季節家電を見ると不思議に思うことがあります。基本は隙間家電ですので、大手メーカーが手掛けないのは不思議ではないのですが、あまりにもすごい状況で、みんな儲かるのかしらと思う家電もあります。それが「流しそうめん機」と「そうめん流し機」。双方とも、なぜと思うくらい種類があります。日本はそんなに「そうめん」を食べましたっけ?
「流しそうめん」と「そうめん流し」の違い
「流しそうめん」と「そうめん流し」。言葉の前後を変えたものですが、これの意味はかなり違います。「流しそうめん」というのは、竹樋を作り、冷水を流します。その冷水とともにそうめんが流れてくる、そして箸ですくい食べる。あー、よくぞ日本に生まれけり!なんとも言えない清涼感があります。夏の風物詩でお馴染みの、観光地なら必ずある定番イベントです。流しそうめんの始まりは、昭和30年、宮崎県高千穂と言われています。
一方の「そうめん流し」は、テーブルの周りを流れる水流で食べるタイプ。「流しそうめん」が高低差を利用するのに対し、こちらは人工的に流れを作ります。発祥は、昭和37年、鹿児島県指宿市の唐船峡。1日10万トンも湧出する唐船峡の清水をアピールするためだそうです。
高地にある高千穂、平地にある指宿。出自が性格を表している様です。
流しそうめん機
代表はタカラトミーアーツ
「流しそうめん」機は、それを電動化したものです。毎年、ユニークな提案で、楽しませてくれるタカラトミーアーツが代表格でしょう。おもちゃメーカーらしく派手な演出(サイズ)と、テレビ番組「ピタゴラスィッチ」に出てきそうな、ユニークな形、色が知的好奇心をそそります。名前も「ビッグストリーム そうめんスライダー」。しかも、カスタム化できるとなると、不必要に頑張ってしまう。クリスマスのLEDイルミネーションの様な感じです。年に一度の季節のお祭り。
なくてもいいが、あるととっても楽しいイベント性を持つ。流しそうめんの気分を一番再現してくれているモデルです。この手の家電は片付ける時、ちょっと虚しくもあるのですが、それはイベントだからとも言えます。購入は気分次第という感じです。
そうめん流し機
代表はパール金属
一方、「そうめん流し」は、「流しそうめん」ほどのギミックはありません。どことなく地味です。しかし、その分、生活に密着したスタイルが要求されます。「流しそうめん」のようにハイになり、立って食べる様なことはないのですから。こんな時は、調理器具で名を馳せている「パール金属」のようなメーカーが適任です。特にそうめん流しは「水」を扱いますので、きちんとした品質が必要です。
代表は「流氷 しろくまそうめん流し器」です。こちらはじっくり機能を検証すべきですね。例えば、モーター音。そうめん流しは普通の食べ方に近いのですから、モーター音が大きいと嫌になります。
そういうところも「流氷 しろくまそうめん流し器」はバランスがいいです。名前の「しろくま」はスィッチに付いているフィギュア。色、フィギュア違いでペンギンもあります。氷山部分には、薬味のせが付いていますが、そんなに大きくはありません。付け合わせは別皿のほうがベターです。
いつでもどこでも「流しそうめん」ができる商品も発見!
タカラトミーアーツのカタログの中に、「流しそうめんPocket」というのを見つけました。
こちらは「そうめん流し」の動力部を商品化したもの。大きな器にセットして使います。大きな器はユーザーが用意します。しかし、これは結構いいですね。と、いうのは「そうめん流し」で最も場所をとるのは器部分。これが収納時に実に邪魔。他への転用もなかなかできません。この形態はありありです。
収納にも便利なのですが、もう一つは外に持っていってもいいこと。湯掻いて乾かしたそうめんは、のびず、水もたれない状態にしておきます。そして、大きな器さえあれば、どこでもそうめん流しが食べられるわけです。
そうめん愛に溢れた、こだわりのノリのいい商品です。
最後に
これ以外にも、いろいろなメーカーが趣向を凝らした流しそうめん機、そうめん流し機を発売しています。日本人の主食は、お米ではなくそうめんではないかと思うくらい多種多様です。
この家電を楽しむには、一にも二にもノリです。自分を揚げ揚げにすることです。あとは、自分のそうめん愛と相談してください。また中華細麺を流すなどのバリエーションを試すのも一興。
食欲の失せる気怠い夏を快適に過ごすための方法としてはいいように思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。