トマトのリコピン、ホウレンソウのルテイン、ニンジンやカボチャのカロテノイドなど、ファイトケミカルをとることががん予防の最善策といえましょう。ファイトケミカルを取り出すには、野菜の細胞壁のセルロースを壊さなくてなりませんが、いちばん簡単な方法が、野菜を加熱し、スープにすることです。【解説】前田浩(熊本大学名誉教授)(2020年2月26日更新)

解説者のプロフィール

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前田浩(まえだ・ひろし)

1938年、兵庫県生まれ。熊本大学名誉教授、大阪大学大学院医学系招聘教授、東北大学特任教授、バイオダイナミックス研究所理事長。ドラッグ・デリバリー・システム(DDS *1)研究の世界的パイオニアで第一人者。2016年、「がん治療における高分子薬物の血管透過性・滞留性亢進(EPR *2)効果の発見」でトムソン・ロイター引用栄誉賞(*3)を受賞、世界のトップ5に選ばれ、ノーベル化学賞候補に挙がる。日本がん予防学会会長、日本細菌学会会長、日本DDS学会会長、国際NO(一酸化窒素)学会会長なども歴任。著書に『最強の野菜スープ』『最強の野菜スープ 活用レシピ』(ともにマキノ出版刊)などがある。
▼前田浩 (化学者)(Wikipedia)
▼産学官連携ジャーナル
▼研究論文と専門分野(科学研究費助成事業データベース)

※1 体内の薬物送達と放出を制御し、コントロールする薬剤システム。病気の局所のみに薬物を送達し、効果を高め、作用する。副作用の軽減、医療費の削減につながる。
※2 高分子薬剤が選択的にがんにとどまりやすい現象を発見し、「EPR効果」と命名・提唱。がんに薬剤をピンポイントで送れる。
※3 アメリカの調査会社トムソン・ロイターが、世界最高水準の学術文献データベースを用いて、学術論文の引用数などからノーベル賞クラスと目される研究者を選出し、卓越した研究業績をたたえる目的で物理学、化学、医学、生物学などの分野で引用栄誉賞として顕彰している。

ファイトケミカルをとることががん予防の最善策

私は長年、副作用のない抗がん剤を目指して研究・開発を続けてきました。がんと向き合うほど、がんの手強さを痛感します。だからこそ、私は「そもそもがんにならないようにする」予防こそが重要だと考えます。

そして、私が長年の研究から得た結論は、「がんの予防には野菜スープが一番」ということです。がんの発症には、活性酸素が深くかかわっています。

活性酸素が体内で過剰に発生すると、遺伝子を傷つけ、正常細胞が突然変異を起こしてがん細胞になります。活性酸素をうまく消去することが、がん予防に直結するのです。

私たちの体には、活性酸素を消去する物質を作る働きが備わっています。ところが年齢とともにこの働きは低下し、活性酸素を処理しきれなくなります。

そこで、役立つのが野菜スープです。野菜には活性酸素を消去するさまざまな抗酸化物質が含まれています。

代表がファイトケミカル(植物が紫外線や害虫などから身を守るために作り出す物質の総称。植物の色素や香り、苦味などを構成する成分)です。

トマトのリコピン、ホウレンソウのルテイン、ニンジンやカボチャのカロテノイドなど、ファイトケミカルは、身近な野菜に豊富に含まれています。

ファイトケミカルのがん予防に関する研究は欧米を中心に進み、発がん物質の解毒、がん細胞の成長・増殖抑制、がん細胞への攻撃力強化などの働きが認められています。野菜を十分に食べ、ファイトケミカルをとることががん予防の最善策といえましょう。

野菜は生よりもスープのほうが抗酸化力が強い

しかし、野菜を生でそのまま食べた場合、ファイトケミカルはわずかしか吸収できません。

ファイトケミカルの多くは、野菜の細胞の中にあります。ファイトケミカルを取り出すには、細胞壁のセルロースを壊さなくてなりませんが、野菜を嚙んだり、包丁で刻んだりした程度では大半の細胞壁は壊れません。

また、人間の体内では、セルロースを消化できないので、細胞の中の有効成分を吸収できないのです。実際、生野菜を食べた後の便を観察すると、野菜の細胞が未消化のまま、便に排泄されているのが確認できます。

細胞壁を壊すのにいちばん簡単な方法が、野菜を加熱し、スープにすることです。野菜を10分も煮れば、細胞が破裂して、細胞内の有効成分は8割方スープに溶け出すからです。

野菜スープには、ビタミン類、ミネラル類など、ファイトケミカル以外の有効成分も丸ごと溶け出しています。野菜スープをとることで、生野菜のサラダとは比較にならない、強力な抗酸化パワーを得られます。

私たちの実験でも、野菜の活性酸素を消去する働きは、生野菜をすりつぶしたものより、野菜を5分間煮出したゆで汁のほうが10倍~100倍強いことが明らかになっています(下のグラフ参照)。

《ゆで汁(スープ)のほうが抗酸化力は強い》

画像: ※野菜の生の冷水抽出成分と、5分煮沸した後の熱水抽出成分で、脂質ラジカルに対する抗酸化力を調べた。 ※数字が高いほど活性が強い。ほとんどの野菜は煮沸後にスープの抗酸化力の値が上昇する。

※野菜の生の冷水抽出成分と、5分煮沸した後の熱水抽出成分で、脂質ラジカルに対する抗酸化力を調べた。
※数字が高いほど活性が強い。ほとんどの野菜は煮沸後にスープの抗酸化力の値が上昇する。

よく、野菜は生でないと、ビタミンCが壊れてしまうのではないかと、心配するかたがいます。確かに、ビタミンC単体では加熱に弱く、10分も煮沸すると、90%以上が分解してしまいます。

しかし、野菜に含まれた状態でのビタミンCは、種々の抗酸化成分の働きで安定化し、壊れにくくなっており、大半が残っているので心配無用です。ただ、成分はほとんどスープに溶け出しているので、スープを飲むようにしてください。

生活習慣病の元凶となる慢性炎症も抑える

野菜スープの強力な抗酸化力がもたらす恩恵は、がん予防だけに留まりません。鼻炎や関節リウマチ、胃炎などなんらかの慢性炎症を抱える人にもぜひお勧めします。

発熱や腫れなどが一時的に起こる急性炎症は、体の防御反応(免疫)の一部です。ウイルスや細菌などの外敵が体内に入ると、免疫を担う白血球から活性酸素が放出されます。

活性酸素で外敵を攻撃し、駆逐するためですが、活性酸素は両刃の剣であり、その周囲の組織にも犠牲が出て、炎症が起こるのです。

画像: 前田先生はポタージュにして毎朝飲んでいる

前田先生はポタージュにして毎朝飲んでいる

一方、慢性炎症は、免疫の制御が壊れ、ウイルスや細菌など排除すべき外敵がいなくなった後も活性酸素の放出が止まらなくなり、組織が傷ついて軽度の炎症がダラダラと続いている状態です。

最近の研究で、体内のあちこちで生じた慢性炎症とそれに伴う活性酸素が、血管や臓器をジワジワと傷め、がんをはじめ、糖尿病などの生活習慣病や腎不全、認知症などのリスクを高めていることが明らかになってきています。

活性酸素を抑える野菜スープは、健やかに生きるために必須な、万病の予防食といってもよいでしょう。低栄養に陥りがちな高齢者や病気のかたは、肉や魚、牛乳などたんぱく質を加えた野菜スープもお勧めです。

画像: 【野菜スープの効果】抗がん剤研究の権威・前田浩先生がすすめるファイトケミカルスープとは?
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