〈虎ノ門の新横丁〉小虎小路に行ってみた! 超高いフードの質 そして「出会い」も 仕掛けが満載

グルメ・レシピ

2022年1月19日、東京・虎ノ門に「小虎小路(ことらこみち)」という「横丁」が誕生した。ビルの地下1階、130坪強のスペースに、業種がかぶることなく、個性がはっきりとした、しかもフードのクオリティの高い飲食店が12店舗出店、248席を配している。「横丁」は開業当初、目新しいことから大層にぎわうことが通例。しかしながら、時間が経つにつれて衰退していくことが一般的であった。しかしながら、この「横丁」には、これらのセオリーをはねのける要素や仕組みが存在している。

生まれては消えていった新しい「横丁」

近年「横丁」を開業する事例が多い。そのバターンは、飲食店1店舗だけでは賄いきれない広さがあり、むしろ複数店舗を集めたら「飲食店街」としてのにぎやかさを醸し出される、という発想からだ。しかし、これらの営業実績から「横丁」の繁盛が継続していくための課題が顕在化している。

一つは、アルコール主力の業態が多いと、リピートする魅力が乏しく、継続しない。常ににぎわっていないと「勝ち組」「負け組」がはっきりとしてくる。その「横丁」に行くことに“新しさ”(=出会い)がないとリピートしない。このような理由で、新しく「横丁」が生まれては消えていった。

しかしながら、1月19日東京・虎ノ門にオープンした「小虎小路」は、これらの課題を完全にクリアした観がある。そのポイントをここでまとめておきたい。

路面から地下の店舗に誘う空間には神社のようなデザインが施されている

人望ある人物が直接アタック

「小虎小路」は、ビルの地下1階、130坪強のスペースに12の飲食店舗で構成されている。それぞれの業種と店名、経営母体と本社所在地は以下の通り。

・小籠包「蒸川点心」(有限会社ac:鹿児島県鹿屋市)
・沖縄料理「美ら酢シャングリラ」(Seebun合同会社:東京都渋谷区)
・たこ焼き「タコとハイボール」(株式会社フラバーダイニング:長野県塩尻市)
・地方創生アンテナショップ「浜焼き真鶴」(G-FACTORY株式会社:東京都新宿区)
・イタリアン「寅の日」(合同会社Accoglienza:栃木市大平町)
・焼肉「YAKINIKU DATEYA」(D.P.T FACTORY:群馬県伊勢崎市)
・肉巻料理「NIKUMAKI YASAIべじつつむ」(株式会社YM商店:東京都足立区)
・海鮮居酒屋「酒と魚とオトコマエ食堂」(株式会社すぎうら:京都市中央区)
・フレンチビストロ「大衆酒場 仏男フレンチマン」(有限会社らくちん:京都市中央区)
・ジンギスカン「ジンギスカンいしい」(P-FUNCTION:東京都葛飾区)
・焼鳥「串酒場 バンビ」(合同会社MAKI:鹿児島市中央町)
・餃子・鉄板焼「べっぴんや」(株式会社すぎうら:京都市中京区)

フレンチの技術を背景にして居酒屋的にたのしむことができるようにした店舗

肉をメニューにした店舗が複数存在するが肉の種類や提供方法で差別化している

見事に業種がかぶっておらず、それぞれ特徴がはっきりとしている。
「横丁」としてのつくり込みが丁寧に行われていて、各店舗が歩道側に客席を構成していることから、横丁全体の賑わいが十二分に醸し出される。総席数は248におよぶ。

これは、プロデュースを担当した高橋英樹氏の企画力と交渉力が存在する。

高橋氏は、広島県福山市と東京都下で飲食業を営んでいる人物で、地元福山でも「横丁」をプロデュースしている。「居酒屋甲子園」の2代目理事長を務めた人物で、昨年11月に誕生した「日本飲食業経営審議会」の事務局長に就任している。

「小虎小路」をプロデュースした高橋英樹氏は、飲食業界では人望の厚い人物で、その魅力によって完成度の高い「横丁」をつくり上げた。(筆者撮影)

居酒屋甲子園とは「共に学び、共に成長し、共に勝つ」を理念として、「居酒屋から日本を、世界を元気にする」ことを目的とする、全国的な学びの組織。2006年に結成されて以来、メンバーの結びつきが深まるばかりで、飲食業界にかかわるさまざま企業がサポーターとなっている。これらを背景として「小虎小路」は「居酒屋甲子園公認」の横丁となっている。

日本飲食業経営審議会とは、全国の飲食業者が集まって、飲食業の全国的な発信型組織をつくり、国や地方自治体との対話と提案を行うことを目的としている。

ずばり、高橋氏は飲食業界での人望がとても厚い人物なのである。12店舗のリーシング(商業用不動産の賃貸をサポートすること)は、高橋氏が直接アタックした。アルコールが主体のバーやスナックが加わると、フードに力を入れた店との温度差が生じることから、フード、アルコールともにクオリティの高い店のみで「横丁」を編成した。

出会いと目的来店で引き付ける

ここに、福山の「横丁」のノウハウが十二分に生かされている。高橋氏によると、横丁運営にとって重要なポイントとは「いつもお客様がパンパンに入っていること」。その状態を保つことができないと、いつの間にか横丁の中に「勝ち組」「負け組」が生ずることになるという。そのようなことから、ここが常ににぎわうような仕掛けをつくったという。

各店舗共通のルールとして、ビールとハイボールの価格を統一していて、ここでの価格競争をしないこと。また、同じ店内にいる客と会話をするきっかけをつくる「あちらの方からレモンサワー」というレモンサワーをサービスする仕組み(拒否されたら自分で飲む)や、「一緒にシーシャ」という呼称でシーシャ(水たばこ)を各店舗で販売、「一緒にシーシャしませんか?」というタイミングを演出するために用意している。また、シャンパンをボトルで注文して、近くにいる客にグラスでシャンパンを振舞う「みんなでシャンパン」という仕掛けもある。

ドリンクの見せ方を“映える”形にしている店も

ここでは、ランチ営業も行っている。ご飯のメニューもあるが、看板となる「ヌードル」のメニューを設けることを条件としている。そこで「麻辣湯麵」「琉球まぜそば」「牛骨の塩生姜ラーメン」「自家製ボロネーゼのスパゲティ」等々、各店はそれぞれの強みを託したヌードルメニューをラインアップしている。

高橋氏によると、「お客様は、横丁の店舗のはしごを平均1.7店舗で楽しんでいただき、客単価は4000~5000円を想定している」という。月商目標を6000万円としている。

店の従業員とのコミュニケーションも楽しく一人客でも十分に楽しむことができる

虎ノ門再開発の真っただ中にある

さらに、「小虎小路」の立地がダイナミックである。この「横丁」は、森ビルが開発を進める虎ノ門ヒルズの谷間にある。

このエリアには、2014年「虎ノ門ヒルズ 森タワー」、2020年に「虎ノ門ヒルズ ビジネスタワー」が誕生しているが、これから「虎ノ門ヒルズ レジデンシャルタワー」および東京メトロ日比谷線・虎ノ門ヒルズ駅と一体開発する「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(仮称)」が加わり、区域面積7.5ha、延床面積80万平方メートルとなる計画で、2003年に誕生した六本木ヒルズに匹敵するオフィス・商業施設・住宅の国際都市が形成される。

既に、ここから羽田空港までのバス直行便が稼働していて、国内・世界からのアクセスが整っている。これからの就労人口や居住者の増加を見込むと、未曽有の市場拡大が想定される。

「小虎小路」の最大の強みは、「居酒屋甲子園公認」となっていることだろう。これらのメンバーの、学びに基づいた結束は固い。また、地方から東京に訪れる機会が多く、勉強会等の活動を行った後にはここで打ち上げを行う、といったシーンは容易に想像できる。

まとめ

オープン初日の1月19日は、17時オープンと共に店内は満席となった。居酒屋甲子園の関係者はもとより、これらの活動を支えるメーカーなど、さまざまなサポーターが詰めかけて「居酒屋」「横丁」を楽しむ一体感があった。

何より、フードメニュー、ドリンクメニュー共にクオリティが高いことが、これまでの「横丁」とは一線を画した感動がある。まん延防止重点措置(まん防)の期間は、その要請に従って酒類提供20時まで、21時閉店を遵守している。「まん防」明けの暁には、繁盛スポットとして定着していくことであろう。

執筆者のプロフィール

文◆千葉哲幸(フードサービスジャーナリスト)
柴田書店『月刊食堂』、商業界(当時)『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆・講演、書籍編集などを行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社、2017年)などがある。
▼千葉哲幸 フードサービスの動向(Yahoo!ニュース個人)

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