〈今どきの終活〉お葬式は?お墓は?家族葬の最前線をレポート コロナ禍で決定的となった葬儀スタイル

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自分の人生を見つめ、安心して旅立つための準備する「終活」。旅立つ側も、見送る側にもすっかり定着した感がありますが、2009年に、この「終活」という言葉を世に送り出したのが、日本初の葬儀相談員の市川愛さんです。市川さんのもとには、人生の「しまい方」についてさまざまな相談が寄せられます。コロナ禍の世も2年が過ぎ、人々の終活の捉え方に変化はあったのでしょうか。お話を伺いました。

解説者のプロフィール

市川 愛(いちかわ・あい)

葬儀相談員。市川愛事務所代表。一般社団法人 終活普及協会理事。2004年、日本初の葬儀相談員として起業。以来、相談数は5000件を超える。2009年週刊朝日の連載で「終活」を考案したことをきっかけに2011年、一般社団法人 終活普及協会を設立。講演活動、記事や書籍の執筆を通し正しい葬儀情報と終活を広めるために活動している。著書に「後悔しないお葬式」(KADOKAWA)、「遺族のための葬儀 法要 相続 供養がわかる本」(学研パブリッシング、共同監修 河原崎修)、「お葬式について知っておきたい58のこと」(PHP直販)、「孤独死の作法」(ベスト新書)などがある。
▼市川愛事務所(公式サイト)

コロナ禍で「小さな葬儀」が加速

およそ9割が家族葬

ここ数年で主流となっているのは、お葬式のシンプル化。家族葬といった、いわゆる「小さなお葬式」のことです。コロナ前からの潮流でしたが、コロナを経て決定的になったと言ってもいいでしょう。都会であろうと地方であろうとその傾向は変わりません。全国的にみても、およそ9割が身内だけで送る家族葬となっています。

以前なら、「世間体が悪い」「お世話になった人に声をかけないわけにいかない」といった理由で、家族葬をしづらいケースもありました。しかし、こうした理由はコロナ禍で全く正当ではなくなったと言えます。家族葬は、感染対策の面からも理想的な形となり、今まで異論を唱えていた人たちも納得せざるを得ない時代になったわけです。

この傾向は、社会的に地位のある方、著名人の方でも変わりません。私に相談が寄せられるケースでも、身内だけでお見送りをする家族葬を希望する方がほとんどです。本来、盛大な葬儀をやるべき立場にあるが、本当はしめやかに送り出されたい、というご相談です。生前幅広く活躍し、華やかな生活をされていた方であっても、最期は本当に親しい人だけで、という思いは同じなのでしょう。

これから先、お葬式はいっそう平準化が進むと思われます。葬儀の件数は増えているものの、「家族葬」「小さな葬儀」の定着により、単価の相場は数年前の一般葬と比べて半額ほどになっています。
ある葬祭事業者は、従来と同じ葬儀施行件数では赤字となるため、限られた従業員数でより多くの件数をこなすため、葬儀の内容をシンプルに平準化せざるを得なかったといいます。

それだけに、凝った祭壇や特別な食事の提供など、葬儀にオリジナリティを求める場合は費用アップにつながります。送る側の負担も考えながら、理想のお葬式をイメージしておくことも大切です。

家族葬と密葬の違いはない

「家族葬」というと、「家族で見送るお葬式」なのかと思われるかもしれませんが、そうではありません。家族に限らず、親戚、親しい友人など少人数で見送る葬儀を「家族葬」といいます。多くの人が参列する「一般葬」とは「規模の違いだけ」と言ってもいいでしょう。

同じく、小規模な葬儀には「密葬」もありますが、実は、密葬と家族葬には明確な違いはありません。30年ほど前までは、この「密葬」は「本葬」とセットになった葬儀の形でした。まずは家族だけで密葬を執り行い、そのあと多くの人が参列する一般葬も行う、という流れで使われた言葉でした。しかし現在では「密葬のみ」で終えることが増えました。なので、「密葬をします」というと、それだけでは「本葬はあるのかないのか」が分かりません。そのために登場したのが「家族葬」という呼び方だと言われています。

浮上する「お墓どうする問題」

お墓の不安をどうにかしたい

このコロナ禍の1~2年は、自分のことをじっくりと振り返る方が多かったのではないでしょうか。なんとなく不安だったことを課題として自覚し、解決への糸口をつけようという方が増えてきました。そんな中、ご相談が多かったのが「この先、お墓をどうするのか」という問題です。

「関東・関西・九州に三つもお墓あるが、この先、管理をどうしたらいいか」というご相談を受けたことがあります。さすがに三つのお墓を管理している人は少ないかもしれませんが、「いずれ田舎のお墓をどうにかしなくては」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

墓じまいという選択

お墓の行方を考えたとき、選択肢の一つに上がるのが「墓じまい」です。墓じまいとは、継承の難しいお墓や遠方で管理ができないお墓を、更地にしてお寺にお返しする儀式です。しかし、親族にとって大切なお墓のことですから、勝手に進めることはできません。まずは、お墓に関わりのある親族と相談し、墓じまいについて、その費用についての合意を得ましょう。

「お墓は、未来永劫そこにあるもの」「墓じまいなんて、お墓に失礼」。そう考える年配の方がいるかもしれません。けれどよく考えてみると、このままにしておけば、面倒を見る人がいなくなり、やがては無縁のお墓になってしまうことも考えられます。それこそが、誰も望んでいない未来です。

お寺も、最近の事情をよくわかっており、墓じまいに反対されることは少ないでしょう。状況を丁寧に説明し、相談しながら滞りなく手続きや儀式を進めることが大切です。物理的にお墓を撤去する費用だけでなく、お墓の魂抜き、お骨を永代供養するためなどのお布施が必要となります。

まとめ

終活において、大きな柱となるのが「お葬式」と「お墓」の問題です。お葬式は、小規模な家族葬が主流になり、その形はシンプルで平準化されものになっていきます。以前からあったこの流れは、コロナ禍を経て、いっそう鮮明になりました。

また、お墓の未来を「終活の課題」として自覚した人も多くいました。その時、選択肢となるのが「墓じまい」です。墓じまいは、端的にいえばお墓を撤去するということ。お墓に関わりのある親族の同意が、何より大切です。そして、お墓のある寺院と密に連絡、相談しながら進めることが、円満に墓じまいを終えるコツと言えるでしょう。

「終活」という言葉は、大問題のように聞こえてしまい、何から始めればいいのか途方に暮れてしまう人も多いはずです。しかし、大袈裟にとらえる必要はありません。「自分のお葬式って誰が取り仕切ることになるのだろう」「今ある田舎のお墓はどうなるのかな」。お茶を飲みながら、ぼんやりとでいいのです。まずはそんなことから考えてみませんか。

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