玉ねぎの栄養をより効果的にとるための調理のコツを紹介します。【解説】石原結實(医学博士)・牧野直子(管理栄養士)
著者のプロフィール
石原結實(いしはら・ゆうみ)
医学博士。1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部大学院博士課程修了。血液内科を専攻。長寿地域として有名なコーカサス地方やスイスのBベンナー病院などで最新の自然療法を学び、現在イシハラクリニック院長。
牧野直子(まきの・なおこ)
管理栄養士、料理研究家。スタジオ食主宰。料理研究家として料理提案、料理制作を行うほか、管理栄養士としての観点から、生活習慣病予防、美容などによい食情報の提供をメディアや講演で行っている。日本肥満学会会員。日本食育学会会員・評議員。
本稿は『知って驚くファイトケミカル 健康野菜大全』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/村田善子
玉ねぎはどんな調理法をすると、より効果的?
切ってから15分以上空気にさらすと、栄養がアップ
切ってから15分から30分ぐらい放置するのがポイントです。
それは、空気にさらすと酵素の働きで、辛み成分であるイオウ化合物が変化し、新陳代謝をアップさせたり血栓を作りにくくしたりする成分ができるから。加熱する調理でも同じで、切ってから15分以上おいてから使いましょう。
逆に、辛み成分は水溶性なので、水にさらしたり、塩もみしたりすると、水に溶け出てしまいます。 煮ものやスープなどでは栄養成分が汁に溶け出しているので、汁も残さずいただいて栄養を無駄にしないことも大切です。
切り方で玉ねぎの栄養が変わりますか?どんな切り方がいい?
みじん切り、スライスで玉ねぎの細胞を壊すのがマル
切り方による栄養成分の摂取データは今のところありませんが、細かく刻んだほうが、香りの成分、アリシンが出ると考えられています。アリシンは、疲労回復、血栓防止、抗菌、発汗、利尿作用などの効果が期待されます。
薄切りにする場合も、薄いほうが、アリシンが発散しやすくなります。食べたときの食感としては、繊維に直角に切ると、加熱したときに短時間でやわらかくなり、繊維に沿って切るとシャキシャキ感が残ります。歯ざわりを生かしたいときや長時間加熱するときには、繊維に沿って切るほうが向いています。
辛くて食べにくい玉ねぎはどうしたらいい?
加熱には強い
辛み成分の健康効果は期待できなくなりますが、水にさらしたり塩もみしたりすると辛みがやわらぎます。酢や油に漬けておいてもいいでしょう。この場合、成分は酢にも溶け出すので、漬け汁もドレッシングなどに使いたいもの。
また、炒める、煮る、蒸すなど加熱すると、甘みが増します。玉ねぎの栄養は、水には溶けますが、加熱には強いほうです。
玉ねぎの代わりに、小玉ねぎや紫玉ねぎを使っても、同じ効果がある?
紫玉ねぎにはより強い解毒効果が期待されます
小玉ねぎは、みそ汁や煮もの、シチューなどの煮込みのほか、揚げたり炒めたりと、玉ねぎ同様にいろいろに使え、いつもの玉ねぎを小玉ねぎに代えるだけで見た目に変化がついて、また違った味わいが楽しめます。
紫玉ねぎは、ふつうの玉ねぎよりファイトケミカルが豊富で、有害物質の解毒作用があるといわれています。クセがなく食べやすいので、スライスオニオンやサラダ、マリネなど、生で食べると、そのよさが発揮されます。
玉ねぎを泣かずに切る方法は?
冷蔵庫で冷やします
泣かずに玉ねぎを切るコツは、玉ねぎをよく冷やしておくこと。また、よく切れる包丁を水でぬらしてから切るとよいようです。
これは、水に辛み成分が溶けるから、とされています。調理の前に玉ねぎを冷蔵庫に入れておくといいでしょう。
玉ねぎの皮もいいと聞いたのですが?
抗酸化作用で血圧を下げ、中性脂肪を減らします
皮の黄茶色はケルセチンという色素でフラボノイドのひとつ。玉ねぎの実にも含まれますが、強い抗酸化作用があり、毛細血管を丈夫にし、血圧を下げる効果や中性脂肪を減らす効果が期待されています。
なお、本稿は『知って驚くファイトケミカル 健康野菜大全』(KADOKAWA)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
※(1)「玉ねぎの健康効果」の記事もご覧ください。