家電量販店を利用するとき、多くの人が気になるのが値引きだと思います。実際、値引きを求めてくる人は少なくありません。では、どんな商品でも値引き交渉は可能なのでしょうか。また、どのくらいの値引きが見込めるのでしょうか。家電量販店を上手に使うコツ、その3回目は「値引き」の話です。

値引き交渉が可能な商品は多いが、金額は大きくない

いきなり、結論を書きました。まず、大前提として店舗(会社)によって値引きに対する考え方が違います。また、商品によっても異なります。さらに、時期によって異なります。

しかし、ある程度の高額商品なら多少なりとも値引き交渉に応じてくれるのが普通でしょう。とはいえ、値引きができない商品もあるので、順に説明していきます。

値引きできない理由

会社による値引きに関する考え方の違い

地域にもよりますが、大手家電量販店として思い浮かぶのは概ね5社くらいかと思います。

この中には、「自分たちは適正な価格で販売しているし、その価格に見合うサービスを提供している。だから、なるべく表示価格で買ってほしい」と考えている会社もあります。一方で、「ポイント制度がない代わりに、その場で値引きに応じます」という会社もあります。また、表向きは値引きに消極的ながら、実際には値引きに応じている会社もあります。

家電量販店を選ぶとき、家から近いとか、車で行きやすいといった理由で特定の店だけ利用している人もいると思いますが、上記のような認識を持って複数の店舗で買い物をしてみると違いが分かるかもしれません。

逆に、複数の店を回って「あっちの店は、ここまで値下げすると言っていた」などと交渉している人も、各社のベースにある考え方を意識すると、より効率的に買い物ができるかもしれません。

値引きできない商品にもメリットがある

値引きできない商品は、大きく分けて2種類あります。

まず、単価が低い商品。たとえば、電池や電球といったもの。数百円の商品だと元々利幅が少ないし、わずかな値引き金額のために交渉するのは、お客様にとっても店にとっても効率が悪いですよね。同じ意味で、消耗品は値引きをお断りしている店舗も多いです。

もうひとつは、販売価格が固定されている商品。メーカーが販売店に対して販売価格を指定するのは法律で禁止されているのですが、実際にはメーカーと販売店の話し合いで販売価格(少なくとも表示価格)を固定している商品があります。

たとえば、ブランドイメージを大事にする海外メーカー、国内の会社でも独自の機能やデザインで個性的な製品を作っている新進メーカーなどです。また、大手メーカーでも一部の商品を販売価格固定にしている例があります。

こうした会社の製品は、どの店舗へ行っても同じ価格で売られています。また、国内メーカーの製品は一般に発売から時間が経つにつれて安くなっていきますが、こうした製品はいつ買っても値段が同じです。そのため、次に行ったとき値下がりしていてガッカリということがありません。

時期による価格の変動とキャンペーン

最後に、時期による変動。まず、前述のように国内メーカーの製品は、発売直後が最も高くて時間が経つと安くなっていきます。そして、次の製品が発表されると処分価格になります。この動きについては別の機会に書きたいと思いますが、こうした価格変動の中で値引きしにくい時期と値引きしやすい時期があります。

また、下取りキャンペーンやキャッシュバックキャンペーンといった施策が行われている期間は、実質的に安く買えるので、ほしい商品にキャンペーンが適用されていたら利用しない手はないですね。

また、他社が期間限定の安売りキャンペーンを行っているときは、たいていその価格に合わせてくれます。今は、各社ともそうした情報をよく把握しているので、すんなり「あ、いいですよ」となることが多いです。ただしこれは、あくまでも同じ規模の家電量販店か、そのネット通販部門が対象です。テレビ通販やネット通販専門の業者は基本的に対象になりません。

昔と違って、今は値引きできる幅が極端に少ない

では、どのくらいの値引きが見込めるかという話ですが、残念ながら今は大幅な値引きは難しくなっています。昔のように、3割引き、4割引きといったことはあり得ません。

大幅に値引きできるということは、表示価格にたっぷり利益が含まれているということです。簡単な話、5万円で仕入れた商品に10万円の値札を付けておけば、3~4万円の値引きも可能です。しかし、5万円で仕入れることができる商品なら、ネット通販では6万円以下で売っているでしょう。

仮に、ネット通販で58,000円の商品に10万円の値札が付いていたら、明らかに高いですよね。すると、その店にお客様が来なくなります。いくら「ポイントを付けます」と言っても無理でしょう。

そのため今は、家電量販店も最初からギリギリまで利幅を減らしています。実際のところ、私が扱った商品の中には、販売価格が数万円で店舗の利益が数百円というケースもありました。

もちろん、そうした商品ばかりだと店舗が立ち行かなくなるので、さまざまな工夫で店舗を維持するために必要な利益を得るようにしていますが、いわゆる白物家電は利幅が少ないものが多いですね。

なかには最初から「安くするなら買ってやる」という感じで極端な値引きを求める人もいますが、その場合、店舗側でも「ここまで譲歩してダメなら売らない」というラインを決めて対応することがあります。買う気があるなら、現実的なところで折り合いをつけるほうがいいでしょう。

値引き交渉は買う側にも負担や損失がある

世の中には、基本的に値引き交渉ができない商品交渉は可能だけどする人としない人がいる商品交渉するのが普通の商品があります

たとえば、新幹線の指定席やグリーン車の料金を駅の窓口で値引き交渉する人はいないと思います。ラーメン屋さんから高級レストランまで、飲食店で価格交渉する人も見かけません。

逆に、交渉するのが当たり前の商品としては、企業が導入する業務用の設備など金額が大きいもの。また、継続的に取引する原材料なども見積りを取って値段を決めます。個人でも、車や家などの高額商品は見積りを出してもらって予算とすり合わせるのが普通でしょう。

家電製品は、おおむね数千円から数十万円ですが、これくらいだと表示価格のまま買っていく人も少なくありません。実は、値引き交渉は買い手にとっても負担や損失があるのです。

交渉して値段を決めること相対売買(あいたいばいばい)といいます。昔は、これが普通でした。今でも海外では、ちょっとしたお土産品でも価格交渉する国があります。しかし、これだと値引き交渉を前提とした価格を提示する必要があるし、人によって支払金額が変わります。そして、何より買い物に手間と時間がかかります。

そのため、社会や経済が発展するにしたがって、こうしたムダを省いて効率を上げる方向に進化してきました。三越の元祖である越後屋が江戸時代に繁盛した理由も、それまで相対売買が常識だった呉服を正札販売にしたことだったそうです。つまり、値札を付けて誰でも同じ価格で買えるようにしたのです。

仮に、買いたい商品があって、3時間かけて複数の店舗をまわり、最終的に2,000円安く買うことができたとしましょう。その間に交通費を500円使いました。これは、時給500円のアルバイトをしたのと同じことです。かなり、効率が悪いですよね。

前述のように、値引き交渉をしないで表示価格で買っていく人も少なくありません。「そういう人は、お金があるのだろう。お金があれば値引き交渉する必要はない」と言う人もいるでしょう。しかし、お金があるから値引き交渉しないのではなく、社会のしくみを理解しているから時間やお金を効率的に使って、ますます豊かになっているように感じます。

まとめ

2021年に始まったNTTドコモの格安プランahamoは、ネット手続き専用にすることで価格を抑えました。店舗で手続きをサポートする場合は有料です。店を開けて、人が対応すれば、コストがかかるのです。

極端な値引きは店舗の利益を損ないます。利益が減ると、店舗は店員を減らします。すると、説明を聞きたいときも、値引き交渉したいときも、待ち時間が増えます。さらに利益が減ると、最終的には店がなくなります。そうなると、その店舗を利用していた人、みんなが不便になります。

また、店舗の売上が減ると、そこで働く人たちの給料が下がります。すると、その人たちが使うお金も減ります。この悪循環で、日本はどんどん貧しくなってきました。なんでもネットで調べることができる時代、家電量販店が必要以上の利益を取ることはありません。「あの店は高い」という評判が広まったら大変なので。

値引き交渉して安く買うことは、その時点では得した感じがします。しかし、自分だけ得をしたい(相手が利益を得るのは許せない)という気持ちで買い物をしていると、結局は自分を含めて社会全体が困窮します。そんなことをアタマの片スミに置きつつ、売る側も買う側も「ありがとう」と言えるのがいい買い物ではないでしょうか。

執筆者のプロフィール

文◆高山とほ(プロダクトライター)
長年にわたり家電量販店の店頭に立ち、いろいろなお客様に対応した経験から「それぞれのお客様にとって最適な製品を選ぶポイントを的確に伝える」ことをモットーにしているモノ派のライター。学生時代に工業デザインを学び、日本製家電の黄金期に郷愁を感じる世代。アウトドアを好み、道具にはこだわるほう。

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