トイレに入ってどんなにいきんでも排便できない頑固な便秘を「排便困難型便秘」といいます。排便できたとしても、硬いコロコロした便が少し出るだけ、残便感があると不快なものです。かといって、無理していきむのは逆効果。ここでは、そんな頑固な便秘でも便を出しやして便秘を改善する「排便ポーズ」をご紹介しましょう。【解説者】山口トキコ(マリーゴールドクリニック院長)

解説者のプロフィール

画像: 解説者のプロフィール

山口トキコ(ヤマグチ・トキコ)

1988年東京女子医科大学卒業。1992年東京女子医科大学大学院修了。東京女子医科大学付属病院(第二外科)で研修後、社会保険中央総合病院(現:東京山手メディカルセンター)勤務を経て2000年2月、マリーゴールドクリニック開業。医学博士。日本大腸肛門病学会 専門医・指導医・評議員。日本臨床肛門病学会 技能指導医・評議員。
マリーゴールドクリニック(公式サイト)
専門分野と研究論文(CiNii)

無理していきむのは逆効果

直腸瘤を起こす危険も

便秘にならないようにするには、規則正しい生活や睡眠、適度な運動、食物繊維の多いものをとるなど、毎日の生活習慣が大事です。

とはいえ、忙しい現代では、なかなか思うようにできないという人も多いでしょう。また、やっているけどうまく排便できないという人もいるかもしれません。そこで、この記事では少しでも排便がスムーズにいくように、トイレでの排便時に役立つお話をしましょう。

トイレに入ってどんなにいきんでも、排便できない。排便できたとしても、硬いコロコロした便が少し出るだけで、残便感がある。これは、なんとも不快なものです。
でも、無理していきむと逆効果。

画像: 直腸瘤を起こす危険も

腸などの内臓の機能を調整している自律神経のうち、緊張時に働く交感神経が優位になって、腸の動きがよけい悪くなってしまうからです。
また、強くいきむと、血圧が上がったり、肛門がうっ血して痔になったり、ひどい場合は直腸瘤になってしまったりすることもあります。

直腸瘤とは、肛門のすぐ上にある直腸の壁の一部が、膣のほうへポケット状に出たものです。無理にいきむと、便がそのポケットに入って膨らみ、肛門のほうへ向かう勢いをそがれてしまいます。また、ポケットに入った便が残るので、スッキリしません。
ですから、長くいきみ続けるのはよくありません。

トイレでがんばる時間はせいぜい3分です。そのときうまく排便できなくても、次に便意を感じたときに排便すればいいのです。

排便しやすい姿勢がある

洋式より和式のほうが排便しやすい

さて、その排便するときの姿勢にも、排便しやすい姿勢・しにくい姿勢があります。

私の患者さんに、洋式トイレの便座の上にしゃがむと、排便しやすいという人がいます。これは確かに理にかなっています。しゃがんで用を足す和式トイレのほうが、洋式トイレより排便はスムーズなのです。
和式トイレでは、自然に前かがみの姿勢になります。すると、おなかに力が入り、腹圧がかかりやすくなります。また、お尻も広がるので、便が出やすくなるのです。

しかし、今では和式より洋式トイレが多く、洋式トイレのほうが足(あるいは下半身)にも負担がかかりません。そこで私は、洋式トイレで排便するときは、和式トイレと同じように上体を前傾させるように、患者さんにアドバイスしています。そのとき、かかとを引いて少し上げると、前傾しやすく、おなかにも力が入りやすくなります。

画像: 洋式より和式のほうが排便しやすい

排便しやすいポーズを図解

前傾姿勢をとると、直腸肛門角が開きやすくなります。図のように上体を前傾させ、かかとを引いて少しあげましょう。

画像: 排便しやすいポーズを図解

直腸肛門角は直腸と肛門がつくる角度で、肛門が締まっているときは、ほぼ90度です。

画像: 上体を立てた状態では直腸肛門角は90度。この状態では便が出にくい。

上体を立てた状態では直腸肛門角は90度。この状態では便が出にくい。

しかし、排便時には直腸を支えている恥骨直腸筋が緩むので、直腸肛門角が130度ほどに広がります。さらに、前傾姿勢をとると、肛門直腸角は開きやすくなり、直腸から肛門への角度が緩やかになるので、便が排出されやすくなるのです。

画像: 上体を前傾させることで、直腸肛門角が開きやすく排便しやすくなる。

上体を前傾させることで、直腸肛門角が開きやすく排便しやすくなる。

頑固な便秘に効果がある

排便困難型便秘とは

この前傾姿勢が特に効果を発揮するのが、「排便困難型便秘」と呼ばれる、薬もなかなか効かない便秘です。
排便困難型便秘とは、便意があり、便が直腸まで運ばれているのに、恥骨直腸筋が緊張したままで緩まなかったり、直腸瘤があったりして、排便できない便秘のことです。

しかし、排便困難型便秘でも、前傾姿勢をして出口の直腸肛門角が開けば、直腸まできている便が排泄されやすくなります。頑固な便秘も、姿勢でだいぶ変わるのです。

呼吸法やマッサージも効果的

「排便イメージ」を持とう

トイレタイムはこのように、上体を前傾させるだけでなく、前傾しながら排便に効果がありそうなことをいろいろやってみるといいでしょう。

例えば、腹式呼吸です。ゆっくりと口から息を吐きながら下腹をへこませ、ゆっくりと鼻から息を吸いながら下腹を膨らませる。これを数回くり返してください。
自律神経の副交感神経が優位になって、心身がリラックスし腸が動きやすくなるので、排便しやすくなります。また、胸部と腹部の境にある横隔膜が大きく上下するので、それに連動して腸が動きやすくなります。

大腸のマッサージもいいと思います。おへそを中心におなか全体を時計回りに、右から左に押しもみすると、腸の中を便が通過しやすくなります。特に、おなかの左側から、おへその左下部分は念入りに刺激するといいでしょう。

また、上半身を左右にひねったり、腰を回したりしながらいきむのも効果的です。腸が刺激されて、動きやすくなります。

効果には個人差がありますが、1つでも自分に合うものがあったら続けてください。「それをすると排便できる」というイメージが持てると、便秘が改善しやすくなります。

便秘改善に役立つ排便方法

  • 無理にいきんで便を出すのはNG。排便しやすい姿勢をとる。
  • 腹式呼吸を行い、副交感神経を優位にする。
  • 大腸のマッサージで便を通過しやすくする。
  • 上半身を左右にひねったり腰を回しながらいきむ。

なお、本稿は『壮快』2013年10月号(マキノ出版)に掲載された記事の一部を抜粋・加筆して掲載しています。

This article is a sponsored article by
''.