【伸びためん類】真の勝者はカップ麺か中華麺か うどんかそばか めん類「名産・特産・本場」表示基準も紹介

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コロナ禍で消費が伸びた食品として、麺類を挙げることができます。テレワークが推奨され、学校も休みが増え、3食とも家で食べる人が増えました。麺類は“ちゃちゃっと”作れるので我が家でも大活躍しています。ラーメン、うどん、そば、パスタ等々、麺の種類も具材もいろいろ。温かくも冷たくもできるので、飽きずに食べられ重宝しますよね。そんな麺類の消費動向を探ってみました。みんな、どんな麺類を食べているの? さらに美味しく食べるコツも伝授いたしましょう。

家庭の主食に、麺類が急浮上!

図表(1)は、2020年の「家計調査」から世帯当たりの食料全体の支出額とコメ、パン、麺類、主食的調理食品(弁当、おにぎり、折詰め寿司、サンドイッチなど主食となる調理済み食品)への各支出額の実質増減率(前年同月比)の推移を表したものです。

食料全体の支出額がほぼ前年並みだったのに対して、麺類への支出額は、1月こそ前年並みでしたが、2月以降は前年を上回っています。特に、緊急事態宣言の出された4月は前年より約36%も増えました。この当時、スーパーマーケット等の店頭でカップ麺などが急に品薄になったと感じた人もいるのではないでしょうか。

コメの支出額も、麺類ほどではありませんが、やはり前年より増えました。緊急事態宣言によって外出を控えて家庭で食事を摂る機会が増えたためでしょう。

しかし、パンや主食的調理食品への支出額は前年並み程度です。パンへの支出額は2020年3月以降、11月まで前年を下回りました。主食的調理食品は、外出時にコンビニ等で購入される機会も多いためか、緊急事態宣言でオープンする飲食店が減った2020年5月、「Go To イート」キャンペーンが始まった9月と10月に支出額が前年を上回りました。

こうした主食への支出動向は、実は昨年に限ったことでした。長期的スパンで見ると、様相が変わってきます。

家庭の主食を支える調理済み食品

図表(2)で、20年前からの主食への支出額の推移をみると、最も伸長しているのは主食的調理食品であることが分かります。しかも、図表(2)の❶のように、20011年以降に急増しています。

主食的調理食品は、先述したように弁当、おにぎり、折詰め寿司、サンドイッチ(調理パン)など主食となる調理済み食品のことです。コンビニでよく見かけるパッケージ入りの調理めん(うどん、そば、パスタなど)も含まれます。そのまま、すぐに食べることもできるため「即食性」の高い商品という言い方もされます。

一方、2000年時に支出額が最も多かったのはコメでしたが(図表(2)の❷)、2010年代前半にパンに抜かれ(図表(2)の❸)、昨年の麺類への支出額の上昇で(図表(2)の❹)、麺類にも抜かれそうな状況です。いまや、主食的調理食品への支出額の半分程度となってしまいました。これが、この20年の軌跡です。

麺類は、この20年ほぼ一定の支出額でしたが、昨年に急増しました。コロナ禍の影響によるものだとすれば、コロナの今後の行方に左右されるのかもしれません。

その麺類について、もう少し詳しく、分類別に支出額の動向を見たのが図表(3)です。昨年には、すべての分類で支出額が上向きました。いろいろな種類の麺が購入されたことが分かります。

家庭で麺と言ったら…カップ麺!?

ただし、麺類のなかで「カップ麺」だけは昨年以前から支出額が急増しています。

カップ麺への支出額は、2005年時には「乾うどん・ぞば」と同じ年間3000円ほどでした。その後、乾うどん・そばへの支出額が減っていくのに対して、カップ麺への支出額は増え、2015年に「生うどん・そば」、翌2016年には「中華麺」への支出額を抜いて、いまや断トツの1位です。

麺類への年間支出額でも、5000円を超えるのはカップ麺だけ。麺類への支出額に占める割合も約3割に上ります。

と、ここまで見て「えっ、カップ麺そんなに買ってたっけ?」と思われた方もいらしゃるのではありませんか?「うちでは、うどんやそば、ラーメンだって、ゆでて調理しているけど…」という方も多いのではないでしょうか?

その疑問、図表(4)を見ると解けます。麺類への支出額では約3割を占めるカップ麺ですが、購入量では1割強ほどです。購入量でみると、最も多いのは、生うどん・そばです。支出額の割合は全体の2割にも届きませんが、購入量では3割を超えます。

購入量はグラム換算ですので、生うどん・そばは、重量の割には価格が安いことになります。逆に、カップ麺は割高ということになりますが、お湯を注ぐだけで食べられる手軽さ、便利さなどを含めて買っているとも言えましょう。

小麦粉の値上がり、気になる?

先日、この4月から小麦粉が値上がりするというニースが流れました。「あ~、また買いだめ…」と、昨年に買いだめした人も、しなかった人も心配になったかもしれません。

小麦粉は、家庭でも小麦粉として使いますが、麺類やパン、お菓子などの食品づくりにも使われますので、そうした食品も値上がりするでしょう。値上がりと聞くだけで、ネガティブな気持ちになります。私は、買いだめしようとまでは思いませんでしたが、食品棚を開けてストックの状況を確認してしまいました。

ところで、どうして小麦粉は値上がりするのでしょう?

国内で消費される小麦の約9割は輸入ものです。輸入される小麦は、政府が国際貿易を通じて購入しています。先のニュースをよく聞くと、「政府売渡価格」を引き上げるからだということが分かります。

政府売渡価格とは、政府が海外から購入した小麦を製粉メーカー等に売り渡す際の価格のことです。図表(5)のように、年2回(4月期と10月期)見直されています。今年4月、定期の見直しにより価格が引き上げられることになりました。

図表(5)から、昨年10月に引き下げ、今年4月に引き上げることが分かります。その引き上げ後の価格は、昨年4月とほぼ同じくらいです。さらに、長期的スパンで見ると、一昨年の4月よりは安価ですし、ここ10数年の価格動向を見る限りでは、決して高い水準にあるわけでもありません。

また、農林水産省では、昨年4月に一昨年10月からのの引き上げによる消費者物価指数に与える影響を0.003%程度と試算しました。今年4月は、昨年よりも少し引き上げ幅が大きくなりますが、消費者物価指数に与える影響は0.004%と試算しています。

小麦粉を使用した麺類の価格への影響はどうでしょう。農林水産省では飲食店で提供される(外食用)うどんと中華麺について、それぞれ1杯当たり0.3円増くらいになると見積もっています。こうして調べてみると、家計への影響は小さく、わざわざ買いだめに走るほどではないことも分かります。

より美味しく麺を味わうために…

コロナ禍による長引く“巣ごもり”生活でせっかく麺類を食べる機会が増えたのですから、より美味しく食べる工夫をしてみるのはいかがでしょう?

たとえば、下の表は「名産」「特産」「本場」などを表示できる生麺類ですが、現在、全国に10種あります。よく知られている麺ばかりですが、名産などの表示をするためには、それぞれ製造地域や原材料、製法などの基準をクリアしなければなりません。基準の内容は専門用語で説明されるところもあって、なかなか難解ですけれど、調べたり、訊いたりして、その理由を知って食べると、何も知らずに食べた時より美味しく感じられるようになるから不思議です。

人は味覚だけで美味しさを判断しているわけではなく、他の五感、場の雰囲気、そのときの気分、これまでの経験や知識など総合的に判断するので、味覚自体が美味しさに与える影響はさほど大きくないことが知られています。しかし、味覚は、経験や知識を積むことで鍛えることができます。いわゆる「ちがいがわかる」ようになるわけです。

とはいえ、プロではない私が最も大切にしているのは、食を楽しむ姿勢です。“ちゃちゃっと”つくれて便利なうえに、先述した麺類などをお取り寄せすれば、いつもの食卓が華やぎます。ご当地気分で楽しんでみてはいかがでしょう。

執筆者のプロフィール

加藤直美(かとう・なおみ)
愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。

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加藤直美(消費生活コンサルタント)

愛知県生まれ。消費生活コンサルタントとして、小売流通に関する話題を中心に執筆する傍ら、マーケット・リサーチに基づく消費者行動(心理)分析を通じて、商品の開発や販売へのマーケティングサポートを行っている。主な著書に『コンビニ食と脳科学~「おいしい」と感じる秘密』(祥伝社新書2009年刊)、『コンビニと日本人』(祥伝社2012年刊、2019年韓国語版)、『なぜ、それを買ってしまうのか』(祥伝社新書2014年刊)、編集協力に『デジタルマーケティング~成功に導く10の定石』(徳間書店2017年刊)などがある。

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