いま一番熱いホビーといえば「ドローン」だろう。おもちゃに分類される「トイドローン」ならば、誰でも所有できて気軽に飛ばすことができる。しかしドローンに対する規制が強化され、いま市販されているトイドローンの一部は、近い将来「業務用ドローン」に分類されてしまう可能性が大きくなった。今回は、規制強化後でもトイドローンとして楽しめる機種を紹介する
ドローンとはなにか
いまさら説明する必要もないかと思うが、ドローンは複数(多くの場合4つ)のプロペラがついた無線操縦(ラジオコントロール:R/C)の航空機だ。飛行能力的にはヘリコプターの一種と考えればいいだろう。
近年では空中撮影の主役となり、テレビの旅番組でもドローンが撮影したと思われる映像がふんだんに使われるようになっている。
ドローンは規制されている
ドローンは、原則として「航空法」により、さまざまな規制を受けている。これを無視して飛ばす(運用)することは違法行為となる。売っているものなら、どれでも好きなをものを買ってきて、そのまま飛ばす、というわけにはいかないのである。
業務用ドローンとトイドローン
ドローンには、大きくわけて2つの種別がある。簡単にいうと「業務用ドローン」と「トイドローン」である。業務用ドローンは、空中撮影や農薬散布などの産業に利用されるものを指している。対してトイドローンは、おもちゃに分類される。古くからあるラジオコントロール(R/C)の飛行機やヘリコプターと同類に扱われているものだ。
業務用ドローンは届け出が必要
業務用ドローンを運用するには、さまざまな届け出が必要である。国が定めた免許は存在ないが、メーカーが実施する講習を受講しないと購入できないという機種も存在する。また、飛行時には国土交通省に飛行許可の申請が必要となる。法律の厳密な理解も必要であり、趣味や遊びで飛ばすのは、まず無理と考えたほうがいい。
ドローンの規制や法制がどんなものかは、後述する「トイドローン」で遊ぶ人でも、目を通しておいたほうがいい。国土交通省のサイトに「無人航空機(ドローン・ラジコン機等)の飛行ルール」というページがあるので参照してもらいたい。
トイドローンは届け出の対象外
業務用ドローンは、事前に申請しなければ飛ばすことができないが、その規制の対象外となるドローンがある。それが「トイドローン」である。いわばおもちゃなので、基本的なルールやマナーを守れば、誰でも飛ばすことができる。
守るべきルールやマナーは
●公共空間で飛ばしてはダメ
●人が多い場所で飛ばすのはダメ
●プライベートなものが写ってしまう場所で飛ばすのはダメ
が基本と考えればいいだろう。
原則として私有地、つまり庭で飛ばすのが基本となる。詳しいルールについては「JRM日本ラジコン模型工業界」のサイトを読んでおくといいだろう。
規制はすべて屋外の話。屋内は規制対象外
業務用ドローンとトイドローンの分類や、それにともなう届け出などの規制は、すべて屋外を飛行させるときを想定しており、屋内を飛行させる場合は規制の対象外となる。そのため、屋内ならば無届けで業務用ドローンを飛ばすことも可能だ。業務用ドローンの操縦を習えるドローンスクールの多くが倉庫タイプの屋内スクールであるのも、それが理由である。
体育館など広い室内空間が確保できるのならば、規制は無関係となる。ちなみに室内の定義は、ドローンが絶対に屋外に飛び出さないことが条件となり、たとえばドーム型野球場の場合、閉鎖ドームである東京ドームは屋内扱いとなるが、野外球場に屋根を掛けたスタイルで屋外へ抜ける大きな隙間がある西武ドームは屋外扱いになるので、その点は注意したい。
業務用ドローンとトイドローンを分けるライン
業務用ドローンとトイドローンは、どんな基準で分類されているのか。飛行高度や飛行速度など細かい基準があるのだが、最もわかりやすい基準は飛行できる状態での機体の重量である。
現時点で、トイドローンは200グラム未満の機種が「トイドローン」に分類されている。
200グラム未満でイチオシの機種
DJI「Mavic Mini」
現行でトイドローンに分類される機種でイチオシとなるのは、ドローンメーカーのトップランナーで最大手となるDJIのトイドローン最新モデル「Mavic Mini」である。
重量199グラムと、規制枠ギリギリを狙った日本専売モデルであり、フルHDを超える2.7Kの動画撮影が可能。高価ではあるが、実質的に業務用ドローンの代替えとして利用できる本格派である。
自動ホバリング&自動撮影モードで初めてでもプロのようなカメラワークで撮影。
撮影した映像はDJI Fly アプリで簡単編集。豊富なテンプレートとBGMから選ぶだけなので、編集が初めてでも心配はいりません。
編集が終わったらタップ1回でSNSにすぐにアップして、家族や友達と作品を共有できます。
画像キャプチャ形式:MPEG
【飛行性能】運用限界高度 3000m (海抜)●最大飛行時間 18分(14km/h一定速度で飛行時/ 無風時)●13m/s(Sモード)、8m/…
【重要】ドローン規制が改正されそう
現行のドローン規制は、2015年の航空法改正により施行されたものだが、2022年施行を目指して内容が改正されそうだ。多くのメディアで改正について報道されている。
その内容は多岐にわたっているのだが、トイドローンユーザーにとって大きいのが業務用ドローンとトイドローンの境目が変わる可能性が高いことにある。
トイドローンが100グラム未満になる
2022年施行を目指している改正案では、業務用ドローンとトイドローンの境目となる機体重量が100グラム未満になる。これは航空法改正から5年以上経過して、200グラム未満のドローンでも、高性能化が進んで人がケガをしたり建築物が破損する事故が多発していることに起因する。より安全性を考慮してトイドローンを小さく・軽くしたいという思惑のようだ。
100グラム以上200グラム未満の機種に届け出が必要になる
改正が施行されれば、いまユーザーの手元にある100グラム以上のトイドローンも、業務用ドローンと同等の扱いを受けることになり、飛ばすのに届け出が必要となる。
業界団体やR/C飛行機、R/Cヘリコプターの愛好者団体が改正反対の署名を集める運動をしているものの、予定どおり2022年施行の可能性が高いため。室内飛行しかしないという場合を除き、いま初心者が100グラム以上200グラム未満のモデルを購入するのは避けたほうがいい。
2021年版ドローンの選び方
2022年のドローン規制の改正も踏まえて、これからドローンを始めようという人の最初の一台を選ぶポイントを上げていこう。
操縦モードは「モード2」がいい
ドローンの操縦は、専用の操縦装置か、専用アプリをインストールしたスマホで行うが、原則として左右の親指で2本の操縦桿(スティック)を扱うことなる。このとき右手で上昇下降を操縦するものを「モード1」といい、左手で上昇下降を操縦するものを「モード2」という。
モード1は古くからある日本のR/Cヘリコプターの操縦方法を踏襲したもので、日本独自のやり方。海外ではモード2が主流で、多くのドローン製品もモード2を採用している。モード1とモード2を切り換えられる製品も多いが、初心者はモード2を練習したほうが、機体を買い換えたときに対応しやすい。
カメラ必須!飛行時のリアルタイム映像が楽しい
ドローンは、すべての機種にカメラが付いているわけではない。トイドローンのなかにはカメラ未搭載の機種もあるし、静止画の撮影しかできないものもある。ドローンを楽しむには、飛行中にカメラがとらえた映像をスマホでリアルタイムに観ることができる機種を選ぶこと。いわゆる「一人称視点」(FPV)に対応したものがいい。
画質は720pが主流
100グラム未満の機種に限定すると、映像画質は1280ドット×720ドットの「720P HD画質」が主流である。例外的にフルHD(1920ドット×1080ドット)に対応した機種もあるが、飛行性能を無視して画質で機種選択をするのはやめたほうがいい。
屋外飛行なら少しでも重たい機種を
ドローンは、重たい機種ほど横風等に強く飛行安定性が高い。実質的に100グラム未満のトイドローンは、無風状態でないと屋外飛行は無理と考えたほうがいいだろう。さらにいえば50グラム以下のドローンは無風状態でも屋外飛行は適さない。小さい機種は室内専用と割り切ったほうがいい。
メーカー別おすすめのトイドローン
100グラム未満で、オススメのトイドローンをメーカー別に紹介していく。ひとつのメーカーで複数の機種を挙げている場合、機体のサイズが違うことにより用途が違うということ。どんな場所で遊ぶか、練習するかを考えて、気に入った機種を見つけてほしい。
RYZE(ライズ)
ドローン最大手「DJI」の飛行制御技術とインテル製の制御チップを採用した、小型ドローン専業メーカー。実質的にDJIの小型機部門といえる存在で、機体のクオリティはトップレベルである。
イチオシ!
Tello(テロ)Boost Combo
80グラム
屋外飛行にも対応できる本格派トイドローン。カメラの動画画質は1280ドット×720ドットのHD画質。操縦はスマホで行うが、本機に対応した操縦機も他社から発売されている。「Boost Combo」は、本体のほかに予備バッテリーや予備プロペラ、プロペラガードといったアクセサリーがセットになったパッケージ。あとあと必要になるものがセットになっているので、機体単体を購入するよりお得だ。
G-Force(ジーフォース)
G-Forceは、国内トイドローン販売のトップブランド。トイドローンだけでなく、R/Cボビー製品も多く手がけている。機種ラインナップは豊富で100グラム以上の機種から超小型機まで揃っている。
SQUARED CAM(スクアード・カム)
58グラム
全面プロペラガードで覆われたプロペラ内蔵のボックス型ドローン。搭載されている1280ドット×720ドットのHDカメラは、飛行前に手動で角度を調整できる。専用操縦機が付属しておりモード1/2の切り換えが可能。操縦機にスマホを装着すれはリアルタイム映像を楽しむこともできる。
LUCIDA(ルシーダ)
34グラム
手のひらサイズの小型機にフルHDのカメラを搭載。広角レンズを採用しており映像を見ながらの飛行でもドローンの位置を把握しやすい。専用操縦機(モード1/2切り換え可能)が付属していてスマホを組み合わせればリアルタイム映像を楽しめる。機体制御用の映像センサーを搭載しており、操縦機から手を離すとその場で安定のホバリングを見せる。
Holy Stone(ホーリーストーン)
ドローン大国である中国のトイドローンメーカー。日米のAmazonを中心にトイドローンを販売しており、高評価を受けている。100グラム以上の製品が主力のようだが、100グラム以下の製品にも光るものがあり、価格的にも初心者の練習用に適している。
HS220
80グラム
アームを展開しても折り畳んでも飛行できるモデル。アームを展開すれば比較的大型の機体になり、屋外でも安定性が期待できる。搭載されるカメラは1280×720のHD画質。専用操縦機が付属しスマホと組み合わせれば飛行中のリアルタイム映像を楽しめる。最大飛行時間15分は、このサイズの機体としては優秀。スピードも4段階に調整できるので、初心者の練習にも向いている。
【セルフィー】720pHDカメラが付き、ポケットに入る自撮りドローンです。専用Wifiカメラを付き、空中での写真や撮影ができます。iPhone&AndroidスマホはAPPを通じて、リアルタイム映像転送できます。ドローンを使うことで今まで撮れなかった映像を撮れましょう。
【安定性抜群】高性能ジャイロ搭載で上昇、下降、前進、後進、左回し、右回し、ヘッドレスモード…
HS370
46グラム
1280×720のHDカメラを搭載した初心者向けモデル。軽量な機体のため室内向きとなる。約11分飛行できるバッテリーが2個付属しており集中して飛行練習できる。スピードは3段階切り換えで、自動的に自分の手元に戻るリターン機能や宙返り、ヘッドレスモード等の飛行機能を搭載している。
【720Pカメラ&リアルタイム】 720Pカメラ搭載、高解像の動画・写真(1280×720)をスマホに記録できます。リモコンはもちろん、スマホとアクセスした後、ドローンで撮った画像をリアルタイムで見えます。
【高度維持&ワンキー離陸/着陸】 高精度の気圧センサーを搭載して、高度維持機能は可能になり、安定した飛行が実現できます。自動離着陸、ホバリングが可能です。緊急事項が出た場合、緊急停止もできます。ドローンの操作は簡単になります。モード1/2切替え可能…
4DRC(フォーディーアールシー)
こちらもドローン大国・中国のR/Cホビーメーカー。Amazonを中心に低価格な小型ドローンを販売している。100グラム以上の機種では、ライバルメーカーと同等のカメラ性能・飛行性能で価格が圧倒的に安いモデルを積極的に投入している。100グラム未満のモデルは少ないが、やはりコストパフォーマンスは高い。
V9
60グラム
200グラムクラスの機体に見えるデザインながら、飛行重量60グラムの小型ドローン。アームを折り畳んでコンパクトに収納できる。カメラがとらえた映像を解析して飛行安定性を高めており、初心者でもラクに操縦が可能。搭載されるカメラは1280×720のHD・ワイドレンズで、スマホへリアルタイム映像を送信する。専用の操縦機とバッテリーが3つ付属。バッテリー1本で約10分の飛行が可能だ。
✈[折りたたみ式のデザインと収納ボックス]折りたたみ式で柔軟なプロペラにより、ドローンは小型軽量(重量:50g)で持ち運びが簡単です。高品質のABS素材でできており、安全で長持ちします。プロペラガードを使用すると、衝突や落下を気にせず安全に飛行できます。
✈[飛行時間]ドローンには、より安全で交換が簡単なモジ…
京商
国内メーカーのドローン開発は寂しい状況だが、総合模型R/Cメーカーの京商が孤軍奮闘している。主力製品は、室内の専用サーキットでドローンレースをするための「ドローンレーサー」となるが、100グラム未満の空中撮影用のトイドローンもラインナップされている。
LIVE STYLE Type-300HD
35グラム
飛行重量35グラムの小型ドローン。メーカーは室内専用モデルとしている。機体下部にオプティカルセンサーを搭載しており、ホバリングがピタっと止まるのが特徴。初心者でも操縦機のスティックから指を話せば、機体がその場で止まるので墜落しにくい。カメラは1280×720のHD画質で、操縦機の下部にスマホを装着すればリアルタイム映像が見られる。飛行時間は約6分となっている。
まとめ
かつてラジオコントロール模型では、ヘリコプターの操縦が一番難しいといわれていた。しかし、ドローンの時代になって昔とは比較にならないほど簡単に「空飛ぶ模型」が楽しめるようになった。
ドローン規制の改正が施行されたら、100グラム以下で高画質カメラを搭載した高級機が登場する可能性がある。そうなったとき、すぐに買って楽しめるように、今のうちに入門機でたっぷりと練習しておくのがいいだろう。
◆福多利夫(フリーライター)
デジタル家電関連の記事を得意とする、モノ系ホビー系のフリーライター。一般財団法人家電製品協会認定の家電総合アドバイザーでもある。長年にわたり月刊『特選街』の制作に携わり、パソコン関連の著書も多い。元R/C専門誌スタッフ。