UV除菌とは
日本人は清潔であることがすごく好きだといわれます。アスファルト舗装されていない砂塵が舞いやすい江戸時代、江戸っ子は日に2回風呂屋へ行ったといいます。コロナ禍の令和もそう、アルコール消毒から始まり、ありとあらゆる清潔グッズが出て、家電も抗菌を謳っています。抗菌グッズで身を固めている潔癖症の女性も知り合いにいます。そんななか、古くからあるものの、なかなか使わレてこなかった技術が顔を覗かせました。UV、紫外線を使った除菌です。どんなところに使われたのか、レポートして見たいと思います。
UV(紫外線)除菌とは、医療でも使われているメジャーな除菌技術です。光エネルギーを、細菌、ウイルスに当てることにより、細菌なら死滅、ウイルスなら不活化します。もう少し正確にいうと、紫外線は、波長別に315~400nmの「UV-A」、280~315nmの「UV-B」、100~280nmの「UV-C」(深紫外)の3種類に分類されます。このうち最もエネルギーが高く、生体に対する強い破壊力を持つのがUV-C。そう除菌に使われるのは、UV-Cなのです。
長所は、簡便であること。UV-C LEDさえあれば、除菌できるので、かなり簡便です。
一方、短所もあります。一つは時間がかかることです。一番近い雰囲気を持つのは、電子レンジではないでしょうか。こちらも食材に入れるエネルギー量が勝負。500Wだと時間がかかる場合も、800Wなら短時間で済む。UV照射もエネルギーを送り込んで、死滅させるので、同じイメージです。
もう一つは、UVが当たらないところは、全く効き目がないということです。それはデジタル同様に、すっぱりした違いになっています。
あと、強烈なUVは当然人体にとっても有害です。瞬時には問題ないのですが、長く浴びると問題が出てきます。
こういうUV除菌技術、どんな家電が、どんなふうに使っているのでしょうか?
UV技術を活用した家電をご紹介
ダイソン
dyson purifier humidify + cool formaldehyde
ダイソンの加湿空気清浄機から見ていきましょう。
加湿器は水を使います。ほったらかしにしておきますと、フィルター、タンク内にカビが生えます。しかし、そうすると加湿器が原因で病気になったとなる可能性があります。このため清潔に保つために、メーカーはあれこれ技術を導入しています。特に問題になるのは、相変化なく液体のまま微細水滴として室内に放出する「超音波式」の加湿器。これは、水タンク、水槽が汚染された場合、そのまま空気の汚染につながりますので、特に気を付けなければなりません。
しかし、そうでない加湿器(スチーム型、気化型、ハイブリッド型)でも、二次汚染がありますので、十分気をつける必要があります。
ダイソンはこれに対し、水を狭い水路に誘い込み、その狭いところでUV-C LEDを強烈に浴びせ一気に殲滅するシステムを開発しました。使う時の水は必ず浄化してあるというわけです。本来、UV除菌は、それなりの時間がかかるのですが、水量を限定する、集中的にUVを浴びせることで、瞬間的に浄化してしまいます。UVの弱点をフォローした使い方と言えます。
ダイキン
UVストリーマー空気清浄機
ACKB70Y
次は、ダイキンのUVストリーマー空気清浄機です。こちらのUVはフィルターの浄化に使われます。ウイルスが入った飛まつを、現在主流のHEPAフィルターがトラップできることは、みなさんご存知のことと思いますが、実はトラップ=不活化ではありません。放置しておけば、最終的に不活化するのですが、それはすぐではありません、10日〜2週間かかると言われています。
例えば、家電の掃除中に好奇心が服を着ている様な幼児がやってきて、間違いなく手を伸ばし、さりげなく触れようとするでしょう。この時、ウイルスが活性状態にあると、今度は接触感染する可能性が出てきます。
ダイキンは、使用時固定してあるフィルターへUVを照射し、不活化を促進します。旭化成との協業でできた技術です。
こちらは当然といえば当然の発想ですから、ダイキン以外のメーカーも採用対応しています。
アクア
ドラム式洗濯機 真っ直ぐドラム
AQW-DX12M
これは色々な思いが含まれています。例えば、衣類を消毒するので最も有効なのは、熱湯消毒です。最高峰と言われるドイツ ミーレの洗濯機には、衣類の大半を占める木綿、混紡に対しては、最高で90℃のお湯洗ができるようになっています。歴史的にヨーロッパは感染症の歴史、ペスト、赤痢、コレラ、インフルエンザ。そレニ対応するためには、有力な方法です。伊達に「世界一」と言われるわけではないですね。
さて一方日本。「水」でお清めするのが好きな国民性のためでしょうかね。お湯洗いは、40℃、60℃がメインです。40℃は人間の体温。洗剤の中の酵素が活性化する温度です。要するに洗浄力を高める温度です。一方、60℃は一部菌を殺せる温度です。一番わかりやすいのはニオイ菌でしょうかね。60℃お湯洗いの衣類は、室内干ししても、臭いません。部屋干しの悪臭は、洗濯物内のバクテリアが繁殖、その時の老廃物、死骸などの臭いです。60℃で洗うと死滅させることができますので、繁殖しない=臭いがしないというわけです。
今回、アクアが考えたのは、菌による二次汚染を避けることでした。完全に死滅しない細菌が水を介して別の衣類に取り付くことを防止するということです。
このため、洗濯槽と外槽の狭いエリアにUV LEDを設置。水の中の細菌を殲滅しにかかります。考え方は、ダイソンと同じです。しかも、お湯と光ですので、残留物なし。衣類ケアにもってこいの組み合わせです。
シロカ
食洗機 アドバンストシリーズ UV除菌タイプ
SS-MU251
こちらも、洗いとの組み合わせですが、考え方が少し違います。食洗機は、少ない水で汚れを拭い取るために、高温、アルカリ洗剤で洗い上げます。人が触れるにはあまりよろしくないレベルの環境下で洗うので、除菌もされています。
問題は、そこから、普通の空気中に出すということは、熱が冷めるにつれ、狙ってではないですが、菌が取り付くというわけです。シロカのUVは、一度できた無菌状態を保つためのものです。そんなニーズはあるのでしょうか? あります。赤ちゃん対応です。赤ちゃんは、その強力なヨダレで身を守りますが、やはり限度があります。周りは清潔な方がいいです。哺乳瓶も食洗機で洗い、どの後、UVを当てておけば、菌も繁殖どころか、取り付くこともできません。
最後に
パナソニック
UV-B電球形蛍光灯
最後は、UV-Bのランプの話です。今までは、UV-Cが人間に対し有益であるというものでした。ではBはどんなところで役になっているのでしょうかというお話です。
どこに用いられているのかというと、イチゴ栽培。葉への適度なUV-B照射により、イチゴの免疫機能を活性化させ、うどんこ病の発生を抑えているのです。農薬ではありませんので、安全性高い。水洗いだけで口に入れるイチゴには持ってこいです。
UVという技術は自然にあり、それを切り出したものです。故に、あまり害がない。使う上での制約はありますが、知恵があれば上手く使える技術でもあります。化学物質が増えすぎた今、古典的ですが、新物質を使うなら、こちらがいいとお勧めしたい技術でもあります。
今年のクリスマスケースを食べるとき、古くて新しい有用なモノはまだまだあるんだということを思い出していただければ嬉しいです。
◆多賀一晃(生活家電.com主宰)
企画とユーザーをつなぐ商品企画コンサルティング ポップ-アップ・プランニング・オフィス代表。また米・食味鑑定士の資格を所有。オーディオ・ビデオ関連の開発経験があり、理論的だけでなく、官能評価も得意。趣味は、東京散歩とラーメンの食べ歩き。