私たちは「体が疲れた」と感じますが、実は、疲労しているのは体ではなく脳、特に自律神経の中枢です。「何をやっても疲れが取れない」。その解消法として、脳から疲労をスッキリと取り去る「寝たままひざストレッチ」を、私は提唱しています。【解説】梶本修身(東京疲労・睡眠クリニック院長)

解説者のプロフィール

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梶本修身(かじもと・おさみ) 
1962年生まれ。大阪大学大学院医学研究科博士課程修了(医学博士)。大阪市立大学大学院疲労医学講座特任教授。2003年より産官学連携「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」統括責任者。研究成果を臨床に生かすため、2015年に東京疲労・睡眠クリニックを開院。著書に『疲労回復の名医が教える 誰でも簡単に疲れをスッキリとる方法』(アスコム)などがある。

疲れているのは体ではなく実は自律神経だった

日本は世界有数の「疲労大国」です。厚生労働省によると、日本人の70%以上が日頃から疲労を自覚しているという報告があります。

実際、私のクリニックにも、「何をやっても疲れが取れない**」と悩みを訴える患者さんが、毎日たくさん訪れています。

私たちは「体が疲れた」と感じますが、実は、疲労しているのは体ではなく脳、特に自律神経の中枢です

自律神経の中枢は、呼吸、心拍などの調整や緊張、集中力の制御など、体内環境を毎日24時間休むことなくコントロールしています。つまり、仕事や家事を問わず、私たちが日常の活動で生じる疲労は、すべて脳の疲労と言えるのです。

自律神経が疲労したとき、「自律神経が疲れた」という情報では、実際に仕事や家事のやり過ぎをやめられるかは不確実です。

そこで、あえて脳に「体が疲れた」と誤解させて、仕事や家事などを確実にやめさせることで、自律神経にそれ以上の負荷がかからないようにしているのです。

よって、疲労感を取るには、脳から疲労を取ることが重要です。その解消法として、脳から疲労をスッキリと取り去る「寝たままひざストレッチ」を、私は提唱しています。

睡眠が良質でないと自律神経の負担が大きい

私がリーダーを務めた「疲労定量化及び抗疲労食薬開発プロジェクト」などの研究結果より、脳、とりわけ自律神経の疲労を回復させるには質のよい睡眠が重要だとわかりました。

質のよい睡眠をとるうえで大敵となるのは、「いびき」です。いびきを熟睡の証と思っているかたは少なくありませんが、これは間違いです。

いびきは、狭くなった気道を空気が通るときの摩擦音です。いびきをかいて寝ているのは、体内に酸素がじゅうぶんに取り込めていないことを意味します。

酸素不足に陥ると、脳にじゅうぶんな酸素が行き届かなくなり、脳の疲労回復が進みません。同時に自律神経が「心拍を上げて!」「血圧を上げて!」と指令を出し続けなければならなくなります。

まるで、睡眠中に運動をしているように働かざるを得なくなるのです。

画像: 起きても疲れが取れないのは、睡眠の質や血流が悪いため。疲労感を取るには、質のよい睡眠を取り血流をよくすることがたいせつ

起きても疲れが取れないのは、睡眠の質や血流が悪いため。疲労感を取るには、質のよい睡眠を取り血流をよくすることがたいせつ

血流も疲労回復においてポイントとなります。全身に酸素と栄養を届けるのは血液です。血流が悪いと、自律神経は前述と同様に心拍数や血圧を上げる指令を出し続け、疲労が増加してしまうのです。

また、自律神経の疲弊はいびきを増悪させます。そのため、自律神経が疲弊し、いびきが悪化し、さらに自律神経の疲労が増悪するという悪循環を断ち切る必要があります。

「寝たままひざストレッチ」は、血流をよくし、自律神経の負担を軽くして脳の疲労を軽減させます。これらの効果で、脳の疲労はスッキリ取れ、疲労感や気になる不調が改善するのです。ぜひ、入眠前に寝たままひざストレッチを行ってみてください(やり方は下項参照)。

1分で疲れが抜ける
「寝たままひざストレッチ」のやり方

「寝たままひざストレッチ」は、パジャマやスウェットなどリラックスできる服装で、眠る直前に行います。そのまま眠れるようにベッドや布団の上で行いましょう

STEP 1
血管やリンパ液の詰まりを取って流れをよくし、疲労感を解消します
◎所要時間:20秒(①〜④)

画像1: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

あお向けになる。力を抜いて腕は体の横に置く

画像2: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

両ひざを立てる

画像3: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

ひざを左右に倒して両足の裏をピッタリとくっつける。そのままの姿勢で10~15秒キープ

画像4: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

ひざをゆっくりと閉じ、両ひざを立てた状態に戻す

STEP 2
寝返りの癖をつけることで、睡眠中にいびきをかきにくい姿勢を取りやすいようにします
◎所要時間:3秒(①〜④)×両側×5セット=合計30秒

画像5: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

両ひざを立てる

画像6: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

両ひざを合わせていっしょに右側に倒す。このとき上半身は上を向いたままにする

画像7: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

左腕といっしょに上半身も右側に倒す

画像8: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

ひざを立て①の状態に戻り、体の左右を替えて同様に行う

STEP 3
血管とリンパ管をまっすぐにすることで、全身をスッキリさせます
◎所要時間:10秒

画像9: 1分で疲れが抜ける 「寝たままひざストレッチ」のやり方

あお向けの状態で、ゆっくり呼吸をしながら両手と両足をまっすぐに伸ばす。
手首、ひじ、肩、首、腰、股、ひざ、足首といった関節部分も伸ばすように意識し、この姿勢を10秒キープ

自律神経は老いるが若返らせることもできる

自律神経の働きは、加齢とともに低下することがわかっています。

多くの人の場合、自律神経の機能は10代にピークを迎え、以降は徐々に衰えていきます。自律神経を構成する神経細胞は、一度傷つけられると二度と再生せず、年を追うごとにダメージが蓄積していくためです。

画像: 歳を取るにつれて自律神経も老化する! グラフの縦軸は数値が低いほど自律神経機能が低いことを表している。多くの人の場合、自律神経の機能は10代でピークを迎える。年齢を重ねるごとに、自律神経の機能は右肩下がりになる

歳を取るにつれて自律神経も老化する!
グラフの縦軸は数値が低いほど自律神経機能が低いことを表している。多くの人の場合、自律神経の機能は10代でピークを迎える。年齢を重ねるごとに、自律神経の機能は右肩下がりになる

自律神経の活動量は、10代と比べて40代で約半分、50代では約3分の1、60代では4分の1を下回ります(上のグラフ参照)。

「年齢とともに疲れやすくなった」「歳を重ねて疲れがなかなか回復しない」と感じている人は多いことでしょう。これも、自律神経の老化が関係しているのです。

しかし、自律神経は回復を図りながら若返らせることができます

睡眠不足による自律神経の老化を防ぐ寝たままひざストレッチに加え、40歳未満の健康な人であれば、「息は弾むけれど切れない」「汗がじんわりにじむ程度」、40歳以上では「会話を交わせる程度」の運動をするといいでしょう。1日20分以内のそうした運動で自律神経は鍛えられます。

ただし、仕事や家事で自律神経が酷使された日は運動を控えてください。

画像: この記事は『ゆほびか』2020年2月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『ゆほびか』2020年2月号に掲載されています。

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