【花壇づくり】おしゃれな花壇の作り方とおすすめの草花 多年草と一年草のバランスがポイント

暮らし・生活・ペット

小さな庭をつくる楽しみは何といっても庭の植物から四季の恵みを感じること。草花を身近に親しむのにおすすめの「花壇」と「植物ローテーション」のコツをしっかりと伝授します。【解説】戸倉多未子(ガーデナー)

著者のプロフィール

戸倉多未子(とくら・たみこ)

有限会社グレイスオブガーデン代表。ガーデナー。暮らしを豊かにする緑の庭づくりをモットーに、小さな庭からエクステリア、ガーデンリフォームまでオリジナルガーデンを手がける。化学肥料に頼らない、自然の恵みを生かした庭づくりを得意としている。ガーデニング講師歴30年、ガーデニング関連の雑誌などでも活躍中。
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本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。

イラスト/あらいのりこ

1年中草花を愛でるなら花壇がいちばん!

花壇は、空間が限られた小さな庭づくりに欠かせない存在。植物が育ちやすく、庭のフォーカルポイントになってメリハリをつけてくれるとともに、草花をイキイキと見せてくれます。

草花の手入れがしやすく小さな庭にまとまりが生まれる

草花を身近に親しむスペース、それが花壇です。おすすめはレイズドベッドと呼ばれる少し高さをつけた花壇。地植えよりもたった10cmほど高くするだけで、水はけや日あたり、風通しもよくなります。

もう少し高さをつければ、草花の美しさを目線に近い高さで楽しむことができます。加えて、腰を低く屈めなくてもよくなるので、水やりや花がら摘みなど日常のお手入れが手軽にできるのもメリットです。

素材や形は、庭のスタイルに合わせてデザインするとよいでしょう。

コッツウォルズストーンを重ねて、雰囲気のあるレイズドベッドをつくりました。水をよく吸収する石なので時と共に苔むして、草花と調和します。植栽は黄色い新芽が素敵なカシワバアジサイリトルハニーを中心に。

地面に敷き詰めたレンガを部分的に抜いて円形の花壇に。どの方向からも見られる四方見の花壇は中心を高く、外側に低い草花を選ぶとバランスがとれます。また、中心部分は手が届きにくいので、手入れのいらない多年草に、花がら摘みなど手のかかる一年草の季節の花は、縁寄りに植えるのもコツです。

奥行き90cm、高さ30cmほどの花壇。奥に高さのある植物を植え、手前に向かって低くなるように。さらに花壇のすそにもカラーリーフやグラウンドカバーを入れ、花壇と地面を自然につないでいます。ナチュラル感を演出する花壇テクニックのひとつ。

花壇のデザイン、素材はスペースとムードに合わせて

壁際20cmの花壇

壁際に仕切りだけでつくった幅20cmほどの花壇。シュラブローズの間からビオラやキンギョソウが顔を出す、道路からも愛らしさが伝わる植栽になりました。

美容院の窓際に

大きめの板石で構成した直線的な花壇。カラーリーフとやさしい表情の草花の植栽でフォーマル感をやわらげました。

二段重ねの個性派花壇

大小のレンガの花壇を二重に重ねた、目を引くデザインです。植栽はカラーリーフと白い花でシックにまとめています。

レイズドベッドはメンテナンスもラクラク

高さ70cmのレイズドベッドは、リビングから揺れる花姿が見られます。

玄関前のさりげない草花スペース

仕切りが際立って草花が映えるレンガを縦にさした花壇。

“日なたの花壇”の春夏秋冬花いっぱいの1年をかなえるコツ

日あたりのよい場所には、花つきのよい植物が育ちます。手間をかけずに1年中美しい花壇をつくるにはどうすればいいのか? 同じ花壇での季節の移ろいを追ってみましょう。

多年草と一年草のバランスがカギ 最小限の手間で花いっぱいの花壇が

花を絶やしたくないからと、季節ごとに植え替えていたら、花壇の世話に追われてしまいます。長く花壇を楽しむには、手入れの手間と見栄えのバランスを考えて、植える植物を決めるのが大切です。

具体的には、花は少し地味だけれど一度植えたらそのまま数年は楽しめる多年草を7〜8割、1年で終わるけれど華やかで季節を感じられる一年草を3〜2割の割合で組み合わせるのがポイントです。

花壇の見所の季節はやはり、多くの植物が花をつける春先。思い立ったらいつでもはじめられる花壇ですが、春先に充実させるなら、晩秋に準備することを心がけましょう。

草花を1年中楽しむためのポイント

(1)花壇のベースは、1年中植えっぱなしでOKの多年草を選びます。
(2)背の高い植物、形の違う植物など多様な草花を組み合わせます。
(3)色合わせは、同系色のグラデーションだとまとめやすいでしょう。

植栽図

前後左右どこから見ても形になる四方見の四角い花壇です。中央に背が高めの植物を並べ植えてから、まわりを埋めるように植物を配置します。横に広がるような植物のまわりは少しスペースをあけるようにするのがポイント。

植えたて

花壇というと同じ種類の花を並べるイメージを持っていませんか。ナチュラルな花壇を育てるには、できるだけ多様な草花を組み合わせて、同じ色、形の葉は避けて変化させましょう。

植えて10日後

春から初夏にかけては色どり豊かな花から爽やかな緑への変化を愛でて

ハーブ類はよく育つので、花壇にボリュームを出したいときに。

斑入りの葉やカラーリーフを混ぜると花壇にメリハリが出ます。

可憐なミニバラも花つきがよく大きくなりすぎないので、ぴったりです。

背の高い植物は風に揺れる花姿も見どころ。

花壇を反対側から見たところ。縦に伸びる植物でスッキリ見えます。

植えて70日後

春から初夏にかけて、草花はぐんぐん生長します。アスペルラ オリエンタスや宿根リナリアの花期が終わっても、インカルビレアやミニバラの花は残っています。

春の日なたの花壇

2~3月には秋に植えたパンジーやビオラが大きく育ち、4月のチューリップなどの球根植物の開花を経て、5月には宿根リナリアなど背が高めの多年草や、一年草が花をつけます。
春の植物たちは生長するためにも水を欲しがります。土の表面が乾いたらたっぷり水をやりましょう。

植栽図

ルドベキアが花期を迎え、春から育った草花を切り戻してできたスペースに、エキナセアやセンニチコウなど秋まで咲いてくれる花を追加。

横から見た花壇。春からのルドベキアやアンゲロニアが大きく育ちました。

夏の日なたの花壇

夏にはエキゾチックな花や、強い日差しに負けないビビッドな花色の植物を入れても素敵。
暑さと湿気で、植物にとってももっともつらい夏。できれば梅雨の前に、茂りすぎたり伸びすぎた枝は切り戻し、夏の蒸れを予防して!
春から秋にかけて咲く花期の長い植物には、2週間に1回程度、液肥などで追肥を。

POINT
植え替えタイミングでメンテナンスすると楽チン

日なたの花壇での草花の生長スピードは驚くほどです。季節が切り替わる頃を目安に切り戻しを行い、できたスペースにその季節の苗を入れるのがよいでしょう。切り戻しは、生い茂った枝を持ちあげて内側から、思い切って切るのがコツ。

切り戻した枝がドッサリ!

背が高くなった茎は、支柱で支えましょう。

また、切り戻しは、草花がより生長し、新たな花をたくさんつけるためのもの。思い切ってカットしてOK! ただし、根元に出ている新芽は残すようにするのが枯らさないコツ。

植栽図

枯れた一年草などを根も含めてとり除き、伸びた枝は切り戻ししてから、あいたところに冬の間咲き続けるノースポールやウィンターコスモス、春まで株を育てたいパンジーの苗等を入れました。

ふつうのシクラメンより小ぶりで、小さな花壇になじむガーデンシクラメン。秋に植えてから春先まで楽しめます。

日なたの花壇なら翌年まで咲き続けるウィンターコスモス。

秋の日なたの花壇

残暑が過ぎゆき、花壇も落ち着きを取り戻します。枯れた一年草は抜き、茎が枯れた多年草は根を残して片づけましょう。
花壇のサイクルを年単位で考えると、そのサイクルが終わるのが11月頃です。本格的な寒さが来る前に、冬越しの準備、翌年の春へ向けての準備をはじめて。

植栽図

夏に植えた一年草のペンタスをとり除き、華やかなアネモネを3か所に植えつけました。寒い冬の間白い花を咲かせ続けるイベリスに加えて、春先に花をつけるムスカリの芽出し球根も植えています。ムスカリは早く植えすぎると、葉が伸びすぎて見栄えが悪くなるので、12月末頃に植えるのがおすすめ。

大きな株に育ち枯れたペンタスを思い切って抜いて。

宿根リナリアやオレガノ ケントビューティーなど春に植えた多年草は、冬芽が出ているのを確認して切り戻します。

反対側から見た花壇。

冬の日なたの花壇

初冬から2月頃にかけては、多くの植物が休眠状態に入るので、生長もごくゆっくり。枯れる恐れがあるので、切り戻しは避けるのが安心です。
パンジーやアネモネなど冬咲きの花には追肥を。
冬は春から夏ほどの水やりは不要です。秋から少しずつ水やりの間隔をのばして、冬越しに備えましょう。

小さな庭の植物カタログ日なたの花壇に植えた主な草花

花壇が華やぐ花

穂状の形状で下から徐々に開花し、上の花が咲き終わるまでに長い期間がかかるので、一輪を長く楽しむことができる。品種によっては、銀白色の厚みのある葉が美しいものもある。高温多湿の蒸れに弱いので、水はけと風通しをよくして育てて。

種から育てることができます

花茎の頂点に青紫色の筒状の花を密集して咲かせる。放射状に広がる細長い葉が特徴的。高温多湿に弱いため、水はけのよい環境で育て、花がら摘みをまめに行うと花を長く楽しめる。花がら摘みは、変色した花を引き抜くようにしてとり除く。

かわいらしい花姿が人気で、春に加えたいお花です

濃い黒紫の茎で、初夏から秋に長い穂を出し、青紫の小花を多数咲かせる。花数が多く、宿根性のサルビアの中でも花が美しい種類とされている。密集させて咲かせるとひと際存在感を放つ。花期も長く、丈夫で育てやすい。

宿根草の人気者。秋にはしっかり切り戻しましょう

花壇に立体感が出る草花

まっすぐ伸びた花茎の先にピンポン玉大の明るい黄色の花をつける。見た目にも珍しく、鮮やかな花は切り花やドライフラワーにしても。日照不足になると花つきが悪くなる。乾燥を好む日なたに最適の植物。

水はけをよい場所で育てると毎年咲きます

最盛期には鮮やかな黄色の小花を、株を覆うように咲かせる生育旺盛な花。草丈が高めなものの、切り戻すと背丈を低く咲かせることができる。水はけのよい場所で育てる。水はけの悪い場所では、土に腐葉土を混ぜるとよい。

毎年夏に明るい花を元気に咲かせてくれます

春から夏に甘い香りを漂わせる、金魚を連想させる愛嬌のあるふっくらとした白い花を咲かせる。エレガントな印象のシルバーリーフは、この品種ならでは。寒さに強く、-10℃まで耐えられる。多湿に弱いため乾燥気味に育てるとよい。

切り戻すことで株が大きくなり、花数が増えます

花壇で長く花を楽しめる草花

茎の上部、葉のつけ根に次々と蕾をつけ、初夏から秋にかけて穂状に花を咲かせる。品種によって草丈が異なるので、植える場所に合わせて選べば立体感を出すことができる。花を長期間咲かせるには、肥料切れと乾燥に注意すること。

花期が長く、初夏から秋まで楽しめます

小花がこんもりと咲くかわいらしい花姿が、春から秋まで長い期間花壇を彩る。暑さには強いものの、蒸れに弱いので、日あたりがよい風通しのよい場所で育てるのがおすすめ。本来低木だが、小さく改良されたものが多く、八重咲きタイプや大きく育つ品種もある。

斑入りの葉がおすすめです

花壇を埋める草花

ピンクがかった薄緑色の苞の中から、ピンク色の愛らしい花をのぞかせる多年草。日陰に置くと、苞がピンク色に色づかず、緑色になる。冬に地上部が枯れても、根が凍らないかぎり、春に新芽が出る。土が凍る場合には軒下で管理を。真夏は半日陰へ。

冬を越して、毎年かわいらしい花を咲かせます

細かく枝分かれしてこんもりと茂った銀色の細長い葉がサンゴのように見える。初夏には丸い頭花が集まって咲く。高温多湿に弱いため、日あたりと水はけのよい場所で育てる。耐寒性が強く、-15℃になる寒地でも冬越しできる。

防虫効果があり、ほかの植物の虫よけにもなります

季節を彩る素敵な花

センニチコウ
ポンポンのような形の花(正しくは苞)が、夏の間花壇を彩る。一年草として楽しむのが一般的。

エキナセア
夏の花壇で存在感を発揮する。中心部分が盛り上がった花姿も個性的。

ノースポール
かわいらしい小キク。秋に植えつけたら、冬を越して5月頃まで花をつける。株が育った春先に切り戻しを。

アネモネ
寒さに強い、キンポウゲ科の多年草。晩秋~初冬にかけて花苗を植えると、春先まで冬の花壇を彩る花として重宝する。

なお、本稿は『小さな庭のつくり方』(永岡書店)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。

草花で素敵に彩る 小さな庭のつくり方
¥1,320
2021-03-03 16:04

※(3)「「小さな庭の欠点克服アイデア」」の記事もご覧ください。

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