品質保証で多く使われてるのは、第三者機関によるテストデータを示すことです。高濃度では猛毒のオゾンは適切な量で空気質改善に活用することができ、オゾンを使う空調家電が色々なメーカーから発売されています。ただ安全に使うために「品質保証」の有無は必ずチェックしたいところ。オゾンに関するテストデータを提示している第三者機関「日本オゾン協会」があります。今回は、今後目にすることが多くなるだろう「日本オゾン協会 認定制度」のお話です。
オゾンを発生させる家電の安全性は?
ウイルスを不活化させるために、いろいろな化学物質が使われます。有名どころは「次亜塩素酸」に「オゾン」。うちオゾンは、フッ素に次ぐ強い酸化力を持つため、高濃度では猛毒です。吸い込むと内臓が酸化されてびらん状になってしまいます。
ただし高濃度と言っても、日本における作業環境基準は、0.1ppm。ppmですから100万分の1。その0.1ですから1000万分の1。ある意味、あるかないか分からないこのレベルで、人に対して有害か否かを分けるのです。幸いなことに、この濃度でもオゾンは、悪臭を放ちます。オゾンはその独特の臭気を持つので、ギリシャ語の「臭い」からオゾンと名付けらたくらいです。ほんのちょっとでも臭うのです。
しかしこの毒物を見分けるために有効な鼻の機能ですが、敏感であるが故にすぐ麻痺します。ほぼ1分で感じなくなります。余りの刺激に、脳細胞が疲弊し、リミッターが働くらしいのです。要するにちょっと耐えてたら臭わなくなり、気付いたら危なくなってしまうのです。
逆もまた真なり。体も大きく、いろいろな免疫システムを持つ人間でもやられるオゾンですから、タンパク質剥き出しのウイルスなどは一発でやられます。毒は最良の薬でもあり、空気質改善のためオゾンを使う空調家電がいろいろなメーカーから発売されています。
家電に関与している者としては、安全保障をしてすすめたいのですが、それには設備などが必要です。品質保証にはお金がかかるのです。ある程度の規模のメーカーになるまでは品質に危ういところがあるのは、そのためです。こんな時、多く使われるのは第三者機関によるテストデータを示すことです。オゾンにもテストデータを提示している第三者機関はあるのでしょうか?
あります。特定非営利法人『日本オゾン協会』がそれです。今回は、今後目にすることが多くなるだろう「日本オゾン協会 認定制度」のお話です。
日本オゾン協会とは
日本オゾン協会は、1983年に国際オゾン協会日本支部としてスタートし、1991年に日本オゾン協会が発足しました。
協会の役割は、皆様に「安心」してオゾンを使っていただいて、より「安全」で快適な生活環境を実現できるようにお手伝いすることだそうです。この中に、オゾンを使った家電を家で使うことに対する不安や課題をなくしていくことが含まれます。
その方法の一つが2020年に始められた「認定制度」です。
日本オゾン協会の認定制度って何?
日本オゾン協会の認定制度とは、オゾン発生装置を製造する事業者(輸入業者も含む)の生産・品質管理体制、アフターサービス・クレーム処理体制、またその製造事業者で製造される製品(型式。同意で型番、モデル名があります)が安全かつ有効に使用できる品質を有しているかどうかを、日本オゾン協会が独自に定めた基準をもとに審査し、その基準をクリアした製造事業者や製品(型式)を認定する制度のことです。
家電で使われる認定制度の多くは、「メーカーがうたう効果を確認する」のが目的ですが、オゾン協会では、製品が「安全」かつ「有効」に使用できるのかを、「製品」だけでなく「メーカーがその力を持つのか」に関してもチェックします。
これは今までになく、強力な認証と言えます。
認定制度は、
○大型機器認定:オゾン発生量10g/h以上のオゾン発生装置
○小型機器認定:オゾン発生量10g/h未満のオゾン発生装置
の2つがあり、オゾン発生装置の規模に合わせて認証基準は一部異なります。
特に、私たちの身近で使われることも多い小型機器(民生用家電)については、認定を受けた製品には、オゾンの分子O3をモチーフにした「認定マーク」が付けられます。要するに、この認証マークが付いていれば、問題ない安全なメーカーが作った問題ない安全なモデルということで、効果が期待できるだけでなく、安心して使えますということです。
また、この認証には期限があります。メーカーとして継続的に安全と認めてもらうには、認証を継続して行う必要があります。取ったら取りっぱなしの認証とは違います。また、この情報は公開されており、日本オゾン協会ホームページにおいて認定を受けた製造事業者(輸入業者も含む)、製品の型式、認定年月日、有効期間が分かります。
さらに、製造事業者(輸入業者も含む)には生産物賠償責任保険(PL保険)に加入することを義務付けているので、万一、製造上の欠陥で事故が発生した場合には、製造事業者の責任で補償されます。小さいメーカーでも十分な保証が出ます。
どこぞで根拠なく「安心、安全」というのと違い、こちらはほとんどの情報をオープンにして対応しています。保険もしっかり用意しています。
認定制度をいち早く活用した「マクセル オゾネオシリーズ」
スタート間もない認定制度ですが、この認定制度をいち早く活用し始めたメーカーに、マクセルがあります。マクセルは、昔は日立の子会社で、磁気テープなどの記録メディア、そして乾電池などを扱うメーカーとしてかなり名が売れていたメーカーです。しかし、今は「理美容家電」「モバイルバッテリー」、そして「除菌消臭器」に力を入れています。ちなみに「理美容家電」の中には、以前紹介した、マクセルイズミのシェーバーが含まれます 。
さて、このレポートで光を当てたいのは「除菌消臭器」。シリーズ名は「オゾネオ」。名前からわかる様に「オゾン」を使っています。しかし私は、マクセルがオゾンに強いという話を寡聞にて聞いたことがありません。例えば、アクアのように洗濯洗浄でオゾンを昔から使い続けて実績があるメーカーとは違うのです。しかも、メーカー規模はそんなに大きくないので、品質保証に十分な人材を割いているのかも不明です。私以外にも不安に思う人は多いと思います。
ところが、先月、マクセルから当認証を取ったとの連絡が入りました。日常的にオゾンを扱っているプロ集団が、品質確認を行うのですからかなり話が変わってきます。私も安心して、機能評価させてもらいましたが、シリーズモデルは高性能で、ユニークな特徴をもちます。これに第三者機関の認証、特に安全視点を強く持っている認証が加わるのですから鬼に金棒です。
オゾネオ アロマ
私が特に面白く感じたのは、アロマディフューザー機能付オゾン除菌消臭器「オゾネオ アロマ」。消臭機能に使われる「オゾン」と香りの「アロマ」と言うある意味相反する機能が一つの筐体の中に盛り込まれているのです。
考え方はこうです。人がその部屋に不在の間に、オゾンで除菌消臭。帰る時間の1時間位前からアロマを噴出。帰宅時には、無菌で、自分の好きな香りのする部屋になっていると言うわけです。そう、オゾンを24時間続けるのではなく、短時間に効果的に使うわけです。今はまだ帰宅時間をタイマーセットすることが必要ですが、通信機能を持つと、駅に着いたらアロマを噴出開始するなど、より効果的な使い方もできそうです。
オゾネオ部屋干しネクスト
また、サーキュレーターにオゾン発生器を搭載させたオゾン除菌消臭器「オゾネオ部屋干しネクスト」もあります。こちらの方は、洗濯の乾きが遅い時に増殖、悪臭を放ちがちなニオイ菌を殺します。それの安全性が保障されるわけです。
今後、長期に渡り、マクセルが実績を積めば、「マクセルだから安心」と言うことになるのでしょうが、今はまだそこに達していません。こういう時に日本オゾン協会の認証はとても助かります。
ちなみに、先ほど例で出したアクアも、メーカー認定、そして電解オゾンスプレー「COS-21A」、そしてオゾンガス発生器「COG-AS1」で認定を受けています。(「COS-21A」「COG-AS1」は業務用製品になります)
最後に
オゾンは非常に除菌消臭効果が高い物質ですが、その分扱いが難しいのも事実です。家電はそんなオゾンをを安全に扱える様にしたものですが、モノがモノだけに用心に越したことはありません。チェックは複数する方がベターです。それを第三者機関で、機能品質は元より安全性も確認できる様になりました。今年は2年目でまだ十分な活用がされていませんが、今後いろいろなメーカーが参入していくと思います。その際にこの認証マークが、機種選定時の味方になってくれると思います。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京歴史散歩とラーメンの食べ歩き。