ほとんどのカメラメーカーはフィルムカメラの販売を終了。新製品の登場もほぼ皆無だ。一方で、中古カメラ市場は膨大。フィルムのファンはどうしたらいいのだろうか。「フィルムカメラを多数所有しているが、現状と今後の展望は?」という読者の疑問に専門家が回答する。
あなたの疑問にズバリお答え!
フィルムカメラは今後どうなる?
読者から質問
フィルムカメラを多数所有していますが、将来、フィルムカメラはどうなるのでしょうか。現状をふまえ、今後の展望をお教えください。 (S・Nさん 大阪府 64歳)
専門家の回答
編集部:
これは、カメラライターの北村智史さんに聞きます。
専門家の回答:
「端的にいって、フィルムで撮る写真の未来は暗いと思われます。
ほとんどのカメラメーカーが、すでにフィルムカメラの販売を終了しており、新製品が登場する可能性はほぼ皆無です。
また、各社がこれまでに積み重ねてきたフィルムカメラのノウハウ(給送関連のメカの設計やフィルムの平面性を高めるのに必要な工夫など)も、開発に携わった技術者が引退していけば、受け継がれることなく失われてしまいます。
カメラ業界から見ると、すでにフィルムの写真は過去のものとなりつつあるといえますし、ほとんどのプロカメラマンはデジタルに移行しており、仕事でフィルムを使う機会はまずありません。
そのうえ、フィルムや印画紙、現像液などの薬品類の種類も少なくなりつつありますし、DPEショップも徐々に数を減らしています。フィルムで写真を撮る文化、趣味そのものの行く末が心配になるのは当然です」
編集部:
では、フィルムカメラは近い将来、なくなるのですか?
専門家の回答:
んー、実は一方で、それほど悲観しなくてもいいのかなと思える要素もいくつかあります。
一つは中古カメラ市場の存在です。なにしろ、中古カメラ市場には膨大な数のフィルムカメラがあります。中には部品のストックがなくて故障したら修理不能になるものもありますが、しっかりメンテナンスされた機械式のカメラであればこの先10年、20年と使い続けることも可能です。
仕事ではデジタルを使うプロの中にも、作品作りのための撮影にフィルムを使うことを好む人もいますし、フィルムならではの味わいに引かれて、フィルムで写真を始める若い人も少なからずいます。つまり、フィルムのファンがいなくなるような事態は、当分先のことと考えていいでしょう。
それに加えて、富士フイルムがいったん生産を終了した白黒フィルムを再発売するといった動きもありますから、フィルムや印画紙、薬品などが買えなくなる心配も、当面はなさそうです。
ただし、ユーザー数が大きく増えるとは考えにくいので、需要と供給の関係から、ランニングコストは上がるでしょう。となれば、趣味として続けるにもそれなりの経済的負担は覚悟しないといけません。そのあたりの折り合いがうまくつけられるのであれば、今後数十年程度はフィルム写真を楽しめるのではないかと思います」
編集部:
フィルムのファンも多いので、もうしばらくはフィルムカメラが存続するということですね。ありがとうございました!
イラスト/はやし・ひろ