【ペンタックス K-3 Mark III 実写レビュー】前モデルから一新!クラス最高レベルのファインダーを搭載したAPS-Cデジタル一眼レフのフラッグシップ

レビュー

「ペンタックス K-3 Mark III」は、高い機動力を持つ小型堅牢設計ボディに、クラス最高レベルの光学ファインダーを搭載したAPS-Cデジタル一眼レフ。本機は各メーカーの主流がミラーレスへと移行する中、稀有で貴重な存在と言えます。その理由は“一眼レフが持つ優位性”の観点だけではありません。写真を趣味とする人に対して“撮影のプロセスまで楽しめる機能や性能を備えたカメラを開発する”という、カメラづくりのポリシーが感じられる製品だからです。

執筆者のプロフィール

吉森信哉(よしもり・しんや)

広島県庄原市生まれ。地元の県立高校卒業後、上京して東京写真専門学校(現・東京ビジュアルアーツ)に入学。卒業後は専門学校時代の仲間と渋谷に自主ギャラリーを開設し、作品の創作と発表活動を行う。カメラメーカー系ギャラリーでも個展を開催。1990年より、カメラ誌などで、撮影・執筆活動を開始。無類の旅好きで、公共交通機関を利用しながら(乗り鉄!)日本全国を撮り続けてきた。特に好きな地は、奈良・大和路や九州全域など。公益社団法人 日本写真家協会会員。カメラグランプリ2021選考委員。

ペンタックス K-3 Mark IIIの主な仕様

「ペンタックス K-3 Mark III」は、リコーイメージング株式会社から発売される、APS-Cサイズデジタル一眼レフのフラッグシップモデルです。高い機動力を持つ小型堅牢設計ボディに、ユーザーが撮影に集中できるクラス最高レベルの光学ファインダーを搭載しています。

そして、イメージセンサー、画像処理エンジン、アクセラレーターユニット。これらの基本デバイスは、前モデルK-3 Mark II(2015年5月発売)から一新。最高ISO感度160万という超高感度性能の実現や、大幅に向上したAF機能(仕様)も目を引きます。それらの進化によって、従来モデル以上の高画質や機動性を追求しているのです。

まずは主な仕様を見ていきましょう。

www.ricoh-imaging.co.jp

●形式:TTL AE・AF一眼レフデジタルカメラ
●レンズマウント:ペンタックスバヨネット KAF2マウント
●撮像素子:原色フィルター/CMOS、APS-Cサイズ(23.3mm×15.5mm)、有効画素数:約2573万画素
●感度:ISO AUTO / 100~1600000
●手ブレ補正:撮像素子シフト方式「SR II」(5軸補正)、オート/流し撮り/オフ
●記録媒体:SD、SDHC、SDXCメモリーカード(UHS-II規格対応はスロット1のみ
●ファインダー:ペンタプリズムファインダー、視野率・約100%、倍率・約1.05倍(FA 50mmF1.4・∞)
●シャッタースピード:オート:1/8000秒~30秒、マニュアル:1/8000秒~30秒、電子シャッター選択時(※ファームウェアver.1.10アップデートで電子シャッター選択可能)は最高1/16000秒
●連続撮影速度:最高約12コマ/秒
●AF:TTL位相差検出式(測距点101点、選択可能測距点41点)、ライブビュー時は撮像素子によるTTL方式
●モニター:固定式、3.2型・約162万ドット TFTカラーLCD
●動画記録サイズ/フレームレート:4K(3840×2160、30p/24p) Full HD(1920×1080、60p/30p/24p)
●使用電池:充電式リチウムイオンバッテリーD-LI90P
●寸法:約134.5mm(幅)x103.5mm(高)x73.5mm(厚) (突起部を除く)
●質量:約820g (バッテリー、SDカードを含む) 約735g (本体のみ)
●発売日:2021年4月23日

外装やファインダーの仕様

高性能一眼レフらしい、シャープで堅牢なボディ

ペンタックス K-3 Mark IIIは、メーカーが「APS-Cフラッグシップデジタル一眼レフ」と謳うだけあって、ボディ本体や各パーツの素材や作り込みが良質です。本体の前後と上下の外装は、軽量で堅牢なマグネシウム合金製です。横幅や奥行を抑えた小型設計のそのボディは、金属の素材感と約820グラム(バッテリーとSDカード含む)の適度な重さと相まって、重厚な雰囲気が感じられます。また、各部にシーリングを施した防塵・防滴構造になっていて、マイナス10℃までの動作が保証される耐寒性能も備えています。

右手でホールドしたことろ。適度な大きさと張り出し具合のグリップが、とても良い感じで手に馴染む。この上から見おろすペンタ部のラインもカッコ好い!

クラス最高レベルのファインダー倍率

一般的に、一眼レフカメラの光学ファインダーの仕様や性能は、カメラのグレードの優劣に比例しています。K-3 Mark IIIは、高屈折率ガラスペンタプリズムの採用で、約1.05倍(FA50mm F1.4・∞)という高倍率を実現。その視野角の広さ(大きさ)は、フルサイズ機K-1 Mark IIと同等で、ワンランク上の見え具合が期待できます。ちなみに、ハイグレードなAPS-C一眼レフのファインダー倍率は、0.95倍~1.0倍くらいです。
つまり、K-3 Mark IIIのファインダー倍率は“クラス最高レベル”と言えます。当然、視野率は約100%を確保していますし、ペンタプリズムの反射率の向上で明るさも前モデルK-3 IIから約10%アップしています。

正面から見た“一眼レフの象徴”ペンタ部。そのエッジの効いたシャープなラインは、往年のフィルム一眼レフを彷彿とさせる。

操作性

快適に操作できるダイヤルやボタン類

レリーズ時(シャッターを切った時)の作動音や感触。こういった部分にも、カメラのグレードや品質が表れてきます。本製品のシャッターボタンには、押し心地が滑らかでブレ抑制にも有効な「リーフスイッチ」が採用されているとの事。そして、前モデルK-3 IIよりもレリーズタイムラグが短縮され、シャッター、ミラーバウンドなどの余計なメカ動作も抑制されています。これらの仕様や工夫により、小気味良い作動音や感触を実現しています。実際に使用してみたところ、甲高い作動音が少し気になった以外は、シャッターボタンの反応の良さや、小気味良い“シャッターの切れ味”に感心しました。

S.Fn機能の操作は慣れが必要

操作性に関しては、設定項目と設定値がダイレクトにすばやく選択できる、独自の「スマートファンクション」が、特長に挙げられます。スマートファンクション(S.Fn)のボタンとダイヤルを新たに搭載。その2つの操作で使用頻度の高い機能(22種の中から最大5つまで登録可能)を呼び出し、ファインダー視野内の表示で確認しながら設定できるのです。ただし、呼び出した機能の“選択と設定”に使用するダイヤルやボタンを把握するには、少し慣れが必要かもしれません(機能選択は十字キーの左右か後電子ダイヤル、設定はスマートファンクションダイヤルを使用)。

主要な露出情報などは、上面に設置された大型の表示パネルで視認できる。

各種の設定や撮影情報が確認できる、3.2型・約162万ドット 画像モニター。晴天の屋外撮影では明るく、夜景撮影では暗くするなど、モニター設定が簡単に変更できる「アウトドアモニター」機能を搭載。

基本画質と高感度性能

デジタルカメラの画像品質は、主に撮像センサーと画像処理エンジンの性能によって決まります。有効画素数約2573万画素の裏面照射型イメージセンサーは、解像力重視のローパスフィルターレス設計。そのセンサーで捉えた映像は、新開発の画像処理エンジン「PRIME V」と「アクセラレーターユニットII」によって、高解像感を維持しながらノイズを抑えた画像に仕上げられます。

そして、高感度ノイズの低減処理性能が高まった事で「ISO160万」という超高感度も実現しています。まあ、そんな極端な超高感度だと、画質劣化が目立つのは仕方ないでしょう。ですが、多くのAPS-Cサイズ機なら、画質劣化を気にして使わなかった高感度域も、このK-3 Mark IIIなら使ってみたい!そう思わせてくれる、優れた高感度性能でした。

自分がAPS-Cサイズ機を使用する場合、常用感度の上限(自分が画質的に許容できる感度の上限を指します)は、ISO6400くらいを目安にしています。ですが、K-3 Mark IIIの場合は、被写体や撮影条件によってはISO25600くらいまで十分使えそうです。

非常に優秀な高感度時の画質

長辺6192×短辺4128ピクセルの画像から、狭い一部分(長辺390ピクセル)を切り出して並べてみた。ISO800はもちろん、2段上のISO3200でもノイズは少なく細部描写も良好。さらに2段上のISO12800になると、エッジに甘さが見られ、全体的にざらつきも見られる。だが、被写体や撮影状況によっては、まだ実用範囲内だと感じた。その2段上のISO51200になると、さすがに細部描写の甘さやざらつき感が気になってくる。ただし、ここまで感度を上げても色再現は安定している。

連写とAFの性能

AF.Cで「最高11コマ/秒」の高速ドライブ

撮影時にミラーを可動させる一眼レフでは、その物理的な要素があるため、連写速度を上げるのは容易ではありません。秒間10コマを超えるような高速連写を実現するには、高いパワーやメカ部の耐久性、そして撮影画像の高速処理が可能な画像処理エンジン、などが必要になるのです。

K-3 Mark IIIには、新開発のミラー/シャッター駆動システムが採用され、ミラー・シャッターの駆動時間が大幅に短縮されました。また、ミラーのバウンドも抑え込んでいます。これにより、1コマあたりの作動時間は前モデルK-3 IIの約2/3に短縮され、高速連写速度は、約8.3コマ/秒から最高約12コマ/秒へと大幅に高速化されています(AF.S時)。

また、動体AF追従が可能なAF.C時でも、最高約11コマ/秒の高速連写が可能です。ちなみに、私見ではありますが、連写のスピード感は“秒間10コマ以上か以下か”によって、大きく変わってきますね。

101点測距と新設の測距点レバー

高速連写が必要な撮影シーンでは、AFの動体追従性能も重要になってきます。まず、画面内のどの部分までAFが機能するかの“測距点の範囲と数”をチェックします。一眼レフはミラーレスカメラと比較すると、測距可能範囲が狭くて測距点数も少なめです。特に、従来のペンタックスの一眼レフでは、測距点数の少なさが気になるポイント。前モデルK-3 IIは27点でした。ですが、K-3 Mark IIIの測距点数は、101点と大幅に増えています(選択可能な測距点は41点ですが)。

測距点選択の操作面でも進化しています。AFエリアのモードは、カメラ任せの「オートエリア」と、中央1点の「スポット」以外に、ゾーンセレクト、セレクト、セレクトエリア拡大(S、M、L)、セレクト(S)、が選択できます。そのオートエリアとスポットを除くAFエリアモードでは、新搭載の測距点レバーの操作によって、測距点選択が直感的かつ迅速に行えるのです。

モニター角の右に配置されているのが、新搭載の測距点レバー。これによって、測距点選択がスムーズに行える。ちなみに、従来機で測距点を選択する場合は、測距点移動ボタンで測距点が移動できる状態に切り替え、それからOKボタン周囲の十字キーで移動させる。この方法は結構面倒!

向かって来る列車を、線路脇から最高約11コマ/秒の高速連写(AF.Cモードで)。その中の連続する4カットを並べてみた。高速で走行する列車は、あっという前に目の前を通り過ぎて行くが、秒間10コマ以上の高速連写だったので、割と満足できる瞬間が捉えられた。

使用標準ズームの設定焦点距離は望遠端の40mm(35ミリ判換算で61.5mm)。そして、設定絞り値は開放のF4。このように、精度的に厳しい設定で撮影してみたが、ここで選んだカットも含め、全体的にAF追従の結果は良好。動体予測アルゴリズムが刷新された事も、この好結果に関係しているかも。
ペンタックス K-3 Mark III HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR(40mmで撮影) マニュアル露出 F4 1/3200秒 WB:オート ISO400

クロップ機能

望遠効果が高められる1.3倍クロップ

既出のとおり、K-3 Mark IIIは、約2573万画素のAPS-Cサイズセンサーを採用したカメラです。しかし、静止画の記録設定のメニューで「クロップ」を1.3xに設定すれば、マイクロフォーサーズと同等の範囲が写せるカメラになります。たとえば、焦点距離200mmのレンズは、多くのAPS-Cサイズだと約300mm相当の画角になりますが、クロップを設定すれば約400mm相当の画角になります。そう、手持ちレンズの望遠効果が高まるのです。ちなみに、クロップ機能は35ミリ判フルサイズのカメラには多く搭載されていますが(フルサイズ→APS-Cサイズ)、APS-Cサイズのカメラではそう多くありません。

1.3倍クロップ機能を設定すると、光学ファインダーの画面内に、クロップでの記録(写る)範囲を示す太い黒枠が表示される(枠の右下には「Crop」という表示も)。個人的には、黒枠の線が太すぎる気もするが、そのぶん視認性は高い。

このクロップ機能で問題になるのが、画素数の減少です。35ミリ判フルサイズをAPS-Cサイズにクロップ(約1.5倍)すると、記録画素数は40パーセントくらいに減少します。たとえば、約2400万画素のフルサイズ機なら、APS-Cサイズにクロップすると1000万画素くらいになります。ですが、2573万画素センサーの1.3倍クロップならそこまで画素数は減らず、約1500万画素は確保できます。1000万画素も極端に少ない数値ではありませんが、1500万画素あればより安心して使用できるでしょう。

1.3倍クロップ使用

標準ズームの望遠端40mmで撮影。ペンタックスのAPS-Cサイズ機では、35ミリ判換算で61.5mm相当の画角になる。だが、1.3倍クロップ機能を使用すれば、約80mm相当の中望遠画角が得られる。
ペンタックス K-3 Mark III HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR(40mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/160秒 -0.3補正 WB:オート ISO500

クロップなし

普通に、標準ズームの望遠端40mmで撮影したもの。「61.5mm相当」の画角は、単焦点の標準レンズの50mmや55mmと大差ない。しかし、上の約80mm相当の中望遠画角との差は明確!
ペンタックス K-3 Mark III HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR(40mmで撮影) 絞り優先オート F8 1/80秒 -0.3補正 WB:オート ISO200

まとめ

「ペンタックス K-3 Mark II」はカメラづくりのポリシーが感じられる製品

近年、レンズ交換式カメラの主流は、一眼レフからミラーレスに移行しています。それは、各社(カメラメーカーとレンズメーカー)が発売する製品をチェックすると、その事が再確認できます。売れ筋であるエントリーやミドルクラスの製品はもちろん、プロ仕様ミラーレス製品の発売や開発発表も、盛んに行われています。

そんな時勢にあって、今回取り上げた「ペンタックス K-3 Mark II」のような高品位で高性能なデジタル一眼レフは、稀有で貴重な存在と言えます。その理由は“一眼レフが持つ優位性”の観点だけではありません。写真を趣味とする人に対して“撮影のプロセスまで楽しめる機能や性能を備えたカメラを開発する”という、カメラづくりのポリシーが感じられる製品だからです。フルサイズ機に匹敵する広い視野の高品位ファインダーの搭載などは、その最たる特長と言えます。

APS-Cサイズのカメラとしては、20万円台後半という販売価格(参考価格)の高さが気になるポイントかもしれません。ですが、ボディの各機構や仕上げなどの完成度の高さを考えると、その販売価格も納得できるでしょう。

アルミ削りだしの素材を使用した高品位な外観や”レンズの味”を追求した、31mmと43mmと77mmのFAリミテッドシリーズ。フィルムカメラ時代から定評があるこのリミテッドレンズが、最新のHDコーティングや円形絞りなどの採用で生まれ変わった。ここでは望遠77mm(タイトル画像で装着しているレンズ)を使用。K-3 Mark IIIボディには、こういった高品位な交換レンズがよく似合う。
ペンタックス K-3 Mark III HD PENTAX-FA 77mm F1.8 Limited 絞り優先オート F2.2 1/500秒 WB:オート ISO200

密集した葉の間に咲くヤマボウシの花。その花の白さや形が印象的だった。主役に据えた中央近くの花だけでなく、手前や奥の花の位置も意識しながら画面構成を行う。視野が広くてクリアな光学ファインダーは、こういった“じっくり観察しながらの撮影”で、その良さや真価を実感する。
ペンタックス K-3 Mark III HD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR(20mmで撮影) 絞り優先オート F5.6 1/40秒 WB:晴天 ISO800

K-3 Mark IIIに質感の高い交換レンズ(ここでは標準ズームレンズのHD PENTAX-DA 20-40mm F2.8-4 ED Limited DC WR)を装着して、ちょっとリッチな気分で写真散策…。この組み合わせ、ちょっとカッコ好過ぎ!!

撮影・文◆吉森信哉(よしもり・しんや)

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