることで、体が引き締まるからです。
(3)恥骨に手を当てる
恥骨から力が抜けていると、臓器が下垂します。体操の仕上げとして、恥骨に力を集めるイメージで行いましょう。
体操が正しく行えたかどうかは、しゃがむ動作で判断します。体操の前後にしゃがんでみてください。終了後のほうがやりやすければ、効果的に行えたということです。
このセルフケアと同時に、必要以上に寝ない、思いついたことは実行する、といったことを心がけてください。子宮脱がより早く改善していくはずです。
子宮脱を改善し予防する体操のやり方
【1日1回、寝る前に行う】
【基本の姿勢】
あおむけに寝て、右のひざを軽く曲げ、右のひざと骨盤のラインがそろうように足を広げる。足先は内側に向ける。左のひざも、足先を内側に向ける。
❶右のわき腹をつまむ
右のわき腹(骨盤のすぐ上から肋骨下端まで)を大まかにへその右下、へその横、へその右上3ヵ所に分け、順に引っぱる。背中の肉をつまむようなイメージで真横に引っぱる。各3回ずつ行う。
❷へその横をなでる
両手を重ねて、右のわき腹からへそに向けてゆっくりやさしくなでる。これも、へその右下、へその横、へその右上の順に行う。各3回ずつ行う。
❸恥骨に手を当てる
両手を重ねて、恥骨に当てる。床方向に垂直に力をギューッと加え、ゆっくり手をゆるめる。3回行う。