「睡眠カフェ」。その字面に目をこする方もいらっしゃるかも知れません。コーヒーが眠気覚ましになることは広く知られていますので。この、あり得ないような組み合わせのサービス仕掛け人は「ネスレ」。今回、東京・大井町に「新しい仮眠室ができました」ということで、興味深々体験しに出かけました。
睡眠カフェとは?
さて、ネスカフェが運営する「睡眠カフェ」とはどのようなもので、新サービスはどのような進化なのでしょうか。同社が出しているプレスリリースは以下の通りです。
「ネスカフェ 睡眠カフェ」がさらに進化
「ネスカフェ 睡眠カフェ」を運営するネスレ日本は、より質の高い日中の昼寝(仮眠)が体験できる新コースの提供を、2019年12月4日より開始。ネスレは、日本人の睡眠不足や睡眠負債に注目し、コーヒーの飲み分けを通じて新しい睡眠スタイルを提案する体験型カフェ「ネスカフェ 睡眠カフェ」フラッグシップ店舗の常時営業を東京・大井町で開始していた。
12月4日より提供を開始する新「ナップコース」は、睡眠科学の第一人者である広島大学・林光緒教授による監修のもと、既存の「ナップコース」を進化させ、入眠前と起床後に適した映像プログラムを組み合わせたコースだ。◆新「ナップコース」内容詳細
体験の流れ
(1)昼寝前に、カフェインを含む「ネスカフェ」のコーヒー1杯を提供し、入眠に適した映像を流す。
(2)レザーリクライニングチェアに座り、昼寝をする。
(3)20分頃から起床後に適した映像が流れ、快適な寝起きが体験できる。
予約方法
公式サイトから事前予約。
睡眠カフェの新サービス「新・ナップコース」は、ネットカフェのように「一夜の宿」とすることができるのでしょうか。答えは、ノー。なんせ営業時間が、9時~18時です。一晩の宿なんてとんでもない感じです。よい眠りに、美味しいコーヒーの体験が味わえるサービスを提供してくれます。
大井町に常設
このサービス、2017年にテストトライアルされたものです。そこで好評を博し、3回トライアルを続けました。そんな中、「まちおこし大井」というグループの方がこのサービスを受け、ネスレにサポートするようになったのです。「このサービスを是非、大井で行わないか」という提案があり、それで「大井町駅」近くで常設化されたそうです。ちなみに、大井が大井町と呼ばれたのは、戦前の東京府の時代まで。以降は「品川区大井」なのですが、駅名は今も、ちゃっかり「大井町」を使っています。
しかし、大井町駅は、京浜東北線、大井町線、りんかい線が通っており、交通の要所であり、キャッツシアターなどもありますが、大井競馬場があるためか、文化の香り豊かという感じは少ないことも事実です。
しかし、睡眠という、今の日本人にとって重要な課題に対してのサービスだからでしょうか、それとも物珍しいサービスと受け止められているためでしょうか、人気は上々のようです。サラリーマンから主婦、観光客も詰めかけるサービスになっています。
新ナップコースを体験
夜の眠りの体験は、寝る前にカフェインレスのコーヒーを飲みます。ポイントは、リラックスした状態を作り出すことです。そして寝て、起きたらコーヒー。寝る時間は最大、3時間のコースです。ベッドは、予約時に「かため」「やわらかめ」を選びます。枕は行ってから「かため」「やわらかめ」をセレクトします。寝具は全部フランスベッド。
それに対し、昼の眠りの体験は、リクライニングチェアで行います。こちらはカフェインありのコーヒーを飲んで仮眠します。時間は、カフェインが体に吸収されるまでの時間。20〜30分。体の方が起きやすい状態になっているため、すっと起きられることが特長です。
今回新しく追加されたのは、この昼の眠りに対し、眠りやすい誘導ソフトを組み込んだものです。ソフトと行っても、環境系です。
この手もサービスは実際に体験しないとなんとも言えませんからね。トライさせてもらいました。
コーヒーを飲んで昼寝
まず、出てくるコーヒーは、もちろんネスカフェ。アイス、常温、ホット、どれでも注文可能です。当然、シュガー、ミルクもOK。リラックスを促すため、香りが立ちやすいホットの方がイイのかもしれないですが、一番注文されるというアイスコーヒーを出してもらいました。シュガー、ミルクはなし。
リクライニングチェアは、座面が大きく、座り心地もよい安定感抜群。コーヒーを口に含むと、流石にアイスでも香気が舞います。実際、ネスカフェは使いやすさと品質が高次元で組み合わされており、安定しています。逆に、これ以上繊細だと、そちらの方に気持ちがより、睡眠的にはよくないかも知れません。
ここでちょっと戸惑ったのは2つ。1つは、コーヒーの量。結構な量が入っています。250〜300ml近いでしょうか。聞くとカフェイン量から逆算した量なので、「できれば」と言われましたが、50ml位残してしまいました。もう1つは眼鏡置き場。これはちょっと遠い位置でした。
ではスタート、ということで、リクライニングして、毛布を掛けます。睡眠導入の映像は5分。深い森の中、木枯らしが吹いているような音の中、光がゆっくり舞うような映像が流れます。ここで気づいたのは、ピアノの音のような人の「意志」が入った「刺激的」な音が皆無ということ。「刺激」から段々離れていく感じです。5分では無理でしたが、それから数分で寝てしまいました。
そして覚醒の時。映像は、星がキラキラ光る夜空。雲一つありません。音楽はドビュッシーのピアノ曲に似ていますが、それより刺激があります。もともと、ピアノは打弦楽器であり、それはグランドピアノで楽器の集合体、オーケストラと対峙できるほど強い。それが、ゆっくりながら、意志を持った刺激で、ノックしてくる感じです。
映像の方は、スクリーンとは別に、寝ている胸辺りに光を当ててきます。明るさで、包み込んでいる感じです。こちらは4分。普段目覚ましを使っているので、「刺激=起きなきゃ」と感じるのですが、それがない分だけでもスキッと起きれた感じです。多分、カフェインも効いているのでしょうが、正確には分かりません。ただ、気持ちよく起きられたのは事実です。
寝ることは「技術」
このサービス、人によっては、「えっ」と感じる方もいらっしゃるかも知れません。エステサロンのようなゴージャス体験でもありません。どちらかというと、マッサージ室に似ています。そして確実によい睡眠であるという保証はありません。
ベッド、枕、コーヒーを販売するわけでもありません。ここで得られるのは体験です。私が得たのは、寝るというのは、一つの技術なんだと言うことです。睡眠導入時は、刺激をなくすこと、覚醒時は逆に刺激を与えるということです。簡単に目覚まし時計などを使いますが、ぃろいろ工夫した方がベターかも知れません。そんなきっかけはもらえそうです。
競馬ではなく、睡眠で、大井へ行く時が来たのかも知れません。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。