日本酒は四季を通じて楽しめるものだが、夏に飲むならやっぱり「夏酒」だろう。季節の旬な食材と一緒に、旬のお酒をいただきたい。今年の夏は夏酒をより一層美味しく楽しむために、酒器やアテにもこだわってみてはいかがだろうか。
そもそも夏酒って?
新酒やひやおろしと違い、「夏酒」について厳密な定義はない。「夏に美味しく飲める」日本酒を指す。しかし近年では、酒造メーカーが「飲み飽きないさっぱりとした飲み心地」だったり、「夏が旬の食材によく合う味わい」や、「夏らしさをデザインしたラベル」の日本酒を特別に販売することも多い。定義がない分、自由な発想で楽しめるのが夏酒の良さとも言える。今回は数多ある夏酒の中から厳選の4本を、おすすめの酒器や食材と共にご紹介したい。
夏はビール!という人におすすめしたい夏酒
根っからのビール党で、日本酒はあまり……という方におすすめしたいのがこの二品。
百十郎 純米吟醸 青波(あおなみ)-BLUE Wave-
林本店(岐阜県)
根っからのビール党の人にこそおすすめしたい夏酒がこちら。コンセプトが「夏バテをぶっ飛ばす!」という、超スッキリテイストの日本酒。蔵元からは「ビールを呼び水に、そのあとに飲んでもらいたい」というコメントもあり、ビール党の方にこそ味わってもらいたい。
淡麗な口当たりに柑橘を思わせる香りと酸、ほのかなガス感は、まさに真夏に飲みたい一品。蔵元直販サイトには『サラリと淡麗、ドライが流儀』、『アウトドアにもおすすめ』とあるので、バーベキューのお供にも良さそうだ。
▼おすすめの温度 低温(5~10℃)
▼おすすめの酒器 銅製タンブラー、ガラス製のグラス。よく冷やしたロックグラスや小ぶりなビールグラスも◎。
▼おすすめのアテ あまり脂っこくなく、塩気のあるもの。出汁の効いたもの。白身魚(刺身、塩焼き)、ゴーヤチャンプルー、だし巻き卵など。
純米吟醸 なつくじら 原酒
酔鯨酒造(高知県)
淡麗ドライでキュッと飲めるのがこちら。蔵元サイトには『キラキラな酔い心地』とあり、涼やかな香りにしっかりとしつつもイヤミのない辛さがクセになる一品。
他の夏酒にない特徴として、北海道限定生産の酒造好適米「吟風(ぎんぷう)」を使用している点が挙げられる。吟風は芳醇でコクがある特徴を持ち、八反錦の系譜を受け継いださっぱりとして淡麗な味わいを作り出す。暑さ厳しい夏の夜に、爽やかに楽しめそうだ。
よく冷やしても味の輪郭がぼやけないようとに原酒で出荷しているため、アルコール度数は17度とやや高め。美味しいからと言って、ついつい飲みすぎないようにご注意を。
▼おすすめの温度 低温(5~10℃)
▼おすすめの酒器 スズ製おちょこ、ガラス製おちょこ、シャンパングラス。度数が強いのでガブガブいかず、ちびちび楽しもう。
▼おすすめのアテ 塩気が効いているもの。赤身の魚や肉。夏野菜のフリット、カツオのたたき、ローストビーフなど。
普段はサワーやハイボール!という人におすすめしたい夏酒
缶チューハイやハイボールをよく飲むという方におすすめしたいのが、夏のにごり発泡酒。今回はこの二品を紹介したい。
讃岐くらうでぃ
川鶴酒造(香川県)
創業1891年、実に130年もの歴史を持つ老舗蔵元が醸すのがこちら。特に夏限定で製造しているものではないが、実際に飲んで「夏にピッタリ」と思うので紹介する。これは、言うなれば「大人のカルピスソーダ」なのだ。
日本酒を作る過程で、酒米を蒸し上げたあとに麹菌を振りかけ「酒母(しゅぼ)」を造るのだが、 このお酒は通常の3倍もの量の麹を、しかもクエン酸を多く作り出す特徴を持つ白麹を使用している。そのため、乳酸菌感たっぷりの酸味強めで、微発泡タイプのにごり酒に仕上がっている。
アルコール度数が、一般的な缶チューハイと同程度の6%と、飲みやすいのもポイント。飲み方はストレートまたはロックがおすすめだが、ソーダ割も良い。まさにカルピスである。
▼おすすめの温度 低温(5~10℃)※温度が上がったり振動を加えたりすると開栓時に噴き出すので要注意。
▼おすすめの酒器 ガラス製のグラス(ロックグラスがあれば良し)。
▼おすすめのアテ 鶏肉料理。フライドチキン、から揚げ、焼き鳥、鶏もも焼きなど。
いづみ橋 夏ヤゴ にごり酒
泉橋酒造(神奈川県)
こちらは「讃岐くらうでぃ」とはまた違った、辛口タイプのにごり酒。瓶内二次発酵の発泡タイプ(瓶の中に発酵の過程で生じた炭酸ガスを閉じ込めたもの。炭酸ガスを添加していない)だが、火入れをして酵母発酵をストップさせているため品質は安定しており、保存管理しやすくなっている。
山田錦を使用した山廃純米仕込みで、酸が効いており、旨!辛!シュワッ!からのクリーミー……という味わいが楽しめる。ドライな味わいのハイボールが好きな人に良いのではと思い、紹介した。
250mlの小瓶のため飲みきりタイプで、ラベルにはトンボの幼生である「ヤゴ」のイラストが描かれている(秋にはトンボのイラストのラベルのものが発売される)。期間限定のため、見つけたら即ゲットすることをおすすめしたい。
▼おすすめの温度 低温(5~10℃)※温度が上がったり振動を加えたりすると開栓時に噴き出すので要注意
▼おすすめの酒器 ガラス製おちょこ、シャンパングラス
▼おすすめのアテ 味噌、醤油、チーズなどの発酵食品。夏野菜スティック+味噌マヨ、たまり漬け、いぶりがっこクリームチーズなど。
まとめ
今回紹介したものは、いずれも低温保存推奨(5~10℃)で、品質劣化の原因となる紫外線を通しやすいクリアボトルなどが多いため、品質管理にはくれぐれもご注意を。もし購入された際には、こちらの記事を参考にしていただけたらと思う。
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そして、できたら酒器選びにもこだわってみてほしい。飲み口が変わるだけで、味わいにも変化を感じられるはずだ。
また、アルコール摂取時は脱水症状を起こしやすく、熱中症にもなりやすいため、「飲んだお酒と同量か、それ以上の水を飲む」ことを心がけてほしい。これは二日酔い対策にもなるので、「日本酒飲むと頭が痛い」という人はぜひお試しあれ。
暑くなってくると食欲も減退しがちだが、夏こそ旬の食材を取り入れ、それに合う日本酒を楽しんでみてはいかがだろうか。夏野菜には体を冷やす効果があり、暑さ対策にも一役買いそうだ。普段はビールやチューハイという人も、今年の夏はぜひ日本酒にチャレンジ!