すぐに落ち込む。打たれ弱い。優柔不断。約束をドタキャンしてしまう……。食べ物の好き嫌いは、たんなる嗜好の違いだけで終わる話ではありません。栄養のアンバランスさが、イライラや不安、集中力低下のような形で、メンタルにも悪影響を及ぼしているのです。
解説者のプロフィール
那須由紀子(なす・ゆきこ)
管理栄養士。プレ・ニュートリション 日本栄養士会認定栄養ケア・ステーション 代表。日本臨床栄養代謝学会NST専門療法士。特定保健指導実践者。一般社団法人オーソモレキュラー栄養医学研究所認定ONP。東京都自転車競技連盟普及委員会専門委員・管理栄養士。海老名市歯科医師会オーラルフレイル特別委員会外部委員。FM湘南ナパサ「おしゃべりマンデー」準レギュラー。病院管理栄養士として臨床経験を積みながら、分子整合栄養医学を学ぶ。独立後、精神疾患における栄養療法も行う管理栄養士として、栄養指導、うつ病による休職者の復帰プログラムに取り組んでいる。特定保健指導、歯科における栄養療法、スポーツ栄養、乳幼児栄養、また、講演会、セミナー、メディア出演、執筆など、多岐にわたり活動している。著書に『疲れた心がラクになる食べ方大全』(永岡書店)などがある。
▼プレ・ニュートリション(公式サイト)
▼@yukiko_nasu(Instagram)
最近こんなことはありませんか?
すぐカッとなったり、落ち込んで不安になったり、涙が出たり、体がだるくて、休日に何もせずに過ごしていたり、頭が回らなくて、集中力もやる気も出なかったり、物事を決められずいつまでもぐるぐる悩んだり……
あなたを悩ませる心の不調の原因は、
「脳の栄養不足」かもしれません!
私は管理栄養士として、病院でうつ病の患者さんの食事をチェックしていました。約1万人の方を見てきたなかで、改めて確信したことがあります。
「私たちの心は栄養でできている」
ということです!!
心 ── つまり脳は、たくさんの栄養でできています。脳が栄養不足だと思考や感情がうまくコントロールできなくなるのです。
ここでは、私の病院での臨床経験と分子整合栄養医学の理論に基づいた心の不調を改善するための食事術を紹介します。
毎日の食事で人の心はポジティブにもネガティブにも変化するのです。食生活のひと工夫で心にたっぷり栄養を届けて、よりハッピーな人生を送る手助けができたらうれしいです。
「偏食」と「依存」が脳の栄養不足を引き起こす
何だかうつっぽい……。やる気が出ない……。すぐイライラしてしまう……。そんな心の不調の原因は、あなたのメンタルではなく、食習慣にあるのです。
落ち込むのは心が弱いせいじゃない!「メンタル」と「栄養」の深~い関係
なぜ栄養が心(=脳)に影響を及ぼすのか?
すぐに落ち込む。打たれ弱い。優柔不断。約束をドタキャンしてしまう……。
それもこれも全部、自分の心が弱いせいだ。そんな風に誤った思い込みにとらわれている患者さんに、これまで大勢お会いしてきました。
私の職業は管理栄養士です。精神疾患は栄養不足と密接に関わっていることが多いのですが、そうとは考えられずに治療をされるケースが多々あります。
私はその誤解を解くために、本や講演などで知識を伝え、病態回復はもちろん、栄養学からアプローチするメンタルヘルスの活動にも取り組んできました。
心は脳と、脳は栄養と繫がっている
「メンタルヘルス」と聞くと、「管理栄養士ではなく、精神科医やカウンセラーの領域では?」と不思議に思う方もいるでしょう。
私はこれまで管理栄養士として、約1万人の入院患者さんの食事風景を観察してきました。
普段はどんな食事をしているのかといった本人へのカウンセリングはもちろん、食事時間に病棟を訪れては、その患者さんの食べ物の好き嫌い、食べ方やペース、完食の度合い、体型、血液検査の結果との関連性などから、不足している栄養素を突き止め、病態の改善を指導するのが私の役割です。
そこから見えてきたのは、日々の食事で摂る栄養は、脳にも大きな影響を及ぼしているという事実でした。
食べ物の好き嫌いは、たんなる嗜好の違いだけで終わる話ではありません。
摂取できる食材に偏りがあるということは、取りこぼしている栄養素があるということ。栄養のアンバランスさが、イライラや不安、集中力低下のような形で、メンタルにも悪影響を及ぼしているのです。
※この記事は書籍『疲れた心がラクになる食べ方大全』(永岡書店)から一部を抜粋・加筆して掲載しています。