「ミニジャンプ」をすると、腰を支える筋肉群が鍛えられます。腰部の血流もよくなって、こわばりもほぐれます。ミニジャンプを毎日続けることで、腰を支え、姿勢を保持する筋肉がしっかりするのです。これが、腰痛の予防や改善へとつながります。【解説】野口眞利(野口医院理事長)
解説者のプロフィール
野口眞利(のぐち・まさとし)
野口医院理事長。1938年東京都生まれ。千葉大学医学部卒業。東京医科歯科大学付属病院第一内科、国立がんセンター病院、ローザンヌ大学病院を経て、78年に東京都練馬区に野口医院を開院。内科・糖尿病における運動療法の重要さを説く。一方で日本芸術家協会の会員でもあり、油絵の個展は30回以上にも及ぶ。著書に、『一生動けるカラダをつくる! 40歳から始めるノグチ式筋活』(幻冬舎メディアコンサルティング)など。
リズムを取りながら30回小さくジャンプ
私は、現在84歳になりますが、今も現役で医師として働きつつ、スキーに行ったり絵画を描いたりするなど精力的に活動しています。こうした私自身の活力の源となっているのが、毎朝行っている一連の運動です。
これは、私の長年の運動療法の研究が結実したもので、短時間でできるさまざまな運動を組み合わせています。そのメニューの1つに、「ジャンプ」があります。
私が行い、患者さんに勧めているジャンプは、「1、2、3」とリズムを取りながら、小さなジャンプをくり返す「ミニジャンプ」です。「1、2、3」「2、2、3」……「10、2、3」と声を出しながら、合計30回程度跳ぶことを目標にしましょう。高さは意識しなくてかまいません。
ゴルフやスキー、日常でたいせつな腰を強化する
ミニジャンプには多くの効能がありますが、第一に挙げられるのが、腰痛に対する予防・改善効果です。
クリニックには、腰痛を訴える中高年のかたがたくさんいらっしゃいます。高齢者が腰痛を起こすそもそもの原因は、骨盤を支え、姿勢を保持している筋肉群が弱ってしまっているところにあります。
ミニジャンプをすると、腰を支える筋肉群が鍛えられます。腰部の血流もよくなって、こわばりもほぐれます。ミニジャンプを毎日続けることで、腰を支え、姿勢を保持する筋肉がしっかりするのです。これが、腰痛の予防や改善へとつながります。
第二に、ミニジャンプは、ふくらはぎの筋肉が収縮と弛緩をくり返すことにつながります。
ご存じのかたも多いと思いますが、ふくらはぎは「第二の心臓」と呼ばれます。ジャンプをすると、ふくらはぎのポンプ作用が働き、下肢にたまりがちな血液を心臓へ送り返すことができるのです。これによって、血流が大きく改善し、下肢のむくみも改善していくでしょう。
下肢のむくみは、夜間頻尿を引き起こす原因ともなっています。昼の間に下肢にたまった水分が、寝て横になると、心臓へ戻ろうとするからです。
このとき心臓は腎臓に対し、不要な水分を排泄するよう命令を出し、夜間の尿量が増えてしまうのです。ミニジャンプをすることで、下肢の血流が改善し、夜間頻尿の解消にも役立つと考えられます。
第三に、ミニジャンプをすると、気持ちがリフレッシュします。ミニジャンプは、筋力の強化だけに限らず、リズム運動にもなっています。リズム運動は、幸福ホルモンと呼ばれるセロトニンの分泌を促します。これによって気持ちが前向きになるのです。
セロトニンが分泌されることで、それが睡眠のホルモンであるメラトニンの分泌につながりますから、不眠改善・安眠効果も期待できるでしょう。
さらに、ミニジャンプで足先が鍛えられる結果、転びにくくなりますし、着地する刺激は骨と脳への心地よい刺激となり、骨粗鬆症予防や、脳の活性化にも役立つでしょう。
特に高齢者にとって、骨粗鬆症は大敵です。筋肉だけではなく、骨を強化することで、いくつになっても自分で歩ける足腰を実現できます。
ただ、すでに足腰が弱りつつあるかたは、イスの背に指を添えてミニジャンプを行ってください。自信のないかたは、かかとの上げ下ろしの運動から始めましょう。それが楽々できるようになってから、ミニジャンプに移行するとよいでしょう。
また、すでに腰を痛めて治療中の場合は整形外科に相談しましょう。
■この記事は『壮快』2022年9月号に掲載されています。