コロナ禍で実践する人が増えたといわれるランニング。筆者も走っているのですが、暑くなるにしたがい、後半がつらくなってきました。いろいろ調べたところ、水分不足のようです。「走る前に水分をとれば大丈夫」と思っていましたが、脱水や熱中症の予防には足りないようです。そこで、走りながら水分補給できる「ハイドレーションパック」を購入。試してみたので報告します。
執筆者のプロフィール
齋藤千歳(さいとう・ちとせ)
元月刊カメラ誌編集者。新しいレンズやカメラをみると、解像力やぼけディスク、周辺光量といったチャートを撮影したくなる性癖があり、それらをまとめたAmazon Kindle電子書籍「レンズデータベース」などを出版中。まとめたデータ元にしたレンズやカメラのレビューも多い。使ったもの、買ったものをレビューしたくなるクセもあり、カメラバッグなどのカメラアクセサリー、車中泊グッズなどの記事も執筆している。目下の悩みは月1以上のペースで増えるカメラバッグの収納場所。
夏場のランニングは水分をとりながら
最後の数kmで足が前に出なくなる
コロナ禍で外出の機会が減り、「運動不足解消のために走り始めた」という方も多いのではないでしょうか。
筆者もそんなひとりです。定期的に運動をするのは気持ちがいいものです。走れる距離がだんだん伸び、ペースも少しずつ上がって、数日おきに20kmほど走るようになりました。1kmを約6分かけて走るくらいの、ややゆったりしたペースで、2時間ほどのランニングを楽しんでいたのです。
ところが7月に入ってから、ときどき20kmを走りきれない日が出てきました。
最後の数kmを残して気分が悪くなったり、足が思うように前に出なくなったり……。これでは走り終わったあとの爽快感も激減です。
起き抜けに水も飲まず走っていた
ランニングの目的は、ダイエットと体力維持でした。走ったあとの体重が軽ければ軽いほど、喜びが大きいものです。そのため、朝起きると、なにも飲まず、なにも食べずに走っていたのです(今から思うと非常に危険です。決してマネしないでください!)。
しかし、さすがに筆者の住む北海道も7月に入ると暑くなり、ランニング中に大量の汗をかきます。「後半に足がもたないのは、水分不足が原因では」と考えました。そのため、走る前に水分を500ml程度とり、「多少のエネルギーも必要かな」とバナナを食べたりもしました。それでも、最後5kmのパフォーマンスは明らかに低下するのです。
2時間走るには2L近い水分が必要
「暑くなってから調子が悪いのは、水分不足かな〜」という程度の認識だったので、水分補給のしかたも自己流でした。効果を実感できなかったのはそのためでしょう。そこで、本当に必要な水分量を調べてみました。
必要な水分量は、体格や体重、運動強度などによって変わってきます。「ランニング 給水量」などで検索すると、専門的なデータがたくさんヒットしますので、詳細はそういったサイトをお勧めします。ここでは、一般的な水分量をご紹介しましょう。
スポーツ障害に詳しい北海道整形外科記念病院の公式サイトには、「マラソンの給水」という項目があります。そこでは、夏季のマラソンでは、走る前に250~500mlの水分をとったうえで、走行中は1時間当たり500~1000ml(15分おきに100~250ml)の水分補給を勧めています。
夏場の長距離ランニングには適切な水分補給が必要であること、筆者の「最後5kmがキツイ」という症状は水分不足であることがわかりました。最後までパフォーマンスを落とさずに20kmを走り切るには、約2Lの水を持って走ることになります。とはいえ、1Lのペットボトルを両手に持って走るのは、さすがに現実的ではありません。ほかの方法で、ランニング中に水を飲む方法を考えることにしました。
走りながら手を使わず水が飲める
ハイドレーションシステムとは?
そこで筆者は、「ランニング用ハイドレーションシステム」を検討しました。簡単に説明すると、リュックなどの中の袋に水を入れ、それを口元まで伸びるチューブで給水する仕組みです。 登山や軍用の装備などでよく使われます。
ランニング用の場合、リュックに入れたハイドレーションパック(水袋)から長いチューブが出ていて、走りながら水を飲むことができるというものです。ハイドレーションシステムに対応したランニング用のリュックは、走行中の揺れを抑えるように設計されています。
ランニング用リュックとハイドレーションパックがセットになったものもありますが、別々にも売られています。筆者の場合、ハイドレーションシステムに対応したランニング用リュック(フリューイッドベストパック 10)を持っていたので、パックのみを購入しました。
有名メーカーのハイドレーションパックは、だいたい5,000円〜といった価格帯で「買ってみたけど、あまり使わなかった、残念!」で済ますには、ちょっとよいお値段です。そこで筆者は「GIMart ハイドレーション」1,299円(送料および税込み)を購入しました。
長期で頻繁に使うなら、さらによいものに買い替えてもいいですし、「やっぱり使わなかった」となっても、さほど嘆かずに済む、すばらしい価格設定といえるでしょう。
【実用な設計】便利な噛みバルブを採用しており、飲み口は抜いた状態で軽く噛むと水が自然に出てきます。シンプルながらバルブはしっかりと不意の水漏れを防ぎ、安心してお使いいただけ…
やや「ゴム臭い」が実用には問題ないレベル
購入時に確認したアマゾンのレビューでも、「多少ゴムやビニールの匂いがある」という情報でした。ハイドレーションパックの到着と同時に濃いめの塩水を作り、その中にほぼ1日放置したあと、水を入れて使用を開始しました。
こうした下準備をしても、多少ゴムやビニールの匂いは残ります。子どものころ、お風呂でゴムホースを使って水を飲んで遊んでいたときのような匂いがします。筆者は許容範囲内ですが、気になる人もいるでしょう。
給水口は、直径約6cmのねじ込み式キャップになっており、水だけでなく氷を入れるときにも便利です。容量は満水で2Lのようですが、容量いっぱいまで水を入れてキャップを締めるには、少しコツが必要です。筆者は満水まで入れないので、あまり気にしてはいません。
ハイドレーションの吸引チューブは約1mあるので、長さが不足することはあまりないでしょう。吸引チューブは、ワンタッチでハイドレーションパックから取り外しできる構造になっています。
ハイドレーションパックの上部にあるスリット(穴)は、リュックに固定するためのものです。ハイドレーションシステムに対応したリュックには、このスリットに通すベルトがついていて、大きく揺れたり、上下が逆になったりしないように配慮されています。
全体に、非常にコストパフォーマンスの高い製品と感じました。
一定の間隔で少量ずつの水分補給ができる
これまでは、走る前にちょっと多めに水分をとったり、500ml程度のペットボトルを手に持って走ったりしていました。ペットボトルは、ふたを開け閉めしたり、手元を見たりするたびに、ランニングのペースが崩れて嫌でした。その点、ハイドレーションパックなら、両手が空いた状態で、走りながら一定の間隔で少量ずつの水分補給ができます。
気をつけていることは、「のどが渇いた」と感じる前から、少しずつ水分を補給することです。例えばですが、「1kmごとに3口飲む」など、ある程度のリズムをつけで水分をとると、筆者は気持ちよく走れる印象です。これまで悩まされていた「最後5kmの不調・疲労感」が軽減し、格段に楽になりました。
また、約2L=約2kgの水を背中に背負うので、重さが気になるかと思いましたが、さほど気になりません。リュックの性能にもよりますが、揺れる感じも思ったほどではありませんでした。少なくとも、「夏の間はハイドレーションパックを背負って走ろう!」と思う程度には快適です。
まとめ
以前から、ハイドレーションパックの存在は知っていました。ただ、ハイドレーションパックを背負って自宅の周りを走るのは、ちょっと大げさで恥ずかしいと思っていたのです。そのため、「買っても使わないかも」という心配もあったわけですが、「GIMart ハイドレーション」の1,299円(送料および税込み)という価格が、このハードルを一気に下げてくれました。
実際に使ってみると、十分な水分をとりながらのランニングは、個人的にはすこぶる快適です。吸引チューブから飲む水は若干ビニール臭く生ぬるいので、あまり美味しくありませんが、気温の高い夏場と、1時間以上の長距離ランニングの際には必携だと思っています。
「夏になってからランニングの調子がよくない」と感じているかたは、もしかしたら水分不足かもしれません。1,000円ちょっとという価格も含め、ハイドレーションシステムを試してみたいという方には、非常におすすめです。