噛みグセが生じると、物を噛む際に使われる筋肉の使い方にも偏りが生じます。それは全身の筋肉のバランスをくずしてしまうことになり、特に首の筋肉には過緊張が生じやすく、それが、首や肩のコリだけではなく、めまいや頭痛などの不定愁訴を引き起こす原因となります。【解説】川村秋夫(川村歯科医院院長・日本顎関節症リハビリ研究室主宰)
解説者のプロフィール
川村秋夫(かわむら・あきお)
川村歯科医院院長。日本顎関節症リハビリ研究室主宰。噛み合わせのバランスを取ることで、さまざまな体の不調を改善させている。
噛み合わせが悪いとあごや首が緊張する!
めまいに悩まされ、耳鼻咽喉科を受診したところ、「特に異常はありません」「原因は不明です」などといわれた経験はありませんか。
そうした皆さんは、めまい以外に、首や肩のコリ、頭痛などの症状があるケースが非常に多いのです。そしてそれは、めまいの原因で、かつ「歯の噛み合わせ」に関連する首こりなのです。
歯の噛み合わせが悪くなる理由はさまざまです。長年の間、その人なりの噛みグセが生じるものですが、その結果、噛み方や使う歯がどうしても偏ります。右と左を比べると、よく噛んでいる側と噛んでいない側が生じるのです。
噛みグセが生じると、物を噛む際に使われる咬筋や側頭筋などの筋肉の使い方にも偏りが生じます。しかも、それは口周辺の筋肉の問題だけにとどまりません。首や肩の筋肉、全身の筋肉のバランスをくずしてしまうことになるのです。
特に首の筋肉には過緊張が生じやすく、それが、首や肩のコリだけではなく、めまいや頭痛などの不定愁訴を引き起こす原因となります。
では、めまいなどの不定愁訴を改善するにはどうしたらいいでしょうか。ポイントは、噛み合わせの悪さによってこわばった、あごと首の筋肉の緊張をほぐすことです。
私は歯科医師として、この噛み合わせの悪さがもたらす弊害について、長年にわたり研究を続けてきました。その解消方法について、いろいろな方法を考案してきたのです。
耳鼻科では治らないめまいにも効果を発揮
そこで、今回ご紹介するのが、「カチカチ体操」です(やり方は下記参照)。
キッチンペーパーを使った簡単な方法で、着実に効果をもたらします。きちんと実践すれば、噛み合わせの悪さから生じた筋肉の過緊張をほぐして、噛み合わせの悪さを矯正してくれます。その結果、耳鼻科では治らなかっためまいが、解消することでしょう。
上下の歯をカチカチと噛む方法を「タッピング」といいます。このタッピングの刺激によってこわばった筋肉の緊張がほぐれ、不自然な噛み合わせを修正する効果が期待できます。
さらに、この基本動作に加えて、首を倒したり回したりしながら緊張を解く方法もご紹介しておきます。
カチカチ体操をすることに加えて、食事の際にはなるべく左右でバランスよく噛むことを心がけてください。また、ふだんからなるべくよい姿勢を保つようにしましょう。ネコ背にならないようにしてください。さらにほおづえをつくこと、うつぶせで寝ることも避けましょう。
こうした日常生活での注意点を守りつつ、カチカチ体操を続ければ、首のコリがほぐれ、めまいを解消することができるでしょう。
「カチカチ体操」のやり方
★これらの体操は、いつ行ってもよい。できれば、朝晩1回ずつ行うようにする。
★一度に長時間行わないこと。疲れない程度でくり返し行う。
❶キッチンペーパー(できるだけ厚手の物)を重ねて折り、1~2mmの厚さにする。これを2つ作る。
❷(1)をそれぞれ左右の奥歯で噛む。
❸カチカチと軽く30回ほど噛む。
※噛む際には、しっかり噛みしめる必要はない。必ず「カチカチ」と軽く噛むことを心がける。
●首の左右倒し
❶首を左右に倒して、倒しづらい側を見つける。
❷倒しづらい側に首を倒したまま、キッチンペーパーを噛み、「カチカチ」と軽く30回ほど噛む。
●首の前後倒し
❶首を前後に倒して、倒しづらい側を見つける。
❷倒しづらい側に首を倒したまま、キッチンペーパーを噛み、「カチカチ」と軽く30回ほど噛む。
●首回し
❶首を大きく左右に回しながら、引っかかりのある位置を見つける。
❷首が引っかかる位置が見つかったら、その位置でキッチンペーパーを噛み、「カチカチ」と30回ほど軽く噛む。