やせた土地でもつくれ、低温や病害虫に強いカボチャは、ほとんど失敗しない育てやすい野菜。ただし、つるを四方にのばすので、ある程度のスペースが必要です。β-カロテンなどを多く含んでおり、「カボチャを食べると風邪をひかない」といわれます。【解説】加藤正明(東京都指導農業士)
執筆者のプロフィール
加藤正明(かとう・まさあき)
東京都練馬区農業体験農園「百匁の里」園主。東京都指導農業士。日本野菜ソムリエ協会ジュニア野菜ソムリエ。34歳まで民間企業に勤務したのち、家業の農業を継ぐ。2005年に「百匁の里」を開園、野菜づくりのノウハウからおいしい食べかたまで伝授している。野菜ソムリエ協会主催の第2回ベジタブルサミット枝豆部門で最高得点を得て入賞。NHK趣味の園芸「やさいの時間」では、番組開始時より栽培管理と講師を務める。著書に『加藤流 絶品野菜づくり』(万来舎)がある。
▼百匁の里(公式サイト)
▼やさいの時間(みんなの趣味の園芸)
▼専門分野と研究論文(CiNii)
本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。
イラスト/小春あや、まんが・イラスト/上田惣子
カボチャ
難易度
★★
気をつけたい病害虫
- うどんこ病
- モザイク病
- アブラムシ
- ウリハムシ
など
成功&おいしさの決め手
●雄花と雌花があるので、人工授粉をして確実に実をつけさせる。
●育てる実は、1株に4〜5個にすると、味のよいカボチャに。
●収穫後、2週間ほどおいて追熟させる。うまみが増しておいしくなる。
畝づくり
植えつけの1〜2週間前に、2m四方のスペースをとり、溝を掘って元肥を施し(溝施肥)、畝を立てます。
元肥を施す
2m四方のスペースをとり、その中央となるところに深さ20cm、長さ50~60cmの溝を掘り、元肥を均等に入れて土を埋め戻す。
元肥 溝1mにつき
●牛ふん堆肥 0.5ℓ
●有機配合肥料 100~120g
●熔成リン肥 10~15g
畝を立てる
溝施肥したところに、15cmほどの高めの畝を立てる。
ココが決め手!
つるがよくのびるので
2m四方の場所を確保する
カボチャは、つるを地面の四方にのばして生育する野菜です。そのため栽培スペースとして、2m四方は確保しておきたいところ。十分な広ささえあればやせた土地でも栽培できますが、狭い畑ではほかの野菜を育てるスペースが少なくなってしまいます。狭い畑で多品目の野菜を育てたい方には不向きです。
(1)植えつけ
畝の中央に植え穴をあけて苗を植え、周囲に土ですり鉢状の水鉢をつくり、仮支柱を立てて誘引してから水をたっぷりとやります。畝をワラでマルチングし、防虫ネットを張ります。
苗を植え水鉢をつくる
畝の中央に苗を植え、すり鉢状になるように、周囲に土を盛って水鉢をつくる。
▼水鉢
水鉢とは、水をためるために土で囲いをつくったもの。水切れしないよう、たっぷり水をやりたいときにつくる。
仮支柱を立てて水をやる
長さ50cmほどの仮支柱を2本、茎をはさんで交差させ、地中に半分以上をさし込んでしっかり固定する。水鉢にたっぷりと水を注ぐ。
ワラでマルチングする
のびたつるが土に直接触れないよう、畝全体にワラを敷き込む。風で吹き飛ばないようにひもを渡し、畝の端にUピンでとめて固定する。最後に畝全体に水をまいて、ワラを落ち着かせる。
防虫ネットを張る
トンネル用の支柱を2本交差させて骨組みにし、防虫ネットを張ってすそに土を盛って固定する。苗が害虫に食われるのを防ぐのに効果的。
(2)摘心
本葉が5〜6枚ついたら親づるの先端をカットし(摘心)、わき芽をのばして子づるにします。
(3)整枝
子づるがたくさんのびて、防虫ネット内が込みあってきたら防虫ネットを撤去し、元気な子づるを3本選んで残し、ほかは元から切りとります。
重要!
茎をUピンで地面にとめる
茎を傷めないために、Uピンが茎にぴったりと接しないよう、遊びを持たせておく。
勢いのいい子づるを3本残し、ほかの子づるはハサミで切り落とす。残した勢いのある子づるは、広げて三方向へのばし、Uピンをさして茎を地面に固定する。
(4)追肥、中耕
子づるの整枝と同じタイミングで、1回目の追肥をします。畝の周囲にまいて軽く耕します。
追肥をする
子づるを整枝したあと、畝の周囲に均一に有機配合肥料をばらまく。地中の根は四方に広がっているので、株元ではなく畝の周囲にまくのがポイント。
追肥 1平方メートルにつき
●有機配合肥料 40~50g
中耕する
クワで耕して土に混ぜ込み、畝を整え、水はけをよくする。
ココが決め手!
つるボケに注意! 肥料は控えめに
カボチャは旺盛につるをのばして大きな果実をつけるので、肥料が多く必要と思うかもしれませんが、与えすぎるのはNG。肥料を与えすぎると、茎葉ばかりが元気に茂って、一向に実がつかない「つるボケ」の状態になってしまいます。株の状態を見ながら、適切なタイミングで与えるのがポイントです。
(5)人工授粉
13節目(13枚目の葉のところ)に黄色い花が咲いたら、人工授粉をします。カボチャには雌花と雄花があるので、雄花を切りとって花粉を雌花の柱頭に軽くこすりつけます。
▼雄花と雌花の見分けかた
雌花には花の下に丸みのある子房がついている。雄花には子房がない。
花粉を確認する
雄花を切りとり、雄しべに花粉が出ているか指で触れて確認する。
重要!
午前9時までに行う
開花後、時間がたたないほうが花粉の状態がよいので、早めに行う。
受粉させる
雄花の花弁(花びら)をとって雄しべを出し、雌花の柱頭に花粉をしっかりこすりつける。
(6)摘果、実の保護
1株につき、収穫する実は4〜5個にとどめることが、味のよいカボチャに仕上げるポイント。実が多くついているときは、小さいうちに切り落とします。これを摘果といいます。また、実が地面に直接つくと傷む原因になるので、残す実の下にはもみ殻を敷いて保護します。
摘果する
健康状態のよい実を4~5個選び、ほかの小さくて色つやの悪い実は、ハサミで切り落とす。
もみ殻を敷く
残した実の下にもみ殻を敷き、ふかふかにして実を保護する。もみ殻がないときには、敷きワラなどで実が直接地面につかないようにする。
(7)追肥2、中耕
三方にのびた子づるは、土に接したところから根をのばして養分をとるので、13枚目の葉の手前部分に追肥をします。
追肥 1平方メートルにつき
●有機配合肥料 40~50g
13枚目の葉の手前に有機配合肥料をまいて追肥し、クワで耕して土に混ぜ込み、畝を整える。
(8)整枝、玉返し
カボチャは生育旺盛で、ぐんぐんつるをのばします。隣の畝まで侵食し始めるほどになったら、カボチャの畝の空いている場所につるを戻して誘引し、Uピンでとめます。のびすぎた茎葉があれば、切りとって整枝しましょう。また、実全体に太陽の光が均一に当たるよう、ていねいに何度か実の向きを変える玉返しをします。
つるを整える
畝からはみ出したつるは、スペース内に戻してUピンでとめる。込みすぎている部分があれば、切って風通しをよくする。
実の向きを変える
実をそのままおいておくと、太陽が当たらない裏側は色ムラができてしまう。実が未熟なうちにときどき返して向きを変える「玉返し」をし、全体に太陽の光を当てるようにする。
(9)収穫、追熟
茎葉が全体的に黄色くなり、近くの巻きづるが枯れ、カボチャのへたがコルク状になって白い筋が入ってきたら、収穫のタイミングです。ハサミで切りとりましょう。カボチャは収穫後すぐより、追熟させた方がよりうまみが増します。直射日光の当たらない涼しい場所で、約2週間おいてから料理に使いましょう。
保存&おいしい食べ方
マッシュ状にして冷凍保存する
丸のままの状態なら、冷暗所で1〜2カ月ほど保存できます。切ったものは、傷みやすいタネとワタをとり除き、ぴったりラップをかけて冷蔵庫へ(4〜5日保存可能)。冷凍するなら、加熱して実をつぶしてマッシュ状態にするのがおすすめ。保存袋に小分けにして冷凍すると便利です。
常温保存:1〜2カ月
冷凍保存:1カ月
カボチャのマッシュは
コロッケ、サラダからスイーツまで
マッシュ状にしたカボチャは、コロッケ、サラダ、ポタージュスープなどのほか、プリン、パンケーキやパウンドケーキなどスイーツの素材としても重宝します。
なお、本稿は『達人が教える!農家直伝 おいしい野菜づくり』(永岡書店)から一部を抜粋して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※㉖「初心者向けの果菜類 ピーマンの育て方」の記事もご覧ください。