【パニック障害予備軍とは】自律神経を整え不安を解消する「ストロー呼吸」のやり方

美容・ヘルスケア

些細なことで不安を感じてドキドキしたり、すぐに疲れてしまったり、ダラダラ過ごしたりすることを、性格や精神面での弱さのせいにしていませんか。これは大きな誤解です。原因は心ではなく、内臓や血管の働きを調整する自律神経にあるからです。【解説】藤本靖(環境身体学研究所代表・ボディワーカー)

解説者のプロフィール

藤本靖(ふじもと・やすし)
環境身体学研究所代表・ボディワーカー。東京大学経済学部卒業後、政府系国際金融機関で政府開発援助(ODA)の業務に関わる。東京モード学園ファッションスタイリスト学科修了。その後、東京大学大学院で身体教育学を専攻し、脳のシステムや心と体の関係について研究。米国Rolf Institute認定ロルファー™、ソマティック・エクスペリエンス認定プラクティショナー™。「神経系の自己調整力」に基づく「快適で自由な心と身体になるためのメソッド」を開発。簡単で、効果が高い疲労回復のためのワークが注目され、Google米国本社の研修プログラムでとりあげられる。心身の健康の専門家としてテレビ・雑誌など出演多数。著書に、ベストセラー『「疲れない身体」をいっきに手に入れる本』(講談社)など。

記憶力や集中力もアップする!

私は、身体感覚に意識を向けて体をケアする「ボディワーク」の指導で、日々、多くのかたと接してきました。

最近、特に気になっているのが、強い不安を抱えているかたが増えていることです。

「電車の中は、息苦しくなってつらいんです」「人と会うとドキドキして、きつくなります」「誰に対しても、話をするだけで疲れます」「大事なことをしなければならないときでも、気持ちがついていかず、けっきょく何もせずに1日を過ごしてしまいます」

こうした状態は、「パニック障害(*)予備軍」とも呼べる状態であり、若いかたから中高年まで年齢は問わず、特に女性に多く見られます。

そのまま放置していたら、家に引きこもって、うつになってしまう場合もあります。

* 精神的な原因で強い動機や呼吸困難が発作的に起こる症状

些細なことで不安を感じてドキドキしたり、すぐに疲れてしまったり、ダラダラ過ごしたりすることを、性格や精神面での弱さのせいにしていませんか。

これは大きな誤解です。原因は心ではなく、内臓や血管の働きを調整する自律神経にあるからです。ですので、不安は体から働きかけて解消できるのです。

今回ご紹介する「ストロー呼吸」は、自律神経に働きかけ、不安の解消に役立ちます。

また、続けていれば、心が安定しやすくなって、不安に陥ることも減っていきます。シンプルで簡単な方法なので、いつでもどこでも行って、不安をすぐに解消させてください。

ポイントは何も考えないこと

ストロー呼吸では、ストローをくわえて口から息を吐き、鼻から息を吸います。たったこれだけの、シンプルな方法です。

自律神経は呼吸と大いに関係しています。

ただし「ゆっくりとした、深い呼吸が自律神経を整える」「腹式呼吸を心がけよう」などと考えると、かえって体に力が入って無意識のうちに緊張してしまいます。

加えて、不安に陥っているときには、呼吸が止まっているような状態であり、これは自律神経にとって最悪のストレスになります。

そのため、とりあえず、どんなやり方でもかまわないからすぐに呼吸を再開させる必要があるのです。

ですので、ストロー呼吸では自分のペースで、いちばんやりやすい呼吸を行うことがたいせつです。

ストロー呼吸は、ストローがなくても行えます。ストローをくわえたときのように口をすぼませて息を吐き、鼻から息を吸うのです。

ただし、吐くときの感覚がつかめるまでは、ストローを使うといいでしょう。

「ストロー呼吸」のやり方

不安になったときや、なりそうな場面で、ストロー呼吸を行いましょう。気持ちが落ち着きます。ストローがないときは、ストローをくわえる要領で口をすぼめ、フーッと息を吐くといいでしょう。

※自分のペースで、自然な呼吸を心がける

イスに座り、ストローを片手で持って口にくわえる。もう片方の手は下腹に軽く当たる。そのままフーと息を吐く

ストローを口から外して鼻から吸う
(1)〜(2)を1分間繰り返す

「ストロー呼吸」を体験したかたの声(提供:nico株式会社 https://nico.team)
●ストロー呼吸後に体のこわばりが和らぎました。
●息が体のすごく深いところまで届いている感じがします。
●今までは呼吸を意識すると余計に息苦しく感じることが多かったのですが、ストロー呼吸はだいじょうぶでした。少し不安があるときにしてみたら、気づくと不安が落ち着いていました。続けてみようと思います!
●体に芯が通って、整うような感覚になりました。落ち着きます。呼吸に意識を向けると、余計なことを考えずに思考がクリアになる感じがしました。とても簡単にできるのでよいです。

東日本大震災のときにも冷静になれた

私たちはみんな、仙人のように外界からの影響を受けずに暮らせるわけではありません。つらい情報も入ってくる環境の中で生きています。

2011年の東日本大震災のときには、テレビやネットから次々と流れてくる情報を見続けて、心身のぐあいが悪くなったかたがたくさんいました。

そんなかたに、不安の解消法として、「ニュースに接するときにはストロー呼吸を行ってください」とアドバイスしました。

すると、「必要以上に不安にならずに済みました」と、冷静に受け止めることができたようです。

また、ストロー呼吸は、ビジネスマンのストレスマネージメントに役立っています。

さらに、試合前に集中力を高めるウオーミングアップとして、ストロー呼吸を行っているプロスポーツ選手もいます。やる気を出したいときにもぴったりの方法です。

不安になっているときには、何も手につかず、難しいことはできません。

そんな「できない自分」を責めたり、気合でなんとしようとしたりすると、ますますストレスをためて不安になるという負の連鎖が起こります

不安は自律神経のしくみの問題。ですから、ストロー呼吸で体からアプローチして、負の連鎖を断ち切りましょう。

この記事は『ゆほびか』2019年6月号に掲載されています。

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