私は小さい頃から体が弱く、絶えず健康上のトラブルに悩まされていました。今回ご紹介する「こうじ納豆」をはじめ、こうじや納豆、甘酒などの発酵食品を、食事に多くとり入れたおかげで、私は、長年の不調から解放されました。私はこれを「発酵食の魔法」と呼んでいます。私にとって、本当に魔法のような出来事だったからです。【解説】北村愛(発酵食スペシャリスト・糀と野菜のお料理「花」オーナーシェフ)
解説者のプロフィール
北村愛(きたむら・あい)
発酵食スペシャリスト、糀と野菜のお料理「花」オーナーシェフ。2006年に野菜を主体とした料理店を奈良でオープン。2010年、基礎調味料をほぼすべて発酵食に置き換えて料理する現在の店に移転し、料理教室も同時に運営。現在はベターホーム協会梅田校・難波校・神戸校・渋谷校での発酵食クラス講師、発酵食と健康についての講演などでも活動中。著書に『発酵食がくれた魔法の翼』(夢叶舎)がある。http://www.hana-nara.com/
まるで魔法のような発酵食の力
「はっきりした病気はないのに、どうも調子が悪い。力が出ない」「つい甘い物を食べすぎる」「いつもだるい」「体温が低い」読者の皆さんで、こういうことで悩んでいるかたはいらっしゃらないでしょうか。
少し前までの私は、これが全部当てはまっていました。ところが、ある物との出合いをきっかけに、こうした不調が一掃され、自分でも信じられないくらい元気になりました。
しかも、体重は自然に8kg減り、体温が上がって免疫力(病気に対する抵抗力)が高まり、といいことずくめです。
そのある物とは、「発酵食」。
今回ご紹介する「こうじ納豆」をはじめ、こうじや納豆、甘酒などの発酵食品を、食事に多くとり入れたおかげで、私は、長年の不調から解放されました。
そして現在、奈良県奈良市で発酵食のレストランを経営するとともに、料理教室で、発酵食レシピなどを生徒さんたちに教えています。私が今の道に進むことができたのも、発酵食に出合ったおかげです。
私はこれを「発酵食の魔法」と呼んでいます。私にとって、本当に魔法のような出来事だったからです。その魔法を、必要なかたには、「どうぞご自分でかけてみてください」と、声を大にしてお伝えしたいのです。
私がその魔法の恩恵を受けるまでのいきさつを、まずは簡単にお話ししましょう。
私は小さい頃から体が弱く、絶えず健康上のトラブルに悩まされていました。性格は活発で好奇心も旺盛ですが、体が気持ちについていけないのです。
小学生時代に腎臓病で長期入院、10代半ばには乳児期からあったアトピー性皮膚炎が悪化、20代前半で摂食障害……と、病気続きでした。
摂食障害は、主に過食と嘔吐で、一度極端にやせた後、過食して一気に体重が増えました。食欲のコントロールができずに振り回され、不安がつのって、外に買い物にも行けない。そんな自分を責め、落ち込む苦しい日々を過ごしたのです。
なんとかして、自分の心身を根底から作り替えたい。そのために、体を作る「食」を見直すことにし、いろいろと勉強を始めました。その中で、食養生の考え方を知り、玄米菜食を始めてみると、体がらくになってきたのです。
もともと料理が好きだった私は、すっかり夢中になり、玄米菜食を出すお店を立ち上げました。ところが、無理がたたって、やはり体が追いつかなくなり、店をたたむことに。
救いだったのが、そのころ旅行に行った大分県で、塩こうじと出合ったことでした。塩こうじがブームになる前、まさにその仕掛け人の一人だった、糀屋本店の女将、浅利妙峰さんにお会いし、こうじや発酵食のすばらしさを学んだのです。
以後、発酵食の勉強をしながら、塩こうじなどの発酵調味料や、動物性のたんぱく質も食事にとり入れるようにしたところ、魔法のように体が変わっていきました。心身が安定して、体の底からエネルギーが湧いてくるようでした。
私の体に起こった具体的な変化を挙げてみましょう。
●元気いっぱいに動ける
以前は、何かをしようとすると、すぐ疲れて挫折していました。今では、パワフルかつ粘り強く動けます。疲れることもありますが、やりたいことがやり通せる体になりました。
●体温が上がって免疫力アップ
昔からずっと35℃台だった体温が、しだいに高くなって、36.8℃になりました。おかげで免疫力が高まったらしく、カゼをひきにくくなり、ひいても早く回復します。
●低血圧と貧血が治った
以前は、最大血圧が80mmHgくらいの低血圧で、貧血もありました。今は最大血圧が100〜110mmHg、最小血圧が80〜90mmHg程度で、貧血もすっかりよくなりました(血圧の正常値は、最大血圧140mmHg未満、最小血圧90mmHg未満)。
●コレステロールの数値が改善
コレステロール値が正常範囲内ではあるものの、高めでした。それが、発酵食を食べ始めると下がってきて、主治医の先生からは「とてもいいラインだね」と言われています。
●低血糖発作と、甘い物のドカ食いが起こらなくなった
かつての摂食障害の影響もあって、低血糖に陥りやすく、糖が切れると寒気とめまいがしていました。そんなときは、体が糖を欲して、甘い物をドカ食いしてしまうのです。
しかし、発酵食の常食を始めて、それらの症状から解放されました。
●自然に体重が8kg減った
発酵食を始めたとき、私の体重は54kg(身長160cm)でした。太ってはいませんが、自分としては中くらいという感覚でした。
それが、発酵食を続ける間に、自然にじわじわ減って、気がついたら7年で8kgやせていました。主治医の先生からは、「筋肉を減らさずに上手にやせたね」と言われました。
私の教室の生徒さんにも、60代の女性で、半年間に体重が5kg減り、重点的におなか周りがやせた人がいます。また、肥満していた40代の男性で、10kgやせた人もいます。
無理に食事を減らさなくても、発酵食のように本当に体にいい物をとっていると、自然にやせるのだと実感しています。
私はその後、少し体重を戻して、今は47kgです。これがベスト体重だと感じています。発酵食を活用すると、こういう体重コントロールも自由自在です。
●肌がきれいになった
もともとアトピーで、大人になってからも、体のどこかに常にひっかき傷があった私ですが、発酵食のおかげでそれがなくなり、「肌がきれいになったね」と言われるようになりました。
40代の今、ようやく自分の肌が好きになれました。3歳下の妹からは、「お姉ちゃんは、年々若く元気になっていって、イキイキしていく」と言われています。
●メンタルが強くなった
以前は、体の弱さゆえに、気持ちがぶれたり、過敏になったりして、とても不安定でした。発酵食を常食するようになってからは、気持ちが安定して、ストレスやプレッシャーもスッと回避できる底力がつきました。
腸を元気にする成分がたっぷり
私が、発酵食の恩恵と感じているのは、主に以上のような効果です。すべてが発酵食だけのおかげとはいえないかもしれませんが、この変化をもたらしてくれた大きな柱は、発酵食だと確信しています。
私だけでなく、料理教室の生徒さんからも、同じような報告がよくあります。また、「お通じがよくなった」「花粉症が軽減した」「筋肉の疲労回復が早い」などの声も聞かれます。
発酵食の最大の魅力は「生きていること」だと思います。こうじ菌や納豆菌など、生きている菌たちが栄養素を分解したり、新しい有効成分を作ってくれたりし、食べ物を消化しやすく、栄養豊富にしてくれます。
さらに、その菌たちが腸に入ると、腸内細菌の善玉菌を元気にしてくれます。腸内の善玉菌が優勢だと、全身の代謝がよくなり、さまざまな健康効果が得られることが知られています。
私や生徒さんたちが実感している体の変化も、生きた菌がもたらすこれらの効果から生まれたのでしょう。
特に最近では、腸内細菌と、ダイエットや肥満との関係も知られるようになりました。善玉菌の中には、おなか周りの脂肪の燃焼を促し、太りにくくやせやすくする菌があります。逆に、悪玉菌の中には、脂肪をためて太らせる菌があるのです。
また、腸の善玉菌が多ければ、そのエサとなる食物繊維の豊富な野菜や豆類などを欲する体質になりやすく、悪玉菌が多いと、甘い物や糖質を欲する体質になりやすいともいわれています。
私自身、ある程度健康的な食生活を送るようになってからも、1日1個の菓子パンを食べる習慣をやめられずにいました。しかし、発酵食を食べ始めてからそれが減り、ときどき楽しむ程度で十分になりました。がまんしているわけではなく、自然にそうなったのです。
発酵食で腸の善玉菌を増やして元気にしておけば、意志の力でがまんしなくても、自然に適正体重が保たれたり、食生活が健康的になったりするわけです。生きた菌を活用した、とてもらくなダイエット法・健康法です。そのことを、私自身もつくづく実感しています。
腸は、体の健康だけでなく、脳とも深く関係します。「腸は第二の脳」といわれ、腸の環境がよければ、精神的にも安定し、ストレスやプレッシャーに強くなるといわれているのです。私が発酵食を常食して、精神面でもタフになったのは、この効果によるのでしょう。
おいしくて手軽な人気No.1の発酵食
心身の健康と深くかかわる腸の環境を整えるのに、発酵食は最適です。
そこで私は、発酵食をたっぷり含む食事を「腸食」と呼び、1日の食事の半分は腸食をとるようお勧めしています。半分にとり入れるだけで、体は劇的に変わるからです。
これまで、いろいろな発酵食レシピを考案してきましたが、その中でも人気が高く、特にお勧めなのが、今回ご紹介する「こうじ納豆」です。
こうじ納豆は、納豆とこうじなどを合わせて作る常備菜で、とても簡単に作れます。こうじとともに甘酒も入れ、善玉菌のエサになる食物繊維もたっぷりなので、「最強の発酵食」といえるレシピです。
作り方は別記事:最強の「腸食」こうじ納豆の作り方参照
うま味や適度な甘味があってとてもおいしく、飽きずに食べられる味です。しかも、こうじを合わせることで、不思議と納豆のにおいが和らぎ、味もマイルドになるので、納豆が苦手でも「これならおいしく食べられる」という人が多いのです。
一度作っておけば、密閉容器に入れて冷蔵庫で2週間保存できます。普段の食事にこうじ納豆をプラスすれば、時間がなくても簡単に「腸食」になりますし、小腹がすいたときなどには、おやつ代わりにそのまま食べることもできて、ダイエットにも最適です。
私自身は、納豆が好きでも嫌いでもなかったのですが、混ぜるのが面倒なのと、添付のタレの味に満足できなかったことから、あまり食べませんでした。しかし、こうじ納豆を考案して以来、大好きになり、毎日のように食べています。
そのまま食べたり、ご飯にのせて食べたりするだけでもおいしいですが、サラダやそばなどのめん類にトッピングしたり、スープやみそ汁の出来上がりに加えたりと、幅広く使えます。サラダにのせると、味の相性がよいうえ、野菜の食物繊維もとれるので、さらに効果的です。
日々、お店のお客さまや、料理教室の生徒さんの声を聞きながら、おいしくて体によい発酵食メニューを考えている私ですが、どんな新作ができても、こうじ納豆は人気No.1です。手軽に作れるので、ぜひこのおいしさを味わってみてください。
「発酵食の魔法」を、こうじ納豆で実感していただけたら、と願っています。