生乳の大量廃棄が懸念されている年末年始。消費の一助には程遠いかも知れませんが、今回は生乳から作られる「クリーム」をたくさん使う「手作りバター」のレシピとアレンジをお伝えします。作り方はとても簡単。多彩な風味のアレンジバターに味変が可能で、朝食のパンやオードブル料理の楽しみが広がります。お正月向けのお手軽オードブルもご紹介しますので、新年の家族や友人との集まりにお試しください。

重要ポイントは生クリーム選び

バター作りに必要な材料は、生クリームと塩だけ。無塩バターなら、塩も不要で生クリームだけあれば作れます。ただし、この「生クリーム」の選び方にポイントがあります。

さて、ここでクイズです! 
写真の3種類のうち、どれが手作りバターに最適でしょうか?

画像: どれも同じように見えます。バター作りに最適なのはどれだ?

どれも同じように見えます。バター作りに最適なのはどれだ?

答えは、②です。①もバターは作れますが出来上がりの量が②よりも少なくなります。③に至ってはバターを作ることができません(実際に試してみました)。

いったい、何が違うのでしょう。
生クリームを選ぶ際に必ずチェックしてほしいのが、パッケージの「食品表示」です。

【食品表示のチェックポイント①】

動物性の「クリーム(乳成分を含む)」と書かれているものを選ぶ

生クリームを選ぶときは、まず写真の赤線で囲った部分を必ずチェックしてください。

画像: 「クリーム(乳成分含む)」「乳等を主要原料とする食品」の表示の違いに注目!

「クリーム(乳成分含む)」「乳等を主要原料とする食品」の表示の違いに注目!

写真左の「クリーム(乳成分含む)」と書かれた生クリームでないとバターは作れません(前出クイズの①②が該当)。乳等省令という法律で「クリーム」の基準が定められていて(※1)、添加物が入っていない動物性脂肪(乳脂肪)のクリームだけが「クリーム」と表示できます。バターは、この「クリーム」に含まれる乳脂肪を集めて作ります。

(※1)乳等省令(乳及び乳製品の成分規格等に関する省令)により、「クリームとは、生乳、牛乳、特別牛乳又は生水牛乳から乳脂肪分以外の成分を除去したもの」と定義されています。なお、生乳とは搾取したままの牛の乳、生水牛乳は搾取したままの水牛の乳のことです。

一方、写真右(前出クイズの③が該当)の「乳等を主要原料とする食品」は乳等省令の定義外でクリームではないため、バターは作れません。パッケージに「生クリーム使用」「純乳脂」などと書かれていることも多く混同しやすいので、間違えないようにしましょう。クリームに乳化剤や安定剤などを添加したもの、植物性脂肪を混ぜたものなどがあり、一般的に「ホイップクリーム」「フレッシュ」などとも呼ばれています。バター作りには不向きですが、美しいホイップを保ちやすい、分離しにくい、低脂肪でヘルシー(植物性脂肪の場合)、賞味期限が長めといった利点もあり、ケーキやお菓子作りの場合は扱いやすいといえるでしょう。

【食品表示のチェックポイント②】

乳脂肪分が高いもの(できれば45%以上のもの)を選ぶ

次にチェックしてほしいのが、赤線を引いた「乳脂肪分」の表示です。

画像: バター作りには45%以上の乳脂肪分が理想的です。

バター作りには45%以上の乳脂肪分が理想的です。

生クリームの中に含まれる乳脂肪を集めて固めたものがバターなので、乳脂肪分が高いほど、作れるバターの量が多くなります。写真右(前出クイズの②)は1パック約200g×45%=約90gが作れるバターの目安量となり、実際に作ってみると多少の誤差はあるものの、目安量に近いバターが作れました。写真左(前出クイズの①)は作れるバターの量が少なくなり、コスパが悪くなってしまうのです。また、乳脂肪分が高いとバターが出来上がるまでのスピードアップにもなります(乳脂肪分45%は約5分でバターが作れましたが、36%は10分程度かかりました)。

食品売り場の冷蔵棚には様々なタイプが並んでいて迷いやすいので、注意してくださいね。

画像: 写真の商品はいずれも「乳等を主要原料とする食品」で、バター作りには不向き。

写真の商品はいずれも「乳等を主要原料とする食品」で、バター作りには不向き。

写真で詳しく解説!手作りバターの作り方

というわけで、生クリーム選びさえ間違えなければ、作り方はとても簡単。生クリームをひたすら撹拌(チャーニング)し、乳脂肪の粒を分離させて集めればOK! 栄養士養成校の恩師・青山佐喜子先生の直伝レシピをもとに、スボラな筆者が簡素化。できる限り詳しく、写真付きでお伝えしましょう。

必要な道具

・ハンドミキサー
・ボウル(大小2つあると便利)
・ゴムベラ(または木べら)
・ザル
・厚手のキッチンペーパー

画像: /ボウルは大きい方がクリームの飛びハネを防ぎやすいです。

/ボウルは大きい方がクリームの飛びハネを防ぎやすいです。

画像: 破れにくい厚手のキッチンペーパー、または清潔な晒(さらし)布があると便利です。

破れにくい厚手のキッチンペーパー、または清潔な晒(さらし)布があると便利です。

ハンドミキサーを使って強めに撹拌するので、使用するボウルは強化ガラス製がベストです。プラスチック製やステンレス製は摩擦で傷がつきやすく、削れてしまう可能性もあり、衛生面であまりおすすめできません。

材料/出来上がり約90g:所要時間 約5分

・生クリーム(乳脂肪分45%を使用):200ml(1パック)

画像: 近所のスーパーで400円弱でした。

近所のスーパーで400円弱でした。

基本の作り方(無塩バター)

生クリームは冷蔵庫(3〜8℃)で直前まで冷やしておく。

ボウルに生クリームを入れ、ハンドミキサーの高速で、空気を含ませるように軽く浮かせて上下に動かしながら泡立てる。

画像: クリームの飛びハネに注意!

クリームの飛びハネに注意!

全体にもったりとして、角が立っても、さらに高速で泡立て続ける。

画像: 1分程度でもったりとしてきます。早いっ!

1分程度でもったりとしてきます。早いっ!

画像: 2分程度で角が立ちますが、まだまだ泡立て続けます。

2分程度で角が立ちますが、まだまだ泡立て続けます。

クリームが分離しはじめたら高速→中速に加減して、さらに混ぜる。

画像: 所々がダマになり、分離し始めました。バターに近づいてきたサイン!

所々がダマになり、分離し始めました。バターに近づいてきたサイン!

ボロボロした状態になり、ボウルの底に水分(白い液体)がたまってきたらハンドミキサーを低速にして全体をよく混ぜて止める。

画像: 約3分後。ボウルの上の方の分離がゆるいので底へ集め、さらに低速で撹拌します。

約3分後。ボウルの上の方の分離がゆるいので底へ集め、さらに低速で撹拌します。

モロモロ状態のバターを厚手のキッチンペーパーを敷いたザルに移し、水分を切る(水分は別のボウルで受ける)。このとき分離した水分は「バターミルク」と呼ばれ、料理やお菓子作りに使うとコクや風味がアップする。捨てずに活用を(後ほど活用例も紹介)。

画像: バターの粒(左)とバターミルク(右)。

バターの粒(左)とバターミルク(右)。

厚手のキッチンペーパーでバター全体を包み、手で押して水分を絞り出し、軽く揉んでなめらかにする。

画像: 優しく手で押しながら水分を絞ります。まるで乳搾りしているみたいで楽しい(笑)。

優しく手で押しながら水分を絞ります。まるで乳搾りしているみたいで楽しい(笑)。

手作りバターの完成です! かわいい茶巾フォルムにテンション上がります〜。

画像: できたてバターが輝いてみえますよぉぉ!

できたてバターが輝いてみえますよぉぉ!

なお、バターは温度が高くなると溶けやすいため、エアコンや暖房で室温が高いときや夏場は、生クリームを入れたボウルを、氷水入りのバッドやボウルなどで冷やしながら作業をしましょう(今回は暖房ナシの真冬の室内で作ったため、氷水は当てていません)。

この作り方で、乳脂肪分45%の生クリームからバター約90g・バターミルク約70g、乳脂肪分36%の生クリームからバター約75g・バターミルク約90gを作ることができました(バター合計:165g、バターミルク合計:160g)。

できたてバターはクリーミーでコクと風味が濃い

できたての手作りバターをパンにつけて食べてみると……めちゃくちゃ美味しいです!無塩でもパンに塩味があるので物足りなさはなく、むしろ、フレッシュさが際立つ感じ。口当たりがとっても柔らかくてクリーミー、それでいてミルクのコクと風味がしっかりと感じられ、乳脂肪をぎゅっと凝縮したのがわかります。

画像: 手作りした者だけが味わえる極上の味です。

手作りした者だけが味わえる極上の味です。



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