常々感じているのが、整形外科医から見ても、ヨガには、腰痛の予防や体幹の強化などに役立つ、重要な動きが数多く含まれているということです。そこで、安全で効果的なヨガ「整形外科ヨガ」を考案しました。その整形外科ヨガの中に、重要な動作として取り入れているのが「ひざ裏伸ばし」です。【解説】井上留美子(松浦整形外科院長)

解説者のプロフィール

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井上留美子(いのうえ・るみこ)
松浦整形外科院長。1971年東京生まれ。聖マリアンナ医科大学卒業・研修。整形外科学教室入局。長男出産をきっかけに実家である松浦整形外科の院長となる。日本整形外科学会整形外科認定医、リハビリ認定医、リウマチ認定医、スポーツ認定医。自分の健康法である笑うことをモットーに予防医学としてのヨガに着目し、ヨガインストラクターに整形外科理論などを教えている。シニアヨガプログラムも作成し、自身のクリニックと都内整形外科クリニックでヨガ教室を行っている。

医師考案のヨガにも組み込まれた動作

心身の健康法として広く親しまれている「ヨガ」。私も長年、趣味としてヨガを続けてきました。

そして常々感じているのが、整形外科医から見ても、ヨガには、腰痛の予防や体幹の強化などに役立つ、重要な動きが数多く含まれているということです。

お年寄りなどが無理なく行って、筋力を維持・増強するのにも向いています。

そこで、整形外科の視点から、安全かつ効果的に行えるヨガを広めたいと思い、私は「整形外科ヨガ」というものを考案しました。

関節を最大限に動かして正しく使う」という考え方に基づいて考案した動作や指導法を、ヨガのインストラクターにお伝えし、安全で効果的なヨガを広めるのが、整形外科ヨガの主眼です。

その整形外科ヨガの中に、重要な動作として取り入れているのが「ひざ裏伸ばし」です。整形外科ヨガでは「ハムストレッチ」と呼んでいますが、ここではわかりやすく「ひざ裏伸ばし」としてご説明しましょう。

当院で指導する整形外科ヨガ流ひざ裏伸ばしは、基本的にどんな人でも行いやすいようにイスに座って行います。一方の足を蹴り出すようにして伸ばし、一定時間キープするというものです(詳しいやり方は下記)。

数ある整形外科ヨガの動作の中でも重要で、患者さんには、「これは家でも行ってください」と言っています。整形外科的に見たひざ裏伸ばしの効果は、以下のように大きく二つあります。

ひざを正しく曲げ伸ばしできるようになる→ひざ痛に有効

多くの人は年齢とともに、ひざをしっかり曲げ伸ばしできなくなります。ひざを軽く曲げた状態がらくなので、それを続けるうちに、正しい曲げ伸ばしができなくなってしまうのです。

すると、ひざの痛みが起こりやすくなり、痛むのでますます曲げ伸ばししなくなるという悪循環が起こります。

また、ひざがしっかり曲げ伸ばしできない状態でスクワットなどの運動を行っても、思うように筋力がつきません。

ひざ痛の予防や改善のために行う、筋トレの効果を上げるためにも、「ひざを正しく曲げ伸ばしできる」ことが必須です。ひざ裏伸ばしは、そのために大きな効果を発揮するのです。

骨盤と背骨を正しく使えるようになる→腰痛に有効

太ももの後ろ側には、大腿二頭筋という筋肉があります。この筋肉は、ひざ裏と、お尻にある座骨という部分を結ぶようについています。座骨は、イスに座ったとき、左右のお尻の下に触れる骨で、骨盤の一部です。

この大腿二頭筋は、イスに座ったとき、最も短い状態になります。ですから、長時間のデスクワークなどで座りっ放しの人の大腿二頭筋は、硬く縮こまってしまいます。すると、骨盤が下に引っ張られて、自由に角度を変えられなくなるのです。

私たちが上体を動かすとき、本来は、骨盤が柔軟に動いて上体の角度が変わるようになっています。ところが、大腿二頭筋が硬いと、骨盤が自由に動かないので、その分、背骨や背中側の筋肉が動きをカバーするしかありません。

その結果、動作のたびに背骨や背中の筋肉に負担がかかり、腰痛を招いてしまうのです。

ひざ裏伸ばしは、大腿二頭筋をしっかり伸ばす動作です。習慣的に行っていると、大腿二頭筋が柔軟に伸びるようになるので、骨盤の動きがよくなり、背骨や背中の筋肉への負担が軽減され、腰痛を防いでくれます。

「ひざ裏伸ばし」は体が温まっているときに行う

整形外科ヨガのひざ裏伸ばしは、単に筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」ではなく、太ももの前側にある大腿四頭筋を収縮させることで、その拮抗筋(一方が縮むと他方が伸びるという反対の動きをする筋肉)である大腿二頭筋を伸ばす「動的ストレッチ」という手法です。

こうした拮抗筋の反射を使う「動的ストレッチ」のほうが、単に筋肉を伸ばす「静的ストレッチ」よりも筋肉は効果的に伸びるといわれています。

運動不足の人は、最初は痛みを感じるかもしれません。体が温まっていないときに、痛みを感じる動作を行うのは危険なのでやめましょう

入浴後やウォーキング後など、血流がよくなって体が温まっているときに、「ちょっと痛い」くらいまで行いましょう。そのほうが効果的です。
この点にも気をつけながら、ぜひ安全かつ効果的にひざ裏伸ばしを行ってください。

《整形外科ヨガ流「ひざ裏伸ばし」のポイント》

①正しいひざの曲げ伸ばしを覚え、ひざ痛予防となる筋トレの効果を上げる。

②ひざ裏伸ばしで大腿二頭筋を伸ばす。そのことで骨盤の動きがよくなり、背骨や背中の筋肉への負担が軽減され腰痛を防止。

③整形外科ヨガ流ひざ裏伸ばしの体勢は、大腿四頭筋が収縮して、その裏側の大腿二頭筋が伸びる。この拮抗筋の反射を使う「動的ストレッチ」で筋肉はより効果的に伸びる。

整形外科ヨガ流「ひざ裏伸ばし」のやり方

画像1: 【整形外科ヨガ】座って行う「膝裏伸ばし」で膝痛・腰痛を予防!

骨盤を立ててイスに座る。後ろに倒れるのが心配な人は、背もたれのあるイスを使ってもよい

画像2: 【整形外科ヨガ】座って行う「膝裏伸ばし」で膝痛・腰痛を予防!

骨盤を立てた体勢のまま足を上げ、足の裏に両手を引っかける。骨盤が後傾しているのはNG!

画像3: 【整形外科ヨガ】座って行う「膝裏伸ばし」で膝痛・腰痛を予防!
画像4: 【整形外科ヨガ】座って行う「膝裏伸ばし」で膝痛・腰痛を予防!

息を吐きながら足を前方に突き出して、ひざ裏を伸ばす。ひざ裏が伸びきったところで5秒キープ。息を吸いながら②、①まで戻す。これを、左右交互に3回ずつ行う

画像5: 【整形外科ヨガ】座って行う「膝裏伸ばし」で膝痛・腰痛を予防!

できない人はこれでもOK!
イスに座りながら足の裏に両手を引っかけられない、引っかけられても足が前方に突き出せない、骨盤が後傾してしまうなどの人は、手で足首を持ったり、足の裏にタオルを引っかけるなどすると、ひざ裏が伸ばしやすくなる。また、腰痛などでイスに座りながら行うのが心配な人は、あおむけの体勢で足を上げ、足裏にタオルを引っかけて、ひざ裏を伸ばしてもよい

画像: 整形外科ヨガ流「ひざ裏伸ばし」のやり方
画像: この記事は『安心』2019年3月号に掲載されています。

この記事は『安心』2019年3月号に掲載されています。

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