【医師解説】野菜スープで行う食生活改善方法とは?健康効果を100%引き出す調理のコツ

美容・ヘルスケア

ヒポクラテススープ(長生き野菜スープ)は、体内のミネラルバランスを整え、代謝を円滑にします。ゆっくり低い温度で加熱することによって、野菜の栄養が最大限に引き出されます。時間がとれないかたはスロークッカーを使うのもお勧めです。【解説】石黒栄紀(いしぐろクリニック院長)

解説者のプロフィール

石黒栄紀(いしぐろ・えいき)
いしぐろクリニック院長。富山県出身。金沢医科大学卒業。金沢大学附属病院、石川県立中央病院などの勤務を経て、1995年、石川県加賀市にいしぐろクリニックを開設。2015年、滞在型食事療法施設「治ゆの扉」をクリニックに併設。ゲルソン療法など、ガンの代替医療による治療を本格的に開始する。著書に『医師がすすめる長生き野菜スープ』(マキノ出版)がある。

ガンや生活習慣病に有効なゲルソン療法

別記事:「長生き野菜スープ」の作り方→

栄養豊かなヒポクラテススープ(長生き野菜スープ)は、体内のミネラルバランスを整え、解毒を進め、エネルギーや体の材料を作る代謝を円滑にします。

これにより、全身の細胞が活力を得て、自己治癒力が高まり、新旧の細胞の入れ替えや、壊れた細胞の修復がスムーズに行われます。

そのため、生活習慣病の予防に有効ですし、健康的に肥満を解消したり、肌がきれいになったりといった美容効果も期待できます。

別記事: 「長生き野菜スープ」がミネラルバランスを整える→

なお、病気予防を目的とした「健康食」として取り入れる場合は、野菜の裏ごしを省いたり、冷凍保存したりしてもかまいません。それと併せて、普段の食生活で塩分と動物性食品の摂取を控えめにすれば、じゅうぶんに効果が得られるでしょう。

一方、病気の治癒を目的にした「治療食」の場合には、ヒポクラテススープの調理や保存のしかたに注意点が加わります(詳しくは別記事の作り方を参照)。

また、ガンの治癒を目標にしているかた、生活習慣病を薬に頼らず完治させたいといったかたには、私は「ゲルソン療法」をお勧めしています。

クリニックに併設している滞在型食事療法施設「治ゆの扉」では、ゲルソン療法の実践とともに、基本的な知識をお伝えするセミナーも開催しています。

ゲルソン療法は、食材の選び方、調理法、食べ方など、さまざまなルールがあり、治療計画に基づいて多くの項目を厳密に実践することが求められます。病気の治癒を目的に実践しようと思うかたは、正確な知識を持つ専門家のセミナーを受講することをお勧めします。

一方、ゲルソン療法の食事の柱とも言えるヒポクラテススープは、どなたでも気軽に食生活に取り入れられることでしょう。まずは、食生活改善の第一歩として、取り組んでみていただければと思います。

秘訣は裏ごしと低温加熱。便利な調理器具もある

ここでは、ヒポクラテススープを皆さんの健康維持により役立てるための秘訣をご紹介します。

●裏ごしについて

ヒポクラテススープは、裏ごしをして、野菜の繊維質を取り除くのが本来の作り方です。裏ごしすることで繊維質が取り除かれ、胃腸に負担をかけることなくスープの栄養を消化・吸収できます。

特に、ガンや消化器系の病気があるかたは、胃腸が弱り、消化吸収の力が落ちています。食物繊維は健康のために必要ですが、多過ぎると吸収を妨げたり、スピードダウンさせたりするので、吸収力の低下した患者さんには害になってしまいます。

また、食物繊維には、不溶性食物繊維と水溶性食物繊維があり、水溶性食物繊維は、こした後のスープにもしっかりと含まれています。

病気の治癒を目的に飲む場合は、必ず裏ごしをしてください。ムーラン(主にフランスなどで用いられる調理器具。フードミルともいう)を使うと、裏ごしが楽になります。

一方、健康食として、スープだけを今までの食事に追加する場合や、食物繊維の摂取量が日常的に少ないかたは、裏ごしせずにそのまま召し上がっていただければと思います。

病気治療には「ムーラン」「フードミル」で裏ごしすると便利

●野菜の選び方について

ゲルソン療法では、新鮮かつ農薬や化学肥料を使用していない有機栽培の野菜を使うのが基本です。こうした野菜が手に入らない場合は、野菜をよく水洗いし、残留農薬を落としましょう。50℃のお湯で野菜を洗う「50℃洗い」も有効です。

できれば、消毒液として薬局で入手できるオキシドール(3%過酸化水素水)をスプレー容器などに入れ、泥を落とした野菜に直接スプレーした後、念入りにすすぐ方法がお勧めです。

ホタテ貝やホッキ貝の貝殻が原料の野菜洗浄剤も有効です。

●調理器具について

ヒポクラテススープは、ゆっくり低い温度で加熱することによって、野菜の栄養が最大限に引き出されます。時短をしたいからと圧力鍋を使うのはNG。高温になり過ぎて、栄養成分を壊してしまいます。

スープを作る時間がとれないかたは、火を使わずに電気で低温調理ができる調理器具(スロークッカー)を使うのもお勧めです。

なべは蓋が閉められる物で、ステンレス、耐熱ガラス、無鉛セラミック、鋳物(鉛、クロムなどの有害物を含まない)を選びましょう。テフロン加工、アルミはNGです。

「スロークッカー」を使うと、火を使わずに電気で調理ができる

●保存と再加熱について

ヒポクラテススープは、2日程度は冷蔵保存が可能です。病気予防を目的とした健康食の場合、冷凍庫で保管してもかまいません。

一方、ガンなどの患者さんが治療食として食べる場合、2日に1度スープを作るのが基本です。冷凍すると野菜の細胞内の水の体積が増え、細胞破壊が起こって栄養価が落ちるためです。

また、保存してあったスープを温め直すときは、鍋に移し替えて、弱火にかけます。電子レンジは野菜の細胞を破壊し、栄養価も変性させてしまうので、使用禁止です。

健康食として冷凍保存した場合も電子レンジでの解凍は避けてください。自然解凍、または保存袋(チャック付きポリ袋)のまま軽く湯せんして溶かしてから、鍋に移し替え、弱火で温めるようにしましょう。

塩分と動物性たんぱく質を控える食生活が効果的

そのほかの食生活を改善するポイントとして、次の二つが重要です。

一つめは、細胞のミネラルバランスを正常化するため、塩分の摂取を控えることです。

ナトリウムの必要量は1日600mgで、食塩に換算すると1.5g。厚生労働省による塩の1日の摂取目標値は、男性8g未満、女性7g未満。高血圧学会の推奨値は男女ともに6g未満です。

しかし実際には、塩分の平均的な摂取量は男性11.0g、女性9.2g(厚生労働省「国民健康・栄養調査」平成27年)と目標値や推奨値を大きく超えています。

塩や調味料をいっさい使わないヒポクラテススープをきっかけに、塩分を控える意識を持ってください。

二つめは、動物性たんぱく質の摂取量を、減らすことです。

動物性たんぱく質をとり過ぎると、代謝される過程で大量の酸が生じて体を酸性化し、肝臓や腎臓にも負担がかかります。

近年、極端な糖質制限や高たんぱく食を推奨する食事法もありますが、動物性たんぱく質を長期間にわたってとり過ぎるのは危険だと私は考えています。

別記事:「長生き野菜スープ」の作り方→

この記事は『ゆほびか』2020年1月号に掲載されています。

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