洗濯洗剤は、粉末か液体タイプが一般的です。最近注目を集めているのが「ジェルボール型」タイプ。計量が不要で、1粒入れてスタートボタンを押せばいいという手軽さで大人気。一方、最新の洗濯機はというと「液体洗剤の自動投入機能」を搭載するものが出てきました。その流れでジェルボール型洗剤は不要になるのでしょうか?ジェルボール洗剤の未来を予測してみました。
第3の洗剤!?「ジェルボール洗剤」とは何か
1粒ポンと入れるだけの手軽さが特徴
衣料用洗剤には「粉末」「液体」があります。「粉末」全盛期には、よく洗濯機のパルセーターのところに溶けきれない洗剤が溜まっていました。多く入れるとそれだけ効果があるだろうというのは、人の心情として分かりますが、洗濯の場合は不都合です。洗濯は、汚れを衣類から水へ移す行為ですので、洗剤成分が多いと、かえって汚れが水に移動しにくくなったりするからです。このためチマチマ計り入れるのですが、これも面倒。
粉末や液体では避けられなかったわずらわしさからの解消できないかと開発されたのが、ジェルボール型洗剤。1粒入れると、ある量の洗濯物(重さ:2〜6kg、水量:30〜65L)は、それでOKの優れもの。今回は、ジェルボール型洗剤のお話しです。
ジェルボール型洗剤ができた理由は、冒頭にも書いた通りです。
洗剤の計量、つめかえ、こぼすおそれといった煩わしいお洗濯のステップを簡素化するため。ジェルボールの場合は、ジェルボールを1粒ポンと入れるだけで終わりですから、とても楽。その上、あとどの位残っている(何度洗濯できるのか?)のかがはっきり分かります。悩むこともありません。
「高級」洗濯機のトレンドが、液体洗剤の自動投入です。が、これはあくまでも「高級」。なかなか、全洗濯機のユーザーが恩恵を受けることにはなりません。その点、ジェルボール型洗剤なら、洗濯機を問いません。全ユーザーがそのメリットを享受できます。
ジェルボール型洗剤の日本導入までの経緯
導入されたのは、海外が先です。日本に導入された2014年の時点で、イギリスでは(2001年導入)、洗剤市場の約20%を占め、アメリカ(2012年導入)では発売からわずか1年で約8%を占めるカテゴリーに成長するなどの実績がありました。
またP&Gは日本市場導入にあたり、市場調査を行ったところ、「洗濯」は主婦にとって負担の大きな家事のひとつで、半数以上の主婦がお洗濯をより短い時間で効率的にしたいと考えていることがわかりました。要するに、日本も、海外と同じニーズを持っていたわけです。
こうして「便利」「実績」「可能性」があるジェルボール型洗剤は、日本に導入されたのです。
ジェルボール型洗剤の技術ポイント
ジェルボール型洗剤は、独自の素材フィルムに洗濯一回分のジェル状洗剤が密封された構造をとります。
包まれた洗剤は、3層立体構造になっています。使用時にはフィルムが溶け、それぞれの有効成分が洗濯の直前に混ざりあい1つの液体洗剤となり、効果を最大限に発揮できる。ここもジェルボール型の大きな魅力です。
第一印象は「香り」がしっかり残る
筆者が実際に使ってみた!
私が、アリエール パワージェルボール3Dを、最初に使用した時の印象です。アクア社の洗濯機AQW-LV80G「標準コース」、日本のタテ型洗濯機の標準コースでの使用です。
洗い上がりの洗濯物を拡げてすぐ気付くのは「香り」です。非常に鮮明なシトラスグリーンの香りがします。人によっては、ちょっとキツいと思う人もいるかも知れないと思える位です。香り成分は効果が薄れ易いのですが、これは「しっかり」という感じで香ります。香料が多いのですかと、メーカーにきいてみたのですが、違っていて「3層立体構造」によるものだそうです。
汚れのおち方も、通常の場合より、おちている感じがするのですが、こちらは正確な比較が厳しいので、あくまでも参考意見として聞いてください。
洗剤の量は「取説」で確認できる?
洗濯機のメーカーは、新型を投入するとき、いろいろな洗剤のテストを行います。その結果、各モデルの取扱説明書には、「○○という洗剤は、水:△△Lの時、××ml 入れて下さい」と書かれています。その洗濯機に搭載されているコースでの結果をフィードバックしていますので、かなり詳しい情報です。取説記載は、ある意味メーカー保証事項でもありますので、これが洗濯機毎のお勧めの洗剤量となります。
しかし、ジェルボールの情報は掲載されていません。こんな場合は、洗剤メーカーの指示に従うのが一番となります。
海外と日本で成分に違いはある?
「洗濯環境」が異なる
海外で先に販売されたジェルボール型洗剤。よく言う、日本は軟水、海外は硬水。日本は洗剤にやさしい水質を言われますが、洗剤成分に違いはあるのでしょうか?
P&Gに問い合わせたところ、水質差よりも、洗濯条件の差が大きいとので変えていますこと。
先にレポートしましたが、日本の洗濯機の標準コースは、日本で使いやすいコースであり、汚れをトコトン落とすのが基本とするというのと、少しニュアンスが異なります。
具体的に比較しますと、日本は水道水。温度的には5〜20℃。海外はお湯洗いで、基本40℃。洗濯時間は、日本は約40分ですが、海外は60分。
水質は日本が有利なのですが、水温、時間とも、汚れおとしには不利です。
そのため日本で発売されているジェルボール型洗剤は、日本の洗濯環境、ニーズに合わせて処方された製品が出荷されています。
まとめ
今後の洗剤シェアを予測!
今のメジャーは液体洗剤。そしてジェルボールが加わったわけですが、今後の洗剤のシェアを予想してみましょう。
家電メーカーは、前述の通り、洗濯機のAI化に余念がなく、液体洗剤の自動測定機能を入れようとしています。冒頭掲げられた「煩わしさがイヤ」というユーザーニーズに対する家電メーカーの解答です。
では、今後、ジェルボール型洗剤は不要とされるのでしょうか?
私は、そうではないと考えます。キーワードは「香り」です。
先日ある調査会社のデーターで、日本人、特に若い人は「淡い香り」が大好きというデーターが発表されました。
面白かったのは、一番人気は、香水とかではなく、「石けん、洗剤(柔軟剤、漂白剤を含む)の香り」だそうです。このため、どんな洗濯でも「柔軟剤」を入れる人もいるとか。同様な理由で「漂白剤」を入れる人もいます。柔軟剤は兎も角、衣類を大切にする、衣類ケアの洗濯としては常に漂白剤を使うのは、余り感心できません。が、気持ちは分かります。
ヨーロッパでも、洗剤とは別に「香剤」を使う人があります。独ミーレ社など、洗濯機と共に洗剤も販売しているメーカーは、香剤も販売しています。乾燥時に使用しますが、洗濯物が、日本でいう香を焚きしめたように、自分の好きな香りを発するわけです。
ジェルボール型洗剤は、香りをそこないませんので、このニーズに最も適した洗剤といえます。実際、前述した通り、香りが鮮烈です。
今後の洗剤は「洗浄力」だけでなく、「香り」が大きなポイントになり、ジェルボール型洗剤は、その解答の1つになると考えられます。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーを繋ぐ商品企画コンサルティング「ポップアップ・プランニング・オフィス」代表。米・食味鑑定士の資格を所有。大手メーカーでオーディオ・ビデオ関連の開発に携わる。趣味は東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。