熱中症の予防、さらには、頭痛や肩こり、便秘、冷え性、虚弱体質に悩んでいる人にも1日1.5~2Lの水分補給は非常に効果的です。効果的な水の飲み方は、ちびりちびり、こまめにゆっくり飲む「チビチビ飲み」です。【解説】藤田紘一郎(東京医科歯科大学名誉教授・医学博士)
解説者のプロフィール
藤田紘一郎(ふじた・こういちろう)
東京医科歯科大学名誉教授・医学博士。1939年、中国・旧満州ハルピン生まれ。東京医科歯科大学医学部を卒業後、長崎大学医学部教授、東京医科歯科大学医学部教授などを歴任。専門は寄生虫学、熱帯医学、感染免疫学。『55歳のハゲた私が76歳でフサフサになった理由』(青萠堂)、『ウンココロ』(実業之日本社)、『笑うカイチュウ』(講談社) など、著書多数。
毎日2.5Lもの水が体から失われている
あなたは、1日にどれくらいの水分が体から排出されると思いますか。
人間の体からは、呼吸に含まれる水分で0.5L、汗など皮膚からの蒸発で0.5L、尿や大便で1.5Lの水が1日に排出されます。つまり、1日に合計2.5Lもの水が失われているのです。
ですので、損失分と同じ2.5Lの水分を、毎日補給する必要があります。
しかし、単純に2.5Lの水を飲めばいいというわけではありません。私たちは、自分でも気づかないうちに水分補給しているからです。
1日分の食べ物には、1Lの水分が含まれています。また、体内での化学反応で、1日0.5Lの水が生じています。これで、合計1.5L。
つまり飲み水は最低でも1日1L必要ですが、+αで合計1.5~2Lほど水分補給をすることが大切です。特に、暑く汗をかきやすい夏はなおさらです。
この1.5~2Lの水分補給をおろそかにしてはいけません。酸素や栄養を運んだり、体温を調整したりと、水は体中を駆け巡り、瞬時も止まることなく働いているのです。
体内の水分が不足することは、体の中の多くの働きを弱くすることと同じです。さまざまな病気や不調を招く原因となるのです。特に夏は、熱中症が心配になります。
本来ならば、体温が高くなると体は汗をかくことで体温を下げようとします。しかし、脱水症になると、発汗にブレーキがかかります。そのため体温が下げられなくなって、熱中症になるのです。
じゅうぶんな水分補給は、熱中症の予防に有効です。さらには、頭痛や肩こり、便秘、冷え性、虚弱体質に悩んでいる人にも1日1.5~2Lの水分補給は非常に効果的です。
水分補給は水の飲み方とタイミングが大事
1.5~2Lの水分補給をするうえでは、水の飲み方も重要です。
体に効果的な水の飲み方は、ちびりちびり、こまめにゆっくり飲む「チビチビ飲み」です。体が水分不足を感じることなく、新陳代謝が活発になります。
1日に10回コップ1杯(約180ml)ずつ水を飲み、のどの渇きが強いときには2杯飲みましょう。そうすると、1日1.5~2Lはなんなく飲めます。
チビチビ飲みでは、清涼飲料水は利用しないようにしましょう。膨大な糖分を含み、糖尿病になる恐れがあるからです。
また、水を飲むタイミングも重要です。別記事で紹介したように、夜寝る前と、朝起きてからはコップ1杯ずつ水を飲みましょう。
別記事:寝る前に飲む1杯の「宝水」→
空腹時(食前)は、水分の吸収率が高いのでいいタイミングです。お風呂の後も、大量に体内の水分が失われるので、ぜひコップ1杯の水を飲んでください。
一方、食事中の水分補給はほどほどにしましょう。水によって胃液が薄まり、消化の妨げになるからです。
血管が柔らかくなり高脂質症やアトピーが改善!
同じような飲み方で、スポーツ界で注目された水分補給方法があります。それが「ウォーターローディング法」です。
試合前の一定期間、毎日1.5L程度の水をこまめに飲んで、体内をしっかりと潤しておきます。すると、試合中に大量の汗で体の水分が失われても、運動能力の低下を防ぐことができるのです。
注目すべきなのは、血管を柔軟にすること。そして、高脂質症(コレステロールや中性脂肪値が高い人)やアトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の改善にも期待できることです。
スポーツ選手に限らず、一般の人にとってもすぐれた健康法といえるでしょう。
ウォーターローディング法では、1回につき250mlずつの中硬水を、1日6回飲みます(「中硬水」の詳しい説明は、別記事をご覧ください)。
高脂質症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー体質の人は、中硬水でこまめに水分補給をすると、改善が見込めるでしょう。
別記事:「健康になる水の選び方」→
【体に効果的な「チビチビ飲み」】
《1日に飲む回数》
●10回程度
《1回で飲む水の量》
●コップ1杯(約180ml)
《飲むタイミング》
●起床後
●食前
●入浴後
●寝る前
●のどが乾いたとき(のどの乾きが強いときは2杯)
《改善が期待できる症状》
●頭痛 ●肩こり
●便秘 ●冷え性
●虚弱体質
●高脂質症(ウォーターローディング法)
●アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状(ウォーターローディング法)