脳梗塞を防ぐにはまず動脈硬化を抑制することが大事です。そのために重要な、NO(一酸化窒素)が必要なときに十分に分泌されれば、血管は柔軟性を保つことができます。そこで私がお勧めしたいのが、手指の「グーパー運動」です。【解説】原田和昌(東京都健康長寿医療センター副院長)

解説者のプロフィール

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原田和昌(はらだ・かずまさ)

東京都健康長寿医療センター副院長。1985年、東京大学医学部卒業。90年、米国ハーバード大学研究員、2001年、東京大学医学部附属病院助手(循環器内科)、09年、東京都健康長寿医療センター内科総括部長、11年、東京医科大学客員教授、12年より現職。専門分野は、心不全、冠動脈疾患、高血圧。高齢者の心臓病、高血圧治療では膨大な臨床成績によりエビデンスに基づいた治療を実践しており、我が国の屈指の実績を持つ。
東京都健康長寿医療センター(公式サイト)

NOが分泌されやすい血管にすることが大事

脳梗塞は、大きく三つに分けることができます。

脳の細い血管が詰まるラクナ脳梗塞、動脈硬化によって起こるアテローム性脳梗塞、心房細動という不整脈によって起こる心原性脳梗塞(脳塞栓症)です。

心原性脳梗塞以外は動脈硬化が大きく関係していますから、脳梗塞を防ぐには、まず動脈硬化を抑制することが大事です。

そのために重要な働きをするのが、NO(一酸化窒素)という物質です。

血管の拡張などにかかわる機能はNOが担っており、これが必要なときに十分に分泌されれば、血管は柔軟性を保つことができます。

動脈の血管は、内側から内膜、中膜、外膜の3層構造になっています。この最も内側にある内膜の内皮細胞から、NOは産生されます。

通常は、血流がよいとNOが内皮細胞から分泌されて、中膜の平滑筋を緩め、血管が広がります。するとさらに血流がよくなってNOが放出され、血管が柔軟に動くようになります。

ところが、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病や、喫煙などによって内皮細胞が傷つくと、NOが出にくくなります。すると、血管が広がりにくくなり、血流も悪くなって、動脈硬化が進みます。

動脈硬化は加齢とともに進行しますが、それに拍車をかけるのが、先ほど挙げた生活習慣病や喫煙などです。動脈硬化が進行すると血圧も高くなり、脳梗塞を起こしやすくなります。それを防ぐには、NOが分泌されやすい血管にすることです。

おすすめは「手指のグーパー運動」

米国心臓病学会でも効果はお墨付き!

NOは、血液が速く流れるときに産生されます。したがって、一時的にでも血流がよくなると、その刺激で産生されやすくなります。

そこで、私がお勧めしたいのが、手指の「グーパー運動です。これは、両手をグッと握ったあと、力を緩めて手を開くことをくり返す運動です。

手を握ると腕の筋肉が収縮して、一時的に血管が狭くなり、血流がとだえます。そのあと力を緩めて手を開くと血管が解放され、血液がドッと流れます。そのときに内皮からNOが放出されて、血管が広がるのです。

このグーパー運動で、脳の血管も開くことがわかっています。腕の血管で作られたNOが、血流に乗って脳まで届くのです。

ですから、グーパー運動を毎日行えば、しだいに脳の血管もしなやかになり、脳血流もよくなると考えられます。

グーパー運動は、強い力で握る必要はありません。最大握力の3分の1くらいの力で握り、手を緩めます。それを1秒に1回くらいのペースで、1分間(約60回)ほど行います。

ギューッと強く握ったり、回数を多くやり過ぎたりすると、逆に血圧が上がってしまうことがありますから、気をつけてください。

私も1日2回、朝の入浴中と夜の就寝前に1分ずつ、グーパー運動を行っています。入浴すると血流がよくなってNOが出やすくなりますが、入浴中にグーパー運動を行うと、さらにその効果が高まると思います。

また、有酸素運動もNOの産生に有効です。自転車こぎ、水泳などがありますが、手軽にできてお勧めなのはウォーキングです。歩くと下半身の血流がよくなり、NOが増えます。それが全身に回ることで、全身の血管が柔軟になります。

息切れせずに会話ができる程度の速度で歩きましょう。1回30分以上、1週間で180分以上行うと効果が期待できます。

米国心臓病学会と米国心臓協会は、グーパー運動(ハンドグリップ法)と有酸素運動に、血管を柔軟にして血圧を下げる効果があると、報告しています。

血管を柔軟にするお勧めの運動

❶手指のグーパー運動
【注意】強く握り過ぎたり、多くやり過ぎたりしない。

画像: 血管を柔軟にするお勧めの運動

両手の指をグッと握ったあと、力を緩めて手を開くことを、1分(60回)ほどくり返す。握る力は、最大握力の3分の1くらい。1日2回を目安に行う。入浴中に行うと効果的。

❷有酸素運動
(ウォーキング、水泳、自転車こぎなど)

画像: 【脳梗塞予防】血管を柔軟に保つNOの産生に有効なグーパー運動のやり方  食事は「青魚とキュウリ」を一緒にとるとよい

ウォーキングなら、息切れせずに会話ができる程度の速度で歩く。1回30分以上、1週間で180分以上が目安。

動脈硬化が進んだ血管も改善することは可能

食事でNOを増やす方法もあります。昔からよく知られているのが、オメガ3という脂肪酸です。細胞膜の構成成分で、摂取後2週間くらいで内皮細胞の中に取り込まれます。そこでNOの産生を助けてくれるといわれています。

オメガ3は、青魚に多いEPADHAに含まれています。最近は、魚離れが進んでいますが、サバやイワシ、アジなどを週に3回ほど食べるといいでしょう。サバやイワシの缶詰なら1缶(150g)で十分です。

EPAやDHAには、中性脂肪を減らしたり、血液をサラサラにしたりする働きもあり、多方面から動脈硬化や高血圧の改善に役立ちます。

なお、アマニ油やエゴマ油など、オメガ3の多い植物油を生のままドレッシングがわりにとるのもいいでしょう。ただし、加熱用には不向きです。一部が分解してしまいます。

なお、サバやイワシなどの青魚には、NOのもとになる「アルギニン」というアミノ酸も含まれています。アルギニンはNO合成酵素と結びつくことで、NOの産生につながります。

しかし、食品からとったアルギニンは、体内でシトルリンというアミノ酸に代謝され、NO合成酵素と結びつきにくいといわれています。ところが、シトルリンをとると、アルギニンに代謝されて、NO合成酵素と結びつきやすいので、同時にシトルリンを含む食品をとるとNOの産生がより促進されます。

シトルリンは、キュウリやニガウリ、スイカなど、ウリ科の植物に多く含まれています。サバやイワシなどの青魚と、キュウリのサラダやゴーヤチャンプルなどをいっしょに食べるといいでしょう。

そのほかの野菜や果物も、多めにとってください。血管内皮が活性酸素によって傷つくと、NOが産生されにくくなります。野菜や果物には、血管の酸化を防ぐポリフェノールやビタミンが豊富に含まれています。

画像: 青魚とキュウリはNO産生の名コンビ

青魚とキュウリはNO産生の名コンビ

これまで、動脈硬化が進んだ血管は、元に戻らないと考えられていました。しかし、高血圧、高コレステロール、高血糖、喫煙、肥満など、動脈硬化のリスクを総合的に改善すると、よい状態に戻ることがわかってきました。

ですから、食事を見直したり、グーパー運動などを行ったりして、血管を健康にし、脳梗塞の発症や再発をしっかり防いでください。

画像: この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。 www.makino-g.jp

この記事は『壮快』2020年3月号に掲載されています。

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