コロナ禍の今、各メーカーからいろいろな空気清浄機や空気殺菌器が出てきています。手当たり次第に性能確認をさせてもらっているのですが、心に引っかかるモデルがいくつかありました。今回は、そのなかからフィリップスの空気殺菌器と、エレクトロラックス、およびシャオミの空気清浄機をご紹介します。
コロナ禍で注目の空気清浄機・空気殺菌器
求められる空気環境の整備
コロナ禍ということで、いろいろな空気清浄機や空気殺菌器を試しています。まず最初に言っておきますが、感染者がいる場合はこれらの機器で感染を防止することはできません。理由は「ゆっくり空気をきれいにする」からです。くしゃみ、咳、あるいは発声による飛散スピードの速いコロナウイルスを含む飛沫に対抗できないのです。それは飛散速度が速すぎて、直接飛沫を捕らえることができないからです。
しかし、空中浮遊しているモノに対しては、効果があります。また、使い続けることで、空中浮遊物のない清浄な空気環境を作ることは可能です。今、この空気環境を整えることがとても重要なのです。「コロナウイルスは空気感染しない、接触感染を含む飛沫感染」と言われていたのですが、今や、それだけでは説明がつかないケースが増えてきています。一部で空気感染もありそうだと言われ始めています。このため、常にきれいな空気の中で生活することは重要なのです。
そして飛沫ならともかく、コロナウイルスのみのサイズになると、HEPAフィルターでも通してしまうことが多い。このため各社、ウイルスを不活化させることのできる空気殺菌器(パナソニックなどは空間清浄機と呼ぶ)もどんどん市場投入しています。
ウイルスの不活化のためには、オゾン、次亜塩素酸など、高濃度だと人間に対しても毒として働く物質が用いられています。確実に不活化するのは、それくらい大変なことです。そのため、今、いろいろな空気清浄機や空気殺菌器が出てきています。手当たり次第に性能確認をさせてもらっているのですが、心に引っかかるモデルがいくつかありました。今回は、そのなかからフィリップスの空気殺菌器と、エレクトロラックス、およびシャオミの空気清浄機をご紹介します。
フィリップスUV-C 室内空間殺菌器「UVCA200」
UVだからほぼメンテナンスフリー
オランダのフィリップスといえば、日本では「ノンフライヤー」「電動歯ブラシ」「電動シェーバー」などで知られていますが、医療に携わる人なら、世界的な医療メーカーとして認識されています。これは、フィリップスが、一時的ではなく恒久的に人の世にプラスになる機器を供給することを目指したからです。そう眼で、フィリップスの製品を見てみると、「照明」「電動歯ブラシ」「電動シェイバー」などを手放さず頑張っているいる意味が見えてきます。日本メーカーが、今までトップだったからと「テレビ」に拘り続けたのとちょっと違います。
このフィリップス。実は、UV-C 室内空間殺菌器も作っています。と言っても、今ドキのやり方で、開発、設計がフィリップス。製造以降は、他のメーカーに任せるという方法です。製造は、シグ二ファイジャパン合同会社。日本です。モノづくり日本の一人としてちょっと嬉しいです。そして販売は、なんとアイリスオーヤマです。彼らはコロナ禍前の2014年に、フィリップスと戦略的パートナーシップ契約を行い、BtoBビジネスを進めてきましたが、今回それが実ったわけです。
このモデルは、内部にUV(紫外線)照射機能を持ち、ゆっくり空気を循環させることにより、ウイルスを不活化します。UVは、人間のようにちゃんとした皮膚を持っていても、浴びた量によっては大きなダメージを受けます。ウイルスはタンパク質が剥き出し、細菌は細胞膜。当然、人間の皮膚より弱い。つまり、UVを浴びせられると組成が変質して不活化、もしくは死に至ります。
使用されている光源は、UV-C(波長:254nm。微生物への影響が最もある波長)。データ的には、6秒でウイルスを99%不活化します。効果を眼で見ることはできないのですが、フィリップスですから、十分信用が置けます。
UVを使う時の一番のメリットは、ほぼメンテナンスフリーということです。というのは、次亜塩素酸などでウイルスを対抗する場合、水を入れたりして、使いっぱなしにはできません。またUVは外へ漏れない限り安全です。メンテナンスフリーで、一台で、ここまで強力なのはなかなかありません。
家庭で使うには、十二分の高価ですが、やはり当初の考え通り、BtoBで使うのがいいでしょうね。天井設置型、壁に取り付けるタイプもあります。
エレクトロラックス空気清浄機「Well A7」
機械・家電というより、自分の好きなポスターやヌイグルミの感触
有名デザイン賞を総なめにしたエレクトロラックスのエアケア「Well A7」。エレクトロラックス は、北欧スウェーデンのメーカーですが、性能、ラインナップ共に、欧州を代表するメーカーの1つ。トップと言い切るといろいろ異議が出そうなのでトップとは言いませんが、ベスト3入りと言うと、異議を唱える人はいないでしょう。そんなエレクトロラックスが、今、力を入れているのが、エアケアと呼ばれる空気清浄機です。その中に、異端とも呼ぶべき一台がWell A7。自分空間を大切にする乙女にこそ使って欲しい一台です。
見た瞬間一眼で、今までの空気清浄機と違うことがわかります。ファブリックに包まれた横長デザインで、革の取手がつけられています。今までの置きっ放しの空気清浄機ではなく、自分の側に持っていく感じの空気清浄機です。性能も欲張っておらず、スペックは中の下、すごいと口から泡を飛ばして言うようなスペックはありません。
しかし一週間側に置いて使ってみると、高性能モデルではなく、Well A7に心移りしました。隣に置いておくのにピッタリと言う感じなのです。そうヌイグルミ感覚なのです。
私も初めての体験です。一番、要因として大きいのは、サイズと親しみを持ちやすい素材が使われていることだと思います。
プライベートでゆっくりしたい空間、そう個室、寝室にぴったりの空清と言えます。人の出入りがなく、予め使用して空気をきれいにしておけるのなら、とびっきり高い性能でなくても十分です。そんなところで使いたい一台と言えます。
ちなみに、このモデルは壁掛けも想定内。本当によく使い方を考えたモデルです。
Xiaomi(シャオミ)空気清浄機「Mi Air Purifier H3」
呆れるほどのコストパフォーマンス
今、中国メーカーは、各メーカーのブランドが最後まで生き残れるように、特徴を打ち出しつつあります。これは、戦後の日本も同じ。日本が歩んできた道を、中国も歩んでいると考えればいいでしょう。このため、中国家電は「安かろう、悪かろう」から「高品質で、リーズナブルな価格」へと脱皮しつつあります。とは言うものの、十分安い。
中国市場でスマートフォンシェア第4位のシャオミ(IDC 2020年調査による)もそんなメーカー。私してシャオミは、スマートフォンだけでなく、炊飯器から空気清浄機まで色々なモノを販売しています。
今年は、若者の個室に力を入れているらしく、スマートフォン、スマートウォッチをはじめ、体重計、ハンディ掃除機、空気清浄機など、その部屋にあってもおかしくないモノが展開されています。これら全部買って、スマホを除いた家電は全部買っても5万円位ですから、実に安い。空気清浄機なんか、HEPAフィルターを使用したモデルH3で、約2万円です。
余分な機能はなく、フィルタリングのみ、また温湿度センサーは付いていますが、記録はできないという機能は直球ですが、フィルターはHEPAなので性能はかなりのものです。使わない機能を目一杯付け、高価格化するのが当たり前になった、どこぞの国のメーカーとは、ちょっと違います。
空気清浄機は部屋ごとにあることが望ましいのですが、エアコンを部屋ごとにつけ、空気清浄機も部屋ごとなんて言うとやはりお金がかかって仕方ありません。この値段なら、検討できそうですね。
【新しい強力な空気ダクトシステム。1 分間に 6330 リットルの清浄化された空気を供給】空気清浄機のサイズを変えずに出力を高めるために、Xiaomi は…
最後に
私は幸いなことに花粉症ではないので、365日空気清浄機を付けなければならないということはなかったのですが、コロナ禍の今は空気清浄機を多用しています。空気清浄機といえば、残念なことに、大きく、そして壁から少し離して使うため、ある意味目立つ家電。それなのに、いまいちつまらないデザインや仕様のモデルが多いのが現実です。
そんななか、黒船ではありませんが、海外メーカーが新しい視点から作った空気清浄機などがだんだん認知されてきています。新しく購入を考える場合は、日本メーカーだけでなく、海外メーカーも考えてみてはどうでしょうか?自分に合ったモデルが見つけやすくなりますよ。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。