私自身も幼少の頃からひどい花粉症に悩まされてきました。それが「オーソモレキュラー療法」という栄養療法を実践し始めた頃から症状は改善、今はすっかりよくなって薬も不要です。花粉症になる大きな原因の一つに、ビタミンD不足があると私は確信しています。ぜひ皆さんも、積極的にビタミンDを取り入れてください。【解説】溝口徹(新宿溝口クリニック院長)
解説者のプロフィール
溝口徹(みぞぐち・とおる)
新宿溝口クリニック院長。1964年、神奈川県生まれ。福島県立医科大学卒業。横浜市立大学附属病院、国立循環器病センターを経て、96年に辻堂クリニックを開院。2003年、日本初の栄養療法専門クリニックである新宿溝口クリニックを開設。オーソモレキュラー療法の第一人者として、栄養学的アプローチで精神疾患や内科系疾患の治療に当たる。患者や医師向けの講演会、アスリートのための栄養指導も行う。著書に、『疲労も肥満も「隠れ低血糖」が原因だった! 』(マキノ出版)、『花粉症は1週間で治る!』(さくら舎)、『「うつ」は食べ物が原因だった!』(青春新書インテリジェンス)など多数。
蛇口から出る水のような鼻水が止まった
私のクリニックを訪れる患者さんは、今でこそ花粉症の治療が目的の人も増えましたが、本来はアトピー性皮膚炎をはじめ、アレルギー体質やうつ病などの栄養療法で来られる人がほとんどでした。
そうした患者さんは花粉症にかかっていることが多く、「栄養療法を始めたら花粉症もよくなった」という事例が相次いだため、クチコミで花粉症の患者さんが増えたのです。
実は、私自身も幼少の頃からひどい花粉症に悩まされてきました。
鼻水が水道の蛇口さながらの勢いで出てくるため、毎日、登校前に耳鼻科で鼻水を抑えるスプレーをしてもらい、さらに眼科で目薬をもらうという日々を送っていたのです。
大人になっても花粉症は治らないままでしたが、「オーソモレキュラー療法」という栄養療法を実践し始めた頃から症状は改善、今はすっかりよくなって薬も不要です。
「オーソモレキュラー療法」のオーソは整える、モレキュラーとは分子という意味で、わかりやすく言えば「体を構成する分子(栄養素)を最適な状態に整える」というものです。
具体的には、ビタミン、ミネラル、たんぱく質など、体を構成する栄養素を、体内で最適な濃度に保つための体づくりをしていきます。いわゆる体質改善です。
体質改善というと、「○○は食べるな!」のような食事制限をイメージされるかたもいらっしゃると思いますが、「オーソモレキュラー療法」はむしろ、「○○を積極的に食べましょう」というほうが多いのです。
現代人は、健康な体を維持するための栄養素が、圧倒的に不足しています。それらを積極的に補い、体が必要な物質を作れるようにすることが重要だからです。
「オーソモレキュラー療法」で病気知らずの体づくりができれば、花粉症をはじめ、さまざまな症状を改善することが可能になり、薬に頼らない生活が送れるようになります。
とても壮大で時間のかかる治療のように聞こえるかもしれませんが、実は、早い人なら1週間で効果が表れるのです。
ビタミンDは免疫の過剰反応を抑える
花粉症になる大きな原因の一つに、ビタミンD不足があると私は確信しています。
ビタミンDは、脳や心臓、腸、血管、筋肉など、全身のいたるところに直接働きかける栄養素であることが研究でわかっています。
特に、免疫(病気に抵抗する働き)に関しては重要な役割を担っています。
花粉症をはじめとするアレルギー症状は、免疫の過剰反応が原因で起こるのですが、ビタミンDにはそれを抑える働きがあります。実際、花粉症の患者さんにビタミンDを取ってもらうと、劇的に改善することが多いのです。
ところが、日本人はビタミンDの摂取量が非常に少ないのです。
かつての日本人は、1日のビタミンD摂取量の93%を魚から取っていました。しかし、食の欧米化などにより、魚類の消費量が激減、それに伴いビタミンDの摂取量も減ってしまったのです。
また、ビタミンDは、食材からだけでなく、紫外線を浴びることでも体内で合成されます。しかし現代人は極度に紫外線を避けるため、ビタミンD不足に拍車がかかっているというわけです。
骨粗鬆症やガンを予防する作用もある
花粉症などのアレルギー症状を抑えるには、意識的にビタミンDを摂取しましょう。
ビタミンDは、魚の内臓に多く含まれます。シラスやシシャモなど、丸ごと食べられる魚がお勧めです。たくさん食べても、ビタミンDの過剰摂取になるほどは食べられませんので安心してください。
シラスを納豆やサラダ、ご飯などにかけると、飽きずに食べられると思います。ただし、同じ魚ばかりを食べ続けると、アレルギーが起きる可能性があります。アレルギー体質の人は特に、週2回は抜くようにしてください。
効果を感じにくい場合は、女性なら鉄分、男性なら亜鉛を取るとよいでしょう。女性に不足がちな鉄分は腸や鼻、目などの粘膜を丈夫にします。男性が不足しやすい亜鉛にも、粘膜の働きを強化する作用と、免疫力を高める働きがあります。
ビタミンDを食事で摂取しにくい場合、サプリメントを活用するのも手でしょう。
ポイントは、天然に近ものを選ぶことです。成分表記を見て、「25(OH)ビタミンD3」と書いてあるか、含有量の単位がIUとなっている場合には1日2000IUを目安に摂取します。
花粉症の時期だけ、ビタミンDを摂取してもよいのですが、ビタミンDにはさまざまな働きがあります。継続して取ることにより、私自身カゼを引かなくなりましたし、骨粗鬆症やガンを予防する作用もあると考えられています。
ぜひ皆さんも、積極的にビタミンDを取り入れてください。