長年夫婦を続けると、残念ながらラブラブな状態は続きません。確かに「ほやほや」な時代は過ぎましたが、好きなところが何一つ消えたわけではないでしょう。「冷めてもおいしい」関係の続け方について、書籍『我が家は前からソーシャル・ディスタンス』著者で漫談家の綾小路きみまろさんに教えていただきました。
著者のプロフィール
綾小路きみまろ(あやのこうじ・きみまろ)
1950年、鹿児島県生まれ。漫談家。落語協会会員。司会者を目指し上京。その後、キャバレーの司会者や森進一、小林幸子、伍代夏子ら演歌歌手の専属司会者を経て、中高年の悲哀を題材とした自作の漫談テープがきっかけとなり、2002年にCD『綾小路きみまろ 爆笑スーパーライブ第1集! 中高年に愛を込めて…』をリリース。185万枚超の売り上げを記録し、以降、「中高年のアイドル」としてライブをはじめ、各メディアで絶大な人気を誇る。現在もライブツアーをはじめ、YouTubeチャンネルを開設するなど、精力的な活動を続けている。CD・DVD総売り上げ520万枚超、著書累計200万部超。
▼公式ホームページ
▼公式YouTube「綾小路きみまろ公式チャンネル」
▼公式Instagramアカウント
本稿は『我が家は前からソーシャル・ディスタンス』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
イラスト/おおさわゆう
昔ラブラブ、今デブデブでときめきはゼロ……
夫や妻を魅力的に変貌させる方法は?
出会った頃の妻は、食べたくなるほど可愛かった。あれから40年。あのとき、食べておけばよかった。
昔は、夫のことが死ぬほど好きだった。今は、死ぬほど嫌。出会った頃の魅力的なあの人に戻す、そんな魔法はないものか――。
若い頃のご主人は、さぞかしハンサムで爽やかで、立ち居振る舞いも凛々しい男性だったのでしょう。一方の奥様も、さぞかし愛らしく可憐で、愛嬌たっぷりで気立てのよい女性だったのでしょう。どっちも知りませんが。夫や妻を魅力的に変貌させる方法……そんなものがあれば、ノーベル賞ものです。
原点に帰って、あのときの熱い気持ちを思い出すのも手かもしれません。
「まだ帰ってこない。あなた、どこかで事故に遭ったんじゃないかしら……」ご主人の行方を心配して玄関を飛び出した、あの頃の気持ちを思い出してみる?今は、奥様のバスト・ウエスト・ヒップが行方不明なので、そっちを心配すべきです。
あるいは、若い頃のお互いの写真を大きく印刷してお面を作ってみる?ハサミで顔を切り抜いているときに、「俺は一体、何をやっているんだ……」と虚無感に襲われるだけでしょう。
ならば思い切って、再び、二人で新婚旅行先に赴いてみる?ひざや腰が痛すぎて、到着して早々にとんぼ返り、整骨院に直行でしょう。
……奥様のエステぐらい効果のない作戦ばかりでした。失礼いたしました。
「冷めてもおいしい」関係
長年夫婦を続けると、残念ながらラブラブな状態は続きません。お互い、デブデブになってしまったのですから。
そもそも、年老いても超がつくほど仲のよい夫婦なんて、そうはいませんよ。でき立てほやほやのお饅頭や焼きたてほやほやのメロンパンは、熱いからおいしいのです。「新婚ほやほや」も、結婚したばかりだから、熱く燃え上がれました。夫婦間の「ほやほや」は、奥様のおなかに貼っているカイロもやがて冷めるように、月日が経てば消えてしまうのです。
しかし、確かに「ほやほや」な時代は過ぎましたが、好きなところが何一つ消えたわけではないでしょう。愛想が完全に尽きていたら、とっくに別れているはずです。噛めばまだ、味がある。まだ食べられるではありませんか!ここはひとつ、「冷めてもおいしい」関係を続けてみましょう。
少しのダメは我慢する
「SDGs」という言葉、最近ニュースでよく耳にしますよね。これは、「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略称で、国連加盟国が2030年までの達成を目指す17の目標を掲げた、世界レベルのプロジェクトです。いずれの目標も、無理のない範囲で改善していきましょう、という呼びかけですが、まさに熟年夫婦にも該当するのではないでしょうか。
「こうして」と要求し、お互いを無理やり、根本から変えるのではなく、「こうしてみない?」と、お互いが少しでも心地よく過ごせるように提案してみるのです。
嫌なところは目をつむって、ほかの改善策を探る。S(少しの)D(ダメは)G(我慢する)です!さすがに強引すぎますか?
お互いに向き合うのではなく、隣に並んで、同じ景色を眺める。「共生」、共に生きる、ですよ。結婚生活において、満足と不満は常に1セット。それらを捨ててしまったら、残るのは孤独だけ。
そばにいてくれるだけでも、ありがたいじゃありませんか。
本稿は『我が家は前からソーシャル・ディスタンス』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。
粗大ゴミに出したい⁉ 邪魔な夫の取扱説明書
「邪魔な夫」はライブの鉄板ネタ
「あんなに愛していたのに、今や『動く粗大ごみ』としか思えない」
ご主人にとっては耳の痛い話ですが、このように悩む奥様は、きっと多くいらっしゃることでしょう。動く粗大ごみは、奥様がこれから掃除機をかけようとする場所に現われます。奥様が「どいてちょうだい!」と追い払うものの、粗大ごみは次の掃除予定の場所に出没。そして、掃除のあとに轟く「おい、メシはまだか⁉」の声……。
ライブでは、邪魔者になったご主人にまつわるネタを言うと、ドッとウケます。奥様がたは共感できるのでしょうね。
「あなた、この子たちのためにも、長生きしてね。お願い!」。奥様は懇願しました。あれから40年。子どもたちも巣立ち、家には二人きり。夫の横顔を見つめながらポツリ。「ああ、長生きしそう……」
どうしてこんなことになっちゃったのでしょうか?せめて、多少の家事を手伝ってくれるまともな生き物に変えるには、どうすればいいのでしょうか?
旦那とハサミは使いよう
ブルースの女王、故・淡谷のり子先生。私たちの世代の人間なら誰もが知る、日本シャンソン界を牽引した大物歌手です。淡谷先生が素晴らしいことをおっしゃっていました。先生の口マネ、同年代なら誰でもできるでしょう。奥様、その口マネで言ってみてください。
「あのね、アナタ、男っていうのはね、おだてて使うのよ」
ちょっと!ご主人がモノマネしてどうするんですか!
男というのは基本的に単純な生き物です。おだてれば、豚よりも先に木に登ります。そこで、「ご主人が何もしないのは、奥様のおだて方が足りないから」と考えてみてはいかがでしょうか。
ぼんやりと縁側でひなたぼっこなんかさせてはいけません。旦那とハサミは使いようです。「あら、そんな高いところの枝まで切れるなんてすごい!庭掃除が上手だから、この辺りの草も抜いてみて!」と、どんどんおだててみましょう。そして、ゴミ出しや洗濯、お皿洗いに風呂掃除などなど、大いにコキ使うのです。
ご主人も、普段は誰も褒めてくれないもんですから、つい嬉しくなって、頼んでもない仏壇磨きにまで着手するほど、張り切ることでしょう。そうして、廃棄寸前だった粗大ごみは、「まだ使える!」と、家に残してもらえるのでした。
捨てられたらおしまい
ちなみに、私も自宅では意外と(?)、せっせと働いています。掃除の担い手は私で、庭の水やり、庭掃除もやります。いちばん好きなのは、風呂場の掃除です。実は私、水回りが汚いのが苦手なんです。鹿児島の田舎で育ったわりには、変なところで潔癖なところがあり、率先して掃除していますね。
でも、料理は不得意なので、妻にお願いしています。妻の料理は絶品ですから、私がしゃしゃり出る必要がありません。
男というのは、生活能力が乏しいんですよね。食事の支度どころか、洗濯機の回し方さえわからない。だから、奥様に捨てられたらおしまいなのです。定年退職になるまで、立派に勤め上げられた。これは当然、称賛されるべきことでございます。しかし、朝から晩まで、畳に根が生えたように居座って、威張るのはいただけません。
家庭でも、助け合いの精神が重要です。軽トラで回収されないよう、ご主人も率先して家事に勤しみましょう。
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なお、本稿は書籍『我が家は前からソーシャル・ディスタンス』(マキノ出版)の中から一部を編集・再構成して掲載しています。コロナ疲れに自粛疲れ。知らず知らずのうちにストレスがたまる日々。大いに笑いたい、大いに人生を楽しみたい。でも、どこかで誰かに遠慮しなくてはいけない。なかなか難しい時代ですが、一人であれば、誰にも遠慮することなく笑っていいのです。本書は、ただひたすらに笑ってほしいと願う著者が、中高年の悩みを一“笑”両断した内容となっています。また公演内容をもとに再構成した紙上漫談も収載されています。詳しくは下記のリンクからご覧ください。
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※「時間を持て余した私は‟農耕接触”!土に還る前に土いじりの日々」の記事もご覧ください。