チョコレートの楽しみ方の一つが「ホットチョコレート」。しかしチョコレートを飲むといっても、現状、日本の家庭で出されるのはインスタントココア位ではないでしょうか。今回、カカオブランドのホテルショコラのチョコレートドリンクメーカー「Velvetiser(ベルべタイザー)」を発表しました。どんなものか、ご紹介します。
チョコレートは「ドリンク」から始まった
チョコレート。カカオの実を原料とする甘いお菓子です。カカオは中南米原産の常緑樹。学名は Theobroma cacao。意は神の食べ物。スィーツの中のチョコレートの立ち位置を考えると、何だかうなずける気もします。
初めてヨーロッパ人でカカオの実を見たのは、コロンブスだそうです。記録されています。しかし、ヨーロッパに伝えたのはマヤ族。友好使節としてスペインの皇太子フィリペ二世に献上されたそうです。
当時のアメリカでは、カカオを粉にして、唐辛子、バニラビーンズと一緒に飲んでいたとのこと。その頃のイエズス会の宣教師の記録によると、「飲み慣れると、この飲み物が欲しくてたまらなくなる。飲むと暑さ寒さなどが和らぐ。胃腸にもいい。」とありますので、習慣性、薬効成分が強い飲み物であったことが伺えます。コーヒーに似ていると思います。
このドリンクをフィリペ二世は気に入ったらしく、スペイン王室に広まり、改良されていきます。西洋菓子の4大成分『牛乳、砂糖、卵、小麦粉)の内、牛乳と砂糖で、洗練していく。この時の呼び名が、チョコラテ。チョコレートの語源です。
そして、王族同士の婚姻、付き合いで、各国の貴族階級に広がっていきました。その後、産業革命で、強い力が出るミルでカカオを処理することができるようになり、カカオ豆を超細かくすり潰しペースト状にしたカカオマスに、カカオバター(カカオ豆の油脂成分)、砂糖、ミルクと合わせた板チョコが作られるようになります。実は、板チョコの栄冠はイギリスなんですね。この歴史からわかるように、チョコレートは本来は固形ではなく、ドリンクで楽しむものだったのです。
チョコレートドリンクメーカー「Velvetiser(ベルベタイザー)」が登場
ベルタイザーは、ポット型のチョコレートドリンクメーカーです。
ポイントは、温度調整と撹拌。バレンタインデーで手作りチョコレートを作る際に、チョコレートの湯煎に苦労した人は案外多いのではと思います。特に直接鍋で溶かそうとした人は、焦がさないようにするのに苦労だったと思います。
実は、この作業は電気だと簡単なのです。温度制御は大得意ですし、また攪拌もモーターで回すことができます。
「ベルベタイザー」の魅力は、それだけではありません。
まず「形」。実に古風なポッドです。横に突き出た取っ手は、ユーザーニーズからは出てきません。棚に置く時困ります。「取っ手がとれる」ことでシェアを伸ばすブランドTと正反対の発想です。
しかし、ベルべタイザーが醸し出す雰囲気はピカイチ。チョコレートは、汗臭バタバタして飲むものではないと語っている感じがします。
台座構成などは、電気ケトルと同じですが、ベルベタイザーは上げ底です。これは見栄をはったためではなく、中に攪拌用の磁石が仕込まれているからです。このため、底はフラットで洗いやすい。ベルベタイザーは、電気仕掛けですから、水桶にドップンとつけ洗いすることはできません。中をさっときれいにするだけです。ホットチョコレートは、チョコレートだけでなく牛乳も使いますので残ると必ず臭いますが、ベルべタイザーのように底がフラットになっている、と楽に、手早く、確実に洗うことができます。
一見クラシックですが、現代の素養をしっかり持っているのです。
フレーバーは15種類。応用は無限
今回、このために用意されたフレーバーは15種類。「ミルキー 50%」「クラシック 70%」「ソフトキャラメル」「へーゼルナッツ プラリネ」「ダーク 100%」「ミント」「ダーク85%」「オレンジ」「アステカ」「ジンジャー」「バニラ&ホワイト」「45% ナッツミルク(ビーガン対応)」「カフェラテ」「ヘーゼルナッツラテ」「チョコレートラテ」。
聞き慣れない「アステカ」は、70% ダークチョコレートにハバネロを加えたもの。冒頭紹介したマヤの飲み方です。面白いですね。美味しい、美味しくないという次元の話ではなく、体験してみたいです。
これ以外にも、エスプレッソコーヒーと合わせてみたり、ラム酒などと合わせてカクテルにしたり、チョコレートソースにしたりと応用は無限に出てきそうです。
そうそうホットミルクも簡単です。ミルクは温めすぎると、タンパク質が変化します。膜などはってしまうのはそのためです。そういうことなしに温められます。また、ホットチョコレートは、ミルクが入っていますので、冷やして固めてしまえはプリン、ムースなども可能です。
笑えるほど多用途です。
ホテルショコラの考え方
1993年、Windows95が世に出る2年前。ホテルショコラは、オンラインショップとして産声を上げています。そして順調に拡大していきます。
転機になったのは、2006年。彼がココア農園を持ってからです。コーヒーでもそうですが、カカオもプランテーションで大きくなりました。それを支えるのは、現地の安い労働力です。植民地統治とも相まって、過酷だったと思います。そして今は「量」も求められていますが、重視されるのが「質」です。コーヒーもそうですが、真に美味しいモノを味わうためには、履歴が追えなければなりません。農場での生産、管理はすこぶる重要な問題なのです。
これを実現させるためには、農場を持つことも重要ですが、労働者の質を上げる必要があります。賃金を上げ、いい人を集めることはもちろんですが、実現させたいことを共有化すること、その人が働きやすい環境を整えること、自分がしている仕事が、ただ単にお金儲けのためでなく、次の礎になっていて誇れることなどがあります。そうして初めて、良質のカカオが育つのです。
今、スペシャリティコーヒーを作る農園は、そうしています。ホテルショコラは、そのカカオ版です。
今年のマスク騒動で、「量」の中国と、「質」の日本の差を、改めて感じた人は多かったのではないでしょうか?
そんな、ホテルショコラのホットチョコレート。試飲するとカカオ豆の感じがググッときます。人工的ではなく、神の食べ物とまで言われた、妙なるトローリとした甘味が口一杯に広がります。この贅沢極まりない瞬間を誰にも邪魔されたくないと思いますね。
1袋220ml、250円は贅沢?
このチョコレートドリンクのフレーバーは、250円/袋です。
確かに贅沢です。が、この質なら余り贅沢だとは思いません。それほど美味しい。また、子どもたちにはミルクで薄めればいいので、量を求めない限り、一杯、220mlで、かなり楽しめます。しかも本物。カカオマスが、多く入っており、その分、不要な添加物はなし、砂糖もできる限り抑えます。
例えば、あるメーカーのミルクチョコレートですが、成分を見ると、砂糖、カカオマス、全粉乳、ココアバター、レシチン(大豆由来)、香料。特に、レシチン、香料はおかしいですね。前述の不要添加物に当たります。これはカカオマスの量が十分でないからです。要するに、普段スーパーで売っているチョコレートは、それなりの代用品が使われているということです。これがないだけでも大変嬉しいことです。
ちゃんとしたショップのチョコは高いです。ちょっと食べるのにも500円、1000円が飛んでいきます。ホテルショコラのチョコは、量産品と高級品の間の、庶民にも手が出せるちょっとした贅沢品と言えます。
しかも、固形のチョコレート比べて、こちらのチョコレートドリンクは、それなりの量があります。実は、220ccという量は、ちょっとした量です。そう考えると、安い。しかもよくテレビなどで取り上げられる、チョコレートの健康成分は、カカオマスに含まれているものが多い。これも多いにプラス要素ではないでしょうか。
先行予約は11月23日から
2020年11月23日(月・祝)より蔦屋家電+店頭で先行予約され、発売は12月中旬。本体価格は1万円(税抜)。
今年のクリスマスは、チョコレートドリンクで甘く過ごすのはいかがですか。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング、ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散策とラーメンの食べ歩き。