シロカが扇風機に音声認識を施したのがサーキュレーター扇風機「SF-V151」。これを使用して思わず私は笑ってしまいました。かなり攻めた音声認識システムでありみなさんにも一度体験してもらいたいのです。今回はこの「ポチ扇」をレポートします。
扇風機に音声認識を搭載したシロカ「ポチ扇」
音声認識。とても実用的な技術になってきました。スマホでは、ほぼ確実に認識、動作してくれますし、Amazone Echo、Google Homeは、世代を重ねてこなれてきています。なんせ人間は泣き声と共に生まれ、最後一言ボソっと呟いて死ぬ位ですから、声で指示するのは当たり前と言えば当たり前。どんどん、いろいろなところに使われています。ちょっと遠い、動きたくないという時には絶大な効果を発揮します。
ただし問題になるのは、プログラムをスタートさせる「Wake Up Word(ウェイクアップ・ワード)」。多くの場合、メーカー名を言わされます。Google Homeでは「OK Google」。どうものれません。
その点、Amazon Echoは「Alexa(アレクサ )!」と呼びかけるだけ。古代最大の図書館があったアレクサンドリアの名前を女性名にしたアレクサ。こちらの方が、いい感じなのですが個人的にはやっぱり外国の名前ではなく、大和言葉の名前がいい感じです。春、夏、秋、冬、朝、夕。「子」が付かなくてもいいです。音も優しいですし、呼びやすいし、粋だと思います。
さてさて、それはさておき、新しいことに挑戦したのが、シロカ。なんと扇風機に音声認識を施しました。私、笑ってしまいました。レポートします。
電源を入れると…
電源を入れると、すぐに「ご利用ありがとうございます。お役に立てるよう頑張ります。」の可愛らしい声がしました。かなりはっきり。ちょっとビックリしましたが、お得な気分も出てきます。お堅いハードウェアがなんとなく、ソフトに感じられます。
実はこれ、音声認識ではありません。電源を入れると、再生されるよう仕掛けられているだけです。挨拶です。扇風機を好きな位置に配置しますと、扇風機を目覚めさせます。
扇風機は「犬」属性?
ウェィクアップ・ワードは「ポチ聞いて」。
多分、女性名だと問題があると考えたのでしょうね。「ポチ」と来ました。この辺は、なんとも時代を感じさせます。しかし、犬の名前で「ポチ」は有名ですが、あまり使われませんね。「ココア」とか「ショコラ」がトップらしいです。逆に使われないからこそいいのでしょう。
さて、ポチは「なんですか?」と返事。
メイド風の答えが帰ってきました。ポチと言うオスっぽい名前ですが、女性の声でメイド風の答え。なんか犬耳をつけたメイド喫茶のようにも感じます。
こちらも「暑い。」と返事。しかし、暑くて扇風機を使うからと言っても、そこまでのウェットな感じとはチグハグです。
「はい。」ここはポチの答えもドライです。これでスイッチがオンになります。
笑いながら使うしかねぇ!
過剰演技に好みが分かれる?
次に行うのは首の位置決め、もしくは首振りさせるのか。それともう一つ、風の強さを決めなければなりません。
私:「首振って」。
ポチ:「はい、喜んで」。
「喜んで」と付いており、グッと優しい。本当にメイドっぽいです。それどころが声がちょっとウキウキした感じです。私は、首を止めて、ゆるやかな風を使うのが好きですから、いい位置で首を止めます。
私:「首振り止めて」。
これ、ちょっと言い難かったですね。「首止めて」でもよかったような気もします。
ポチ:「わ、わかりました」。
ちょっと吃ったような、残念無念な感じの答え。笑ってしまいました。人によっては演技過剰と、ちょっと気分を害するかもしれませんが、私は笑いの方が先でした。
むしろこの応答に時間がかかります。このため、初めは自分の思った位置で止めることができませんでした。人は、言い出した瞬間、「首振り止めて」と言った時には止まっている感じで声を出しますが、実際は、それを認識、「わかりました」の答え、その分、時間がかかります。3〜5秒くらいかかります。犬耳メイドは、ちょっとスローペースなのです。ここは怒らないで、慣れる必要があります。
さて風量です。
私:「強くして」。
ポチ:「はい」。
ちょっと位置が近い感じの声です。ここでも問題があります。一段づつしか風量を上げることができません。自分の好きな風量になるまで、何度か指示を出さなければなりません。ちょっと面倒。「二段階上げて」とか、指示の自由度が欲しいと思いますね。
最後は
私:「お疲れ様」
でストップです。
ポチ:「お疲れ様でした。またのご利用をお待ちしております」。
もはやメイドと言う感じではなく、まるで、エレベーターガールのよう。最近、ここまで丁寧なトークはなかなか出会うことがありません。
あとちょっと!首尾一貫性が欲しい
かなり攻めた音声認識システムであり、作り込みもまずまずです。使い勝手もいいのですが、まだ、首尾一貫していない様な気がします。例えば、メイドに徹するなら、ずっと家に居付きですから、「またのご利用をお待ちしております。」は、ちょっとおかしいでしょう。この辺りは、整合性をとった方が気持ちがすきっとします。
ここら辺は、もう少し練った方がいい感じがします。使い勝手の良い音声認識は、普通の言葉をどううまく使うのかが鍵になってきます。もう少しです。しかしながら、今までのように、メーカー名、そして正確な機能名を言わない時より、ずーっといい感じです。
何パターンか作って、そのデータをユーザーに買ってもらうのでもいいかもしれません。全部、自分の好きな声でまとめてもらうのもありでしょうし、全部バラバラの方がいいと言う人もいるでしょう。ヒューマンインターフェイスは、使い勝手をよくすると、個人の癖が出てきます。言葉などは、典型例です。難しい課題ですが、そこまで踏み込んだ方がより深い製品になります。
まとめ
シロカのサーキュレーター扇風機「SF-V151」。扇風機としての実力は、上の下と言う感じ。丁寧に作られているのですが、「サーキュレーター」もと考えたためでしょうか。ちょっと微風が甘い。ただ、コストパフォーマンスから言うと無視できるレベルじゃないでしょうか? しかし、それはいろいろなメーカーの扇風機にも言えることです。
今からの扇風機を考えた場合、音声認識による差別化は大きなポイントになると思います。しかも、この分野、まだ誰もこれはすごいと言うレベルにまで達していません。そんな中、モデル「SF-V151」は、かなりの力作。会話も面白いし、声も素敵です。一度、店頭でご確認ください。楽しい気分になると思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。