野菜づくりをしていると、どうしても病害虫の被害を受けてしまいます。さまざまな対策がありますが、効果的なのはやはり農薬を使うことです。安全性の高い薬剤が登場しているので、適切に使って病害虫から野菜を守りましょう。【解説】加藤正明(東京都指導農業士)
執筆者のプロフィール
加藤正明(かとう・まさあき)
東京都練馬区農業体験農園「百匁の里」園主。東京都指導農業士。日本野菜ソムリエ協会ジュニア野菜ソムリエ。34歳まで民間企業に勤務したのち、家業の農業を継ぐ。2005年に「百匁の里」を開園、野菜づくりのノウハウからおいしい食べかたまで伝授している。野菜ソムリエ協会主催の第2回ベジタブルサミット枝豆部門で最高得点を得て入賞。NHK趣味の園芸「やさいの時間」では、番組開始時より栽培管理と講師を務める。著書に『加藤流 絶品野菜づくり』(万来舎)がある。
▼百匁の里(公式サイト)
▼やさいの時間(みんなの趣味の園芸)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
農薬は決められた通りに使う
農薬は、おもに害虫駆除のために使う殺虫剤と、病気の発生に効果的な殺菌剤の2種類があります。農薬の種類ごとに使用できる作物名、適用病害虫名、希釈倍数、使用時期、使用方法、総使用回数などが農薬取締法によって厳しく定められており、使用する人はこれらを守る義務があります。誤った使い方をすると、野菜に薬害が出たり、土壌の環境や食べた人の体に影響が出たりする恐れがあり大変危険です。たとえ家庭菜園であっても、農薬の用法・用量は必ず守らなければなりません。
薬剤を選ぶ際は、病害虫の種類を見極める、使用する目的をはっきりさせる、薬剤の形状や特性を理解する、適用を確認することが大切です。
農薬の初期散布でより効果を上げる
野菜づくりをする際は、その野菜に起こり得る被害をあらかじめ考えて観察することが必要です。病害虫の発生に早く気づいて、はじめの段階で薬剤散布ができれば被害を最小限に抑えることができ、薬剤散布の回数を減らすこともできます。
おもな薬剤
▼殺虫剤
- アディオン乳剤* アファーム乳剤
- アルバリン粒剤
- ダイアジノン粒剤
- オルトラン水和剤
- ゼンターリ顆粒水和剤
- プレバソンフロアブル
▼殺菌剤
- ジマンダイセン水和剤
- ダコニール1,000
- パンチョTF顆粒水和剤
薬剤は正確に希釈し、風のない日に散布する
散布液をつくるときは、長そで、手袋、マスクを着用し、計量スプーンやメスシリンダーなどを使って説明書通りに正確にはかり、希釈しましょう。
薬剤散布をする日は天気予報をチェックします。適しているのは、風のないおだやかな日の朝または夕方です。日中は上昇気流が起こりやすいので避け、風が強い日も薬剤が飛散してしまうので避けましょう。また、雨が降るとせっかく散布した薬剤が流れ落ちてしまうので、散布後に雨の予報が出ている場合も見合わせます。
肌の露出を控えた服装で、しっかり散布する
液状の薬剤散布をする際は、帽子、ゴーグル、マスク、長靴、長そで、長ズボン、ゴム手袋を着用して行います。散布するときは風上に立ち、風下方向へノズルを向けます。葉の裏や表、茎など病原菌の入りやすいところや害虫の発生する部分をねらいましょう。株全体がぬれて、しずくが落ち始めるくらいが目安です。中途半端に散布すると病害虫を防ぐことができず、かえって抵抗力をつけさせることになるので、しっかり散布しましょう。
散布後、残った薬剤は排水溝に流してはいけません。全部使いきるか、土にまいて処分します。うがいをして手や顔、目を十分に洗いましょう。
噴霧器
農薬や除草剤をまくための噴霧器。肩掛けタイプや背負いタイプ、キャリータイプがあり、動力は手動式、電池・充電式、電動式などがある。
なお、本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※㉓「初心者向けの人気野菜 ラディッシュの育て方」の記事もご覧ください。