【イライラした時に】ネガティブな感情が数十秒で消えた!ストレスを解消する「タッピング」とは

美容・ヘルスケア

近年、皮膚は神経を介さずダイレクトに脳に影響を及ぼすことがわかってきています。皮膚刺激は、ネガティブな感情を生み出す脳内の「扁桃体」に作用し、ネガティブな感情を緩和してくれます。【解説】竹内研(吉備国際大学社会科学部スポーツ社会学科学科長・教授)

解説者のプロフィール

竹内研(たけうち・けん)
吉備国際大学社会科学部スポーツ社会学科学科長・教授。一般財団法人イーモアマインドクリエーション協会マインドフルネスタッピング®アドバンスインストラクター。イーモアマインドクリエーション協会の提携組織、TKコーチングアカデミー代表として、「和の心」「和のメソッド」をふんだんに取り入れた画期的コーチング手法を提供。企業、スポーツ、教育、行政、医療などの諸分野における中心的な人材の育成のメソッドとしてタッピングを取り入れ、活動している。

ネガティブな感情が数十秒で消えた!

スポーツ社会科学部という場で研究している私は、大学で教鞭をとりながら、アスリートのコーチをするなど、人材の育成・指導を行っています。

長年の指導のなかで私が得た教訓は、「最終的な決め手はメンタル」ということです。

実は、私自身が、イライラや心配などのネガティブな感情をコントロールできずにいた過去があります。そんなとき出合ったのが、山富浩司さんが提唱している「タッピング」でした(別記事:「タッピング」のやり方参照)。

タッピングを試しにやってみると、ネガティブな感情がわずか数十秒で消えるのが実感できました。それからというもの、時間の合間にタッピングを行った私は、気持ちがどんどんらくになり、仕事の効率や人間関係までよくなっていったのです。

心だけでなく体にも変化がありました。180/110mmHg あった血圧が、タッピングを行ってこの2年間、120/80mmHgくらいで安定しています(正常値は最大血圧140mmHg未満、最小血圧90mmHg未満)。

そこで私は、選手や学生、一般のかたにもタッピングを指導したところ、メンタルの強化、成績アップ、肩・腰・ひざの痛みの緩和など、さまざまな効果を目の当たりにすることとなったのです。

関心がますます高まった私は、タッピングを理論的に検証してみることにしました。すると、皮膚科学や脳科学の面からも、効果が明確に説明できることがわかったのです。

便秘、冷え症、不眠も改善

まず、タッピングのいちばんのキーワードは、皮膚刺激です。近年、皮膚は神経を介さず、ダイレクトに脳に影響を及ぼすことがわかってきています。

皮膚刺激は、ネガティブな感情を生み出す脳内の「扁桃体」に作用し、ネガティブな感情を緩和してくれます。

ネガティブな感情が緩和されると、ポジティブな感情が表面化。ポジティブな感情は、過去の成功体験などの記憶を呼び起こします。

すると、「できなかったらどうしよう」から「できるかも」に思考が変化します。それによって、「よし、やってみよう!」と行動が変わっていくのです。ポジティブな感情は周りにも波及するので、人間関係も自然とよくなっていきます。

また、扁桃体でネガティブな感情が生まれると、自律神経(血管や内臓の働きを調整する神経)を通って副腎に伝わり、「コルチゾール」というストレスホルモンが分泌されます。

このコルチゾールを処理するために、細胞からは大量の活性酸素(体内で増えすぎると細胞を傷つけ老化の一因となる物質)が発生します。活性酸素は増えすぎると体を老化させ、シミ・シワや、あらゆる病気の原因になります。

タッピングでネガティブな感情を緩和すれば、ストレスホルモンの分泌を抑えることができ、活性酸素の発生を防ぎます。それにより、老化や、病気の予防になるわけです。

また、タッピングによる皮膚への心地よい刺激は、「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンの分泌を促進します。セロトニンはメンタル面の向上はもちろん、痛みも緩和します。

同時に、タッピングを行うと、皮膚からの振動で筋肉もゆるみます。筋肉がゆるむと、その情報が脳に伝わり、脳はさらにいろんなところをゆるめようと作用します。ホルモンの分泌と筋肉のゆるみの相乗効果により、痛みが緩和するのです。

さらに、体の緊張がゆるむと、副交感神経(心身をリラックスさせる神経)が優位になり、脳波も緊張状態のβ波からリラックス状態のα波に変わります。

その証拠に、高齢者にタッピングを行うと、みなさん決まって顔色がよくなり、「頭がホワッとしてきた」とおっしゃいます。

血流がよくなり、胃腸が動きだし便秘が改善する人も多いです。内臓機能が高まると、体温が上がり、冷えや不眠の改善につながります。タッピングで眼精疲労、首・肩・腰・ひざの痛みが緩和することも日常茶飯事です。

なお、体の組織(細胞)は常に微妙に振動しています。もちろん皮膚もそうです。ですから、タッピングを行う際はなるべく弱くて優しい刺激のほうが、皮膚振動とシンクロして、スムーズに効率よく脳に影響を及ぼすことができます。

ストレスの多い現代社会で生きるみなさんの、心と体の健康のために、日常的にタッピングを行うことをお勧めします。

《タッピングによる健康効果》
皮膚刺激によるネガティブな感情の緩和。
ポジティブな感情が優位になり、ネガティブな感情から発生する活性酸素を防ぎ、老化や病気を予防。
幸せホルモンであるセロトニンが分泌され、メンタルの向上や痛みの緩和になる。
皮膚からの振動で筋肉がゆるみ、全身の筋肉をゆるめるように脳が作用して、痛みが緩和する。
副交感神経が優位になることで血流がよくなり、胃腸などの内臓機能が高まる。

この記事は『安心』2019年4月号に掲載されています。

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