最初の軽い段階で治療するのと、重症化してから治療するのとでは、予後が違ってきます。夜中でも我慢したり、近所の目を気にしたりせず、救急車を呼ぶようにしましょう。【解説】豊田章宏(中国労災病院治療就労両立支援センター所長・同病院リハビリテーション科部長)

解説者のプロフィール

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豊田章宏(とよた・あきひろ)

1986年、岩手医科大学医学部卒業、脳神経外科講座入局。90年、同大学大学院医学研究科終了。96年、中国労災病院リハビリテーション科部長。2018年、同病院治療就労両立支援センター所長に就任し、勤労者医療の一環として就労支援に取り組む。

脳卒中が起こってしまったら

後遺症を軽減するには3時間半以内に病院へ!

予防に努めていても、もし脳卒中が起こってしまったら、そのときはすぐに、救急車を呼んで、病院へ行ってください。救命はもちろん、後遺症をできる限り軽減するためには、一刻も早く適切な治療を受けることがカギになります。

特に、脳梗塞の治療に使われる血栓を溶かす薬は、発症から4時間半を過ぎると投与することができません。

長時間、血流がとだえた血管はもろくなっているため、薬で血栓を溶かして血流が再開すると、血管壁が破れて脳出血を起こす可能性があるからです。

また、すでに脳細胞が壊死していたら、薬を投与しても治療効果は見込めません。

検査に1時間はかかるので、実際には3時間半以内に病院に着いておく必要があるのです。

脳梗塞の前兆「一過性虚血発作」にも要注意

脳梗塞には一過性虚血発作というものもあるので、要注意です。これは手足がしびれたり、力が入らなかったり、言葉が出にくかったりといった症状が現れても、しばらくすると治まるというものです。しかし、実はこれが脳梗塞の前兆で、そのあとに本格的な発作が起こる場合が多いのです。

クモ膜下出血も、軽い出血でいったん治まるケースがあります。そのままで済めばよいのですが、たいていはそのあと6時間以内に再出血を起こすことが多く、再出血を起こせば重症化する傾向にあります。

最初の軽い段階で治療するのと、重症化してから治療するのとでは、予後が違ってきます。「もしかして?」と思ったら、ためらわず受診しましょう。

よくあるのは、夜に症状が出て、「ひと晩様子を見よう」と朝まで放置してしまうケースです。それでは発症からかなり時間が経ってしまいます。

脳卒中は午前中に多いといった報告はありますが、統計的には一日中いつ起こっても不思議ではありません。夜中でも我慢したり、近所の目を気にしたりせず、救急車を呼ぶようにしましょう。

なお、脳卒中は冬に起こりやすいというイメージがあるかもしれませんが、脳出血は冬、脳梗塞は春〜初夏にかけてよく起こっています。ですから常に起こりうると考え、怪しいと思ったら早急に対処することが懸命です。

こんな症状があったらすぐに救急車を呼ぼう!

脳卒中「FAST」チェックとは

では、脳卒中が起こると、どんな症状が現れるのでしょう。

特徴的なのは、顔の片側半分がゆがむ、片側の手足がしびれる、力が入らない、ろれつが回らないといった症状です。脳卒中を発症すると、このようなことが突然起こります。

最初にチェックすべきポイントとして、(Face)、(Arn)、言葉(Speech)、それに発症した時刻(Time)を含めて、「FAST」と覚えておきましょう。

そのほか、片方の視野が欠ける、物が二重に見える、立っていられないほどのふらつき、経験したことのないような頭痛が起こることもあります。頭痛の程度は人によって感じ方が異なるので、「いつもと違う痛み」と感じたら受診すべきです。

脳卒中「FAST」チェック

Face 顔
顔の片側半分がゆがむ。片方の視野が欠ける。
〈チェック法〉
「イー」と発生しながら口角を上げる。片方の口角が下がっていれば、脳卒中を疑う。

Arm 腕
片方の腕に力が入らず、上がらなくなる。腕や手がしびれる。
〈チェック法〉
目を閉じ、手のひらを上に向け、両腕を伸ばして5秒ほど保つ。片方の腕が下がっていれば、脳卒中を疑う。

Speech 言葉
ろれつが回らない。言葉がうまく出てこない。
〈チェック法〉
短い文章をくり返しいってみる。例えば、「私の名前は●●」など。舌がもつれきちんといえない場合は、脳卒中を疑う。

そのほか
立っていられないほどふらつくいつもと違う頭痛がする
などの場合も、脳卒中を疑う。

Time 発症した時刻
①~④のような症状が1つでもあれば、すぐに救急車(119番)を呼び、「脳卒中の疑いがあること、症状、発症した時刻」などを伝える。

あらかじめ用意しておくといいこと

このような症状があれば、すぐに119番をして、「脳卒中かもしれない」と伝えてください。救急車が着くまでは横になり、安静にして待ちます。マヒがある場合は、吐いたときの誤嚥を防ぐため、マヒしている側を上にして寝るようにします。

救急車を呼ぶときは気が動転していることもあるので、あらかじめ住所・目印になる物・氏名・性別・生年月日などをメモして、電話のそばに貼っておくとよいでしょう。

持参する物は、保険証とお金、履物。それに、お薬手帳、現在飲んでいる薬、最近の治療経過、手術などの既往歴を書いたメモがあると、検査や治療がスムーズです。

また、同意がないと手術や治療ができないことがあります。脳卒中の場合、ご本人が同意できる状況にないことも多いものです。日ごろから判断を任せられる人を決めておいて、その人の連絡先も用意しておきましょう。

脳卒中が疑われる症状を家族に周知しておくこと

うまくしゃべれない、思うように手足が動かない、意識がなくなるなど、症状によっては自分で救急車を呼ぶことすらできません。ですから、脳卒中が疑われる症状や、そのときの対処法は、子供や孫など、家族にも周知しておくことが大切です。

独り暮らしの人は、離れて暮らす家族との連絡や、近所づきあいをふだんから密にしておくことも必要かもしれません。

ボタン一つで緊急連絡先につながるよう、短縮番号も作っておくとよいでしょう。

脳卒中に迷いは禁物。検査した結果、脳卒中でなかったとしても、それはそれでよいので、「怪しいと思ったらまず救急車」を家族の合言葉にして、素早い対応を心がけてください。

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