昨年は、在宅勤務元年だったと言えましょう。自宅で仕事ができるパソコンを求める人が増加し、PCメーカーは好調でした。在宅勤務はアフターコロナでも「続く」と、日本HPはいいます。今回の事業戦略発表会では、今後私たちが在宅勤務を継続していくために重要となるポイントが語られていました。是非参考にしてみてください。
テレワークでPCメーカーが好調
昨年は、在宅勤務元年。日本も、世界も旧弊な仕事術からの脱皮を図る必要が出てきました。特に出てきたのはテレビ会議・web会議。一挙に主流になりました。メディアの取材もネット越しが多くなっています。ストリーム動画の再生には、マシンにもそれなりの能力が必要。このために、PCを買い換えた人も多かったようです。このためPCメーカーは好調と言われました。そして、在宅勤務二年目となる今年、PCメーカーはどう動くのでしょうか? 何が流行るのでしょうか?
先日行われた、日本HP社の事業戦略発表から、在宅勤務に対しPCメーカーが、どんなところがポイントだと思っているのかをまとめてみました。
「日本HP」は在宅勤務をどう考えるか
かなり懐かしい概念で、「SOHO」というものがあります。「スモールオフィス・ホームオフィス」の略ですが、単純にいうと「自宅に仕事場を持ちましょう。」ということです。
書斎でもいいのですが、日本は狭いこともあり、基本的に家で仕事をするようにはできていません。部屋は子どもに占領されていますし、テーブルで仕事など始めると、昔は可愛かったはずのお嫁さんから「掃除の邪魔になる」からとスティック型掃除機で、足元をウリウリされることでしょう。その上、多くの場合、家族個人個人の生活パターンが合わないと思います。家族団欒の夕食まで、テレビ一つ見るのも、至難の技。家族不和に陥りそうです。そういう意味では、家族で話題にできる「鬼滅の刃」、よくぞ流行ってくれましたという感じですね。
しかし、ガチで在宅勤務をするとなると、いろいろなモノが必要です。まずは、能力の高い「パソコン」、「光回線」、「Wi-Fiシステム」、そして「プリンター」。それに長時間座っていられる「椅子」。小さいながらも資料置き場なども必要です。
日本HPは、上に挙げたものを、光回線、Wi-Fiシステム以外、全部持っています。日本HPは、今年をどう考えているのでしょうか?
コロナ前に戻ることはない
今は、いわゆるコロナ禍に当たるわけなのですが、コロナが一段落すると以前の状態にもどるのでしょうか?
日本HPはないといいます。私もそう思いますね。
ネットで、どこにいても繋がる時代がくると、仕事はどこでやっても良いわけです。いわゆる「ノマドワーク」と言うやつです。ただし、これ隙間時間を、それに使うのならいいのですが、実は、かなりモバイルに長けたシステムを持たないと、思うほど効率が上がるものではありません。
例えば、私の仕事は「文章書き」がメインです。参考資料をいくつも開いたりする必要があるので、小さなノートブック、タブレットでは能率が悪いのです。欲しいのは、大画面ディスプレイに手のサイズにあったキーボード、そしてマウスです。このため、通常は大画面ディスプレイに、ノートPCもしくは、デスクトップPCをつなぎ、やってきました。今は、映像編集の機能もと考え、メモリーを大量に搭載したディスクトップを使っています。このように、使用PCと周辺機器は、自分の仕事の質で随分変わってきます。
そして書いたものをチェックするためのプリンター。私は安価なカラーレーザープリンターを愛用しています。インクジェットだと、インクの取り替えがこれでもかと言うほど多く、情けない気持ちになったからです。このため、写真以外はレーザープリンターが定番です。(写真印刷のためにインクジェットプリンターも残しています。)このように、家で仕事するには、自分の仕事にあった機材を揃えなければならないというわけです。どこで仕事をすることになっても、お金を稼ぐと言うことは「プロ」ですから、効率よく稼ぐのは当たり前。
今年こそSOHO元年であれ!
しかし、そんな視点で2020年を振り返ってみると、やはり考えが甘かったと言うか、実際に売れたPCは、一時しのぎ、会議できればというPCが売れたようです。台数が必要なので、最低スペックでというのは、会社の基本方針ですが、会社のシステムは、そのPCでも成り立つ様に組まれており、コロナ禍のように会社のシステムから離れてと言うのとは、大きく違います。自分の仕事は、自己責任になりますので、この辺りのチョイスは十分、考えてしてください。SOHOというのは、会社の出張室を自宅に設けるのではなく、自宅オフィスで稼ぐと言うことです。
このため、今までの様に、見た目もカッコいいPCというより、質実剛健。壊れず、トラブらず。どんな時にでも、最高のパフォーマンスでサポートしてくれるPCに、移行するだろうと言うことです。案外、デスクトップの復権は、あり得る姿かもしれません。高性能PCのあり方もいろいろあるというわけです。
日本HPがあげたポイント「2つの持続性」
次に日本HPがあげたのは「持続性」です。これは会社のあり方を含め2つあります。
1つは、「仕事への没入」、「長時間集中が可能な」環境です。会社は、全員仕事をしていますので、自分も同様の仕事がしやすい環境です。スマホいじりにも制約がありますし、むやみにいじっていると注意されます。が、在宅勤務は、基本勝手です。しかし集中(没入)しないと、よい成果は挙げられません。特に単位時間当たりの、仕事量は重要です。この没入感を作り出すには、どうすれば良いかが問われます。
PCでいうとディスプレイサイズと、使い心地が最も重要です。ただ、日本HPは、長時間使うことが前提のゲームPC、楽にネトゲ(ネットワーク・ゲーム)ができるものをすでに発売しているのでそのノウハウはあるわけでうす。
もう1つは「地球への負担」を考慮することです。20世紀はエコはお金になりませんでした。が、21世紀は、もうそんなことは言えません。大気汚染、水汚染、マイクロプラスチック、資源枯渇、食糧不足などが目の前に迫っています。今の段階では我関せずの、中国、インド、パキスタン他の中小企業も、避けては通れなくなる人類共通の課題です。人類は、産業革命以降のすごい短期間で、数億年分の太陽エネルギーを貯蔵した地下資源(石炭、石油など燃える資源は、基本生物だったものが変化したものです。生物は食物連鎖状、太陽エネルギーと言えます。)を使い果たしているわけですから、富むのも当たり前です。しかしながら、当然のことながら、短期間というのは負荷も大きい。将来、メジャーな動物で生き残るのは、人間とゴキブリと言われてもうなずける話です。
エコ設計の製品を、積極的な購入してもらえるよう、日本HPは頑張っています。オーシャンバウンド・プラスチックを積極利用したPC。製造時の温室効果ガスの削減。梱包材をプラスチックからパルプモールへ変更するなどなど。地球にやさしく、それ故に支持されるメーカーになろうと考えています。これも重要なポイントです。
あと、プリンターもそうですね。家庭用ということは、基本A4。A3など扱いにくい紙は基本淘汰されるでしょうね。本来ならペーパーレスで何でもするのがいいのですが、クリエイティブ作業の見直しは、ほとんどの仕事がペーパー出力して修正したほうが楽です。エコと質とどちらを取るのかは、微妙なところがありますが、いろいろな意味で、「持続性」が問われます。
鍵はセキュリティとアフターサービス
2020年の在宅勤務導入時に、多くが揉めたことの一つに「セキュリティ」があります。しかも、これが結構アップデートされます。どうこなしていき、自宅システムを維持していくのは、在宅勤務を導入する企業にとって、新たなる負荷としてのしかかりそうです。
また、作成データの所有権は会社にあるとして、クラウドを積極利用しなければならないこともあります。一見、安心できそうなクラウド利用ですが、サーバートラブルというのはあります。また、通信環境が悪いと、データの出し入れができなくなることもあります。また、OSなどが変わると、結構ついていけなくもあります。
このサポートがしっかりできている、できていないで、トラブル時の時間ロスが大きく違ってきます。日本HPは、サポート強化していくそうです。ただ、これは「良い」となるとリピート買い、新規買いにつながる反面、力を入れ過ぎると人件費が死ぬほどかかります。ここは工夫が大切です。
アップルは、修理はネットで対応する一方、アップルストアで相談できます。これが実に便利。PCではありませんが、iPhoneが立ち上がらなくなった時、街の修理屋で手に負えなかった故障を、症状を聞いてモノの5分で元の状態に戻してくれたのは嬉しかったです。(街の修理屋を優先させたのは、X’masシーズンで、相談枠が空いていなかったため)
在宅勤務は、こういうトラブルとの戦いでもあります。
最後に
コロナで在宅勤務が増えると、(1)PCの必要パフォーマンスを見直す、(2)持続的に仕事できる環境を整える、(3)アフターサービス、特にトラブル対応が充実していることがポイントであることがわかります。
(1)を軽視すると、能率が上がりませんのでイライラします。(2)を軽視すると、終日仕事にならない可能性があります。(3)は、武器を持たない侍と同じですから、仕事になりません。
某国政府が言うほど、あっさりできる話ではないのです。(だいたいミーティング記録を、ほとんど残さない仕事スタイルの人に、言われても仕方ないのですが…)
個人的な経験からいいますと、(2)の難易度がかなり高いです。今から在宅勤務される人は、このあたり十分切り分けて対応してください。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。